著者
林谷 秀樹 近江 佳郎 小川 益男 福富 和夫
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.1003-1008, 1988-10-15
被引用文献数
2 or 0

1981年6月から1982年5月までの1年間に関東地方で死亡し, 1動物霊園に埋葬された犬4915頭の死亡データを用いて, Chiangの生命表作成法に従って, 犬の生命表を作成した. これは家庭飼育犬について作成された最初の生命表と思われる. 生命表作成の基礎となる犬の死亡確率の姿は人のものと基本的パターンがよく類似しており, 今回作成した犬の生命表は犬の集団の死亡秩序をかなり正確に表しているものと思われた. 生命表から算出された犬の平均余命は, 0才で8.3才, 1才で8.6才, 5才で6.1才, 10才で3.5才, 15才で1.6才であった. また, 犬の健康水準の指標としては飼い主の人為的な影響を受けやすい0才の平均余命(e_0)より1才の平均余命(e_1)のほうが望ましいと思われた. 犬種別(雑種, 純血種に大別), 地域別(人口密度1万人以上のA地域と1万人未満のB地域に大別)にも生命表を作成し, 得られたe_1を比較した結果, 犬種間では雑種は純血種に比べ, また地域問ではA地域はB地域に比べe_1は有意に長かった. 以上のことから, これらの犬種間, および地域間においては平均余命の長さを規制している要因になんらかの違いのあることがうかがわれた.
著者
野村 紘一
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.71-74, 1995-02-15
被引用文献数
5 or 0

着床期の犬子宮内膜に人工的刺激を加えると, 脱落膜反応が誘起できることを先の報告で明らかにしたが, これらの組織反応は刺激の種類によって相違した. 本報告では,オリーブオイルを刺激源にしたときの組織反応の特徴を明らかにする目的でオリーブオイル注入のみの場合と創傷刺激後に注入した場合の組織像を比較検討した. 前者の場合は,子宮内膜上皮は網状あるいは樹枝状に子宮内腔に向け増殖したが, 機能層並びに基底層子宮腺の豪胞状過形成は起こらなかった. これに対して後者の場合は子宮内膜上皮の増殖以外に創傷性損傷を受けたと思われる箇所を中心にして基底腺の嚢胞状拡張増殖が付加され, いわゆるスイスチーズ様内膜を示した. オリーブオイルのみの刺激で子宮内膜上皮並びに緻密層子宮腺の子宮内腔へ向けての増殖を誘発することができるが, 機能層や基底層の子宮腺の増殖拡張を引き起こすには子宮腺の開口部の損傷が必要である.
著者
斉藤 康秀 井上 巖 林 文夫 板垣 博
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.1035-1037, 1987-12

3才の雌猫が白い泡状物とともに雌のハリガネムシを1匹吐出した. 虫体は体長585mm, 最大体幅1.2mmで, 体表クチクラに環状帯, 腹中線, 背中線, アリオールがないこと, 口の開口がないことからGordius ogataiの近似種と思われたが, 著しく軟化していたために種の確定はできなかった. 猫は臨床的に正常で食欲もあり, 戸外で昆虫などを捕食していたことから, ほぼ成熟したハリガネムシ寄生昆虫の捕食により感染したと思われた.
著者
林 慶 西村 亮平 山木 明 金 輝律 松永 悟 佐々木 伸雄 竹内 啓
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.951-956, 1994-10-15
被引用文献数
4 or 0

イヌにおいてメデトミジン20μg/kgとミダゾラム0.3mg/kg(Me-Mi), あるいはメデトミジン20μ/kgとブトルファノール0.1mg/kg(Me-B)を組み合わせて投与し, 得られた鎮静効果を, メデトミジン20, 40および80μg/kg(Me20, Me40, Me80)を単独投与した場合の効果と比較検討した. その結果, Me-MiおよびMe-Bでは非常に迅速に強力な鎮静効果が得られ, 約40分間の最大効果発現時には, いずれのイヌも完全に横臥し, 周囲環境, 音刺激に反応せず, 中程度の反射抑制と鎮痛作用が得られ, さらにMe-Miでは自発運動も全く消失し, 優れた筋弛緩作用も得られた. これに対しMe40, Me80では, その鎮静効果はMe-Mi, Me-Bに比べて弱くまた個体間のばらつきもやや大きかった. Me20ではその効果はさらに弱かった. イヌにおいてメデトミジンをミダゾラムあるいはブトルファノールと併用すると, 両者が相乗的に作用することにより低用量のメデトミジンを用いても, 強力な安定した鎮静効果が得られるものと考えられ, とくにメデトミジン-ミダゾラムの組み合わせでは非常に優れた鎮静状態が得られ, イヌの鎮静法として幅広く応用可能で有用であると考えられた.
著者
小島 ゆみこ アンナ 小林 修一 トマス ジャビエル アコスタ アヤラ 工藤 眞樹子 宮本 明夫 高木 光博 宮澤 清志 佐藤 邦忠
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.119-122, 2002-02-25

