- 著者
-
小川 真和子
- 出版者
- 地域漁業学会
- 雑誌
- 地域漁業研究 (ISSN:13427857)
- 巻号頁・発行日
- vol.56, no.1, pp.87-118, 2015-10-01 (Released:2020-06-26)
- 参考文献数
- 24
20世紀初頭以降,日本人がハワイの漁業を独占したことに対して,ハワイ準州政府や米連邦政府が取った政策について,本稿は主にアメリカ合衆国公文書記録管理局(United States National Archives and Records Administration)所蔵の米連邦政府商務省,内務省,国務省,陸海軍,およびそれらとハワイ準州政府側との折衝に関する資料の分析を通して実証的に検討する。1927年以降,ハワイ準州政府,特に魚類鳥獣課は,連邦政府に対してハワイの漁業振興のための支援を求めたが,連邦政府は,商務省漁業局(1940年以降は内務省魚類及び野生生物局),内務省準州島嶼課が中心となって連邦政府予算によるハワイ海域の漁業調査の実現を画策した。そのねらいはハワイの食糧自給率の向上と,有事に備えた食糧備蓄の推進であった。一方,米海軍やF. D. ルーズベルト大統領は日本人漁船と日本海軍艦船を同一視し,その排斥に努めた。そして太平洋戦争開始後は日本人から漁船を没収し,その漁労を禁止した。しかしハワイ準州政財界や地元住民の,漁業再開を求める声は根強く,1943年以降には上記の連邦政府官庁による漁業復興へ向けた動きが加速した。1947年に連邦議会で可決された,太平洋における漁業調査法案は,ハワイの漁業振興のみならず中部太平洋におけるアメリカの漁業利権の確保を目指しており,ハワイ準州並びに連邦政府関係官庁による協力体制の結晶であった。