著者
小川 絵里 赤堀 文昭 小林 好作
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.719-729, 1985-10-15

犬のタマネギ摂取による溶血性貧血の機序を明らかにする目的でin vitroの実験を行ない, ヘモグロビンの崩壊過程, 活性酸素の関与の有無, 赤血球膜の障害について検討した. タマネギ抽出物の添加によりヘモグロビンはヘム鉄の酸化, タンパク部分の変性を経て, Heinz小体形成へと進むことが明らかとなり, この過程においてスーパーオキサイドの発生, 赤血球膜の脆弱化がおこることが確認された. ヘモグロビンの酸化はSOD, カタラーゼ, GSH, マンニトールによって阻止されなかったが, 膜の脆弱化はSOD, カタラーゼにより有意に阻止された. 一酸化炭素ヘモグロビンではヘモグロビンの酸化変性, スーパーオキサイドの発生は認められなかった. したがって, メトヘモグロビンおよびスーパーオキサイドの発生源は酸素ヘモグロビンであり, これらの生成はタマネギ抽出物の存在により促進されることが示唆された. また, 発生したスーパーオキサイドおよびその代謝物である過酸化水素はヘモグロビンの酸化には寄与しないが, 赤血球膜の障害をもたらすことが明らかとなった.