Microdialysisシステム(MDS)は, 異なる細胞間の内分泌学的解析を分子レベルで行う方法である.今回, 馬の排卵前卵胞液中プロジェステロン(P_4), エストラジオール17β(E_2), アンドロステンジオン(A_4)とプロスラグランジンF_<2α>(PGF_<2α>)濃度を調べた.卵巣から卵胞を取り出し, ホルモン測定のため卵胞液を採取した.卵胞の大きさを大(30mm<), 中(29〜16mm)および小(15mm>)に区分けして, 各々の卵胞液中のホルモン濃度をEIA法により測定した.卵胞の大きさの違いで, P_4とPGF_<2α>濃度に有意差はなく, (A_4)濃度は大と中の卵胞間で差異を認めた.E_2濃度は, 中卵胞より大卵胞が高値であった.卵胞膜の小片にMDS操作を行い, LHを感作した時にP_4,A_4とPGF_<2α>分泌は増加した.PGF_<2α>を感作した時, P_4とA_4分泌の増加は認められたが, E_2の変動は小さかった.今回の結果から, 排卵前卵胞はLH感作により卵胞膜での黄体化とステロイドホルモン分泌を促進した.さらに, 発情周期のホルモン動態は, 他の動物種と大きく異なることが明らかとなったが, 主席卵胞が選択される機序は十分説明できなかった.
著者
木村 哲二
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.27, no.6, pp.1-4, 1965-12-25
著者
木村 祐哉 原 茂雄
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.349-352, 2008-04-25

鍼治療のもつ長期的効果の検討のため,犬の自律神経の概日リズムに対して電気鍼刺激がもつ影響について,コサイナー法を用いて評価した.自律神経機能の指標としては心拍変動の周波数解析を用いた.温度,日照時間をコントロールした環境制御室において馴化させたビーグル犬を用い,保定のみの場合,あるいは保定した上で電気鍼刺激を加えた場合の24時間心電図データを求めた.保定のみの場合では15分間保定台にくくりつけるのみとし,電気鍼刺激はその間,脊椎上に存在する2箇所の経穴(GV-5, GV-20)に刺入した鍼を電極として5V, 250μsecの電流を2Hzの頻度で加えた.心電図データからは心拍数および心拍変動の変動係数(CVRR),高周波数成分(HF),低周波数成分/高周波数成分比(LF/HF)を求めた.得られた5頭分のデータによると,心拍数は刺激後に最大となり,その後減少する傾向が見られた.その他の心拍変動の指標では明期に減少し,暗期には次第に増加する傾向が見られた.コサイナー法によると刺激の有無に関わらずいずれの指標も有意な24時間周期を示し,それぞれの周期性を比較すると,交感神経活動の指標とされるLF/HFで水準の上昇(P=0.006)と頂点位相の前進(P=0.012)がみられた.結論として,電気鍼刺激は犬における交感神経の概日リズムを前進させ,またその水準を上げる効果をもつことがわかった.
著者
遠藤 秀紀 佐々木 基樹 成島 悦雄 小宮 輝之 林田 明子 林 良博 STAFFORD Brian J.
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.65, no.8, pp.839-843, 2003-08-25
被引用文献数
1 or 0

ジャイアントパンダの肢端把握時における前腕と手根部の運動を解明するため,遺体を用いて前腕の屈筋と伸筋を機能形態学的に検討した.尺側手根屈筋は発達した2頭をもっていたが,その収縮では尺骨に対する副手根骨の角度が変わることはほとんどないと結論できた.このことは,ジャイアントパンダが物を把握するときに,副手根骨がその把握対象物の支持体として機能していることを示している.また,長第一指外転筋は尺骨と橈骨の双方に発達した起始をもち,前腕の回外筋としても機能していることが明らかとなった.これらの結果から,ジャイアントパンダが橈側種子骨と副手根骨を利用した肢端把握システムを使って食物を口に運ぶ際には,方形回内筋,円回内筋,長第一指外転筋,そして回外筋が,前腕の回内・回外運動に効果的に貢献していることが示唆された.
著者
田中 智久 田上 銀平 山崎 真大 高島 郁夫 迫田 義博 落合 謙爾 梅村 孝司
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.607-610, 2008-06-25
被引用文献数
1 or 0

2005年度冬季に北海道で大量死した野鳥のうちの13羽について,病理検査とインフルエンザ,ウエストナイル両ウイルスの検出を行った.病理検査では全身性の急性循環障害が共通して認められ,ウイルス検出は陰性であった.これら検査結果,冬季限定の発生状況および文献検索から,融雪剤中毒の可能性が高いと考えられた.また,融雪剤を投与した鶏雛は急性経過で死亡し,野鳥と類似の病変を示した.鶏雛で血漿Na濃度の上昇があったことから,野鳥の死因の確定には罹患症例の電解質検査が必要と考えられた.
著者
杉山 広 森嶋 康之 亀岡 洋祐 荒川 京子 川中 正憲
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.66, no.8, pp.927-931, 2004-08-25

関東地方における大平肺吸虫陽性カニの検出は,千葉県内を流れて太平洋に注ぐ河川に限られていた.そこで埼玉県・東京都を流れて東京湾に注ぐ荒川を選び,下流にある東京都の7つの区に12の調査地区を定めて,カニの採集と肺吸虫の検出を試みた.その結果,検査したクロベンケイガニ922匹のうち177匹(19%)から肺吸虫メタセルカリアが検出された.寄生率は葛飾区四ツ木地区が最多(89%)で,陽性カニ1匹当たりのメタセルカリアの平均寄生数(32.9個),および最大寄生数(190個)も最多を示した.メタセルカリアは楕円形を呈するものが大部分で,大きさ(内嚢の外径)は302μm×232μm(50個の平均値),口吸盤背縁に穿棘を,体肉内に赤色顆粒を認めた.試験感染ラットから得た成虫は,卵巣が複雑に分岐し,皮棘は群生していた.このようなメタセルカリアと成虫の形態学的特徴から,虫体を大平肺吸虫と同定した.メタセルカリアを検索材材料として得たリボソームDNA・ITS2領域の塩基配列からも,この結論が支持された.カニからの大平肺吸虫メタセルカリアの検出は,東京都ではこれが初めての報告となる.
著者
二宮 博義 猪股 智夫 白水 博
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.66, no.12, pp.1491-1495, 2004-12-25
参考文献数
10
被引用文献数
1 or 0

ツチクジラ(5頭,成獣)の肺の血管系を組織学的および血管樹脂鋳型標本を作製して走査型電子顕微鏡で観察した.肺胞は厚く,結合組織を挟むようにして両面の肺胞毛細血管網で構成されていた.この二重の肺胞毛細血管網は肺胞管および肺胞中隔に常時認められた.末端の肺胞では,しばしば毛細血管網が一層であった.肺胞毛細血管は肺胞の末端に近づくにつれ,互いに融合して,二重の毛細血管網が次第に失われ,末端の肺胞では一層になる傾向が見られた.細静脈では膠原繊維がリング状に血管内皮下を走っており,樹脂鋳型では30〜100μm間隔のリング状の溝として観察された.最初の静脈弁は肺胞毛細血管が集合する集合細静脈に見られた.この静脈弁はフラップ様,漏斗状,煙突状の構造で,きわめて特徴的であった.
著者
筒井 敏彦 村尾 育子 河上 栄一 小笠 晃 Stabenfeldt George H.
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.801-806, 1990-08-15
被引用文献数
1 or 0

繁殖季節における雄猫の androgen分泌状況を明らかにするため, 末梢血中 testosterone (T)の日内変動, 精巣静脈血と末梢血中における androgen量 [androstenedione (A), 5α-dihydrotestosterone (DHT), T]の関係について観察した. また精巣の組織学的観察によって造精機能についても検討した. 実験には自然採光下の猫舎内で飼育されている年齢2-3才, 体重3.5-4.0kgの雄猫9頭を用いた. その結果, 雄猫の日内における末梢血中T量は, 個体によって大きく変動していたが, 一定の傾向は認められず, episodicな分泌であった. 精巣静脈血中における androgenは個体によってかなりの差が認められたが, 左右の間ではほ等しかった. また3種 androgen量は, それぞれ精巣静脈血と末梢血の間で相関関係が認められた(A:P<0.01, DHT:P<0.05, T:P<0.01). 精巣の組織所見は, いずれの猫においても活発な精子形成が認められ, 各個体間において精細管径および各種精細胞数にも有意差は認められなかった.
著者
桑村 充 井手 美佳 山手 丈至 白石 佳子 小谷 猛夫
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.68, no.10, pp.1117-1119, 2006-10-25
被引用文献数
1 or 0

4歳齢の柴犬が,原因不明の疼痛があり触ると過敏に痛がるとの主訴にて来院した.7日後,運動失調,後肢の脚弱とナックリングが認められ,第20病日に死亡した.剖検では胸椎に腫瘤が認められ,全身のリンパ節,腎,膵,脾,前立腺,甲状腺,心に白色斑が見られた.組織学的に,腫瘤は肉芽腫性炎症からなっており,抗Candida albicans抗体陽性の真菌が認められた.
著者
佐藤 雪太 萩原 未央 山口 剛士 湯川 眞嘉 村田 浩一
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.55-59, 2007-01-25
被引用文献数
3 or 0

日本の野鳥に感染が見られたロイコチトゾーン(Leucocytozoon spp.)の分子系統関係の解析を試みた.血液塗沫観察によりロイコテトゾーン感染を確認した北アルプス立山および爺ヶ岳に生息するライチョウ9個体および兵庫県内で保護された野鳥7種13個体(ハシブトガラス4羽,ハシボソガラス2羽,コノハズク2羽,ヤマドリ1羽,イカル1羽,ホンドフクロウ1羽,ヒヨドリ2羽),計22個体の血液からDNAを抽出した.次いでロイコチトゾーンのミトコンドリアチトクロームb(cytb)の部分塩基配列に基づきプライマーを設計し,nested PCRで特異的増幅を試み,増幅産物のシーケンスを決定して配列比較を行った.その結果,ライチョウ9個体すべて(100%),その他の野鳥(ハシブトガラス,ハシボソガラス,イカル,ヒヨドリおよびコノハズク)13個体中11個体(84.6%)でPCR増幅が見られた.増幅されたcytb部分塩基配列約465bpを用いて系統樹を構築したところ,ライチョウと他鳥種寄生のロイコテトゾーンとの間で大きく分岐した.本研究は,日本における野鳥寄生ロイコチトゾーンを分子系統学的に解析した初めての報告である.
著者
松井 寛二 菅野 茂 天田 明男
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.305-312, 1986-04-15

サラブレッド仔馬ならびに母馬各5頭に安静時鼻捻子保定を行い, 心拍数ならびに心電図に現れる変化について比較検討した。仔馬ではいずれの月齢においても, 鼻捻子保定による心拍数の減少は母馬に比較して顕著であり, 仔馬における徐脈効果は鼻捻解除後も少なくとも3〜5分間は持続した。仔馬, 母馬ともに鼻捻子保定による心拍数の減少にともなってA-B誘導心電図のT波の陰性成分が増大した。5頭中2頭の仔馬では, 3.5および4力月齢時の鼻捻子保定により, 第2度房室ブロックが誘発され, この現象は再現可能であった。
著者
和田 成一 倉林 秀光 小林 泰彦 舟山 知夫 夏堀 雅宏 山本 和夫 伊藤 伸彦
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.471-477, 2003-04-25
被引用文献数
2 or 0

三種類の細胞, CHO-K1, HMV-IIおよびL5178Yを用いてγ線照射によるDNA損傷と細胞死との関係を調べた.細胞の生存率はクローン形成法によって求められた.放射線照射によるDNA鎖切断とその再結合はアルカリ及び中性コメット法で測定された.三種類の細胞の中ではL5178Yが最も放射線感受性で,CHO-K1とHMV-IIは放射線抵抗性であった.これらの細胞の放射線感受性(2Gy照射時の生存率)と,アルカリ条件下での単位線量あたりの初期DNA損傷生成率の間には負の関係が認められた.一般に細胞の放射線感受性に関連すると考えられているDNA二本鎖切断の単位線量あたりの残存量(照射4時間後)と放射線感受性との間にも負の関係が認められた.今回用いた分析条件では,DNA初期損傷の評価にはアルカリ条件が,残存損傷の評価には中性条件が適することが分かった.今回用いたコメット法は,放射線によるDNA損傷を検出する他の方法よりも簡便で迅速であるので,放射線感受性を予測する方法として有用であると思われる.
著者
秋葉 和温
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.22, no.5, pp.309-PLATE I, 1960-10-30

鶏の Leucocytozoon 病(L. caulleryi)は北海道と東北の一部の県を除いた各県に分布すると共に, 台湾, 印度支那, 泰, エジプドにも存在している. またその種類も5種類記載されている. しかし, その中間宿主は何れの種類においても未だ明らかにされていない. 私は今回, ワクモ (Dermanyssus gallinae), アカイエカ (Cnlex pipiens pallens) とニワトリヌカカ (Culicoides arakawae) の3種の吸血ダニならびに昆虫について媒介試験を試みた結果, ニワトリヌカカ体内に Zygote, Oocyst, Sporozoite が多数例に認めることができると共に, Sporozoite のみられたニワトリヌカカ乳剤を雛の静脈内接種により13羽の人工感染雛を得ることができた. また gametogony の出現は14日前後で末梢血液塗抹標本で検出しえた. これらの成績からニワトリヌカカが L. caulleryi の中間宿主であることが明らかになった.
著者
三浦 克洋 藤崎 優次郎 中島 靖之 村上 洋介 柏崎 守 後藤 信男
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.399-409, 1981-06-25

1977年3月から4月に, 系統を維持しているマウスコロニーに呼吸器病が流行し, その臨床観察, 分離ウイルスの性状, 肺の病理組織学的変化, 細菌学的および血清疫学的調査からHVJの単独感染によることが明らかになった. 流行時, 多数の成熟マウスが発病・死亡し, 系統間に死亡率の差異が認められた. 実験室保存血清の抗体調査結果から, 当コロニーでは少なくとも1973年までさかぼのぼる限りHVJの汚染は起きていなかった. いっぽう, 別棟の購入マウスおよび今回の流行が起きた同一棟内のラットコロニーにおいては, すでにHVJによる汚染が生じていた. 流行マウスコロニーでは, 感染と同時に抗体が出現し生残マウスのほとんどは高い抗体価を示した. 流行終息後の1代産仔においては若齢時には抗体が検出されたが成熟時には検出されなかった. 1代産仔およびその後約2年間に生産された6-8世代のマウスには発病も抗体出現も全く認められなかった. このことから, 当コロニーでは流行時の発病マウスの淘汰, 約2か月間の繁殖停止および流行後の生残マウスの免疫獲得により, ウイルスの存続を防止できたものと考えられる. 謝辞: 本研究の遂行にあたって, 家畜衛生試験場国安主税博士, 今村憲吉技官, 日本医科大学鈴木博博士ならびに国立予防衛生研究所中川雅郎, 鈴木映子両博士に御協力いただいたのでここに深謝いたします.
著者
松岡 理 榎本 好和 大久保 義夫
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, 1962-08

放射性降下物(Fallout)の牛乳への移行を研究する基礎の段階として, 家兎およびラットに Sr^<89> および Ca^<45> を投与して, Sr が乳に移行する状態を検討した. また投与された Sr および Ca の血中での消長と, 糞および尿への排泄の量的関係を追求した. その結果, 投与された Sr は血液から急速に消失すること, Sr は一般に尿より糞に多く排泄されること(家兎で投与後の24時間を除く), そして哺乳中のラットでは, その差が数倍から数十倍に及ぶことが明らかになった. そして Carrier-free の Sr では, 投与量の21%が10日間に排泄されるのに対し, Carrier を加えたものでは, これが53.1%であった. 乳中の Sr^<89> の濃度は, 血中濃度にくらべて非常に高い. これは血中の Ca 濃度と, 乳中の Ca 濃度との大差に由来するものと推定された. 一回注射によって投与されると, Sr の乳への移行は, 血中での消長と同様に, 急速に減少すること, また連続同量投与がくりかえされると, 乳への移行量は漸増することがわかった. さらに飲料水に Sr^<89> を混合して経口的に摂取させ, 乳への移行を経時的に追求した. その結果, 摂取量の約10%が吸収され, そのうち約20%が乳に移行するものと推定された. またこのとき, 飲料水に非放射性の Ca が大量に加えられると, 乳への移行が抑制される. しかし同様に非放射性の Sr が加えられても, 乳への移行は抑制されないことがわかった. 乳中の Sr が, 化学的にいかなる形で存在しているかを, 種々の方法で検討した. その結果, 大部分は乳中のカゼインと結合していることが明らかとなった. このことから, 乳製品への Sr の移行に一つの方向が考えられるので, in vitro で家兎乳および牛乳に Sr^<89>, Ca^<45> および Y^<90> を付加して実験した. またこれらを付加した牛乳を超遠心分離にかけ, レンネットで凝固させて実験した. これによって, 付加された Sr^<89> も Ca^<45> も, 生体を通過したものと同様に, カゼインと結合すること, およびレンネット凝固によって, カゼイン側, すなわちチーズ側に移行することが確かめられた. さらにこれらの場合に, 非放射性の Sr または Ca が, 同時に大量に加えられたとき, カゼインへの移行が, 量的にどのように変化するかを検討した. そしてこの現象が, 汚染牛乳の除毒に役立つ可能性について考察した.