著者
小松 悟
出版者
一般社団法人 日本内分泌学会
雑誌
日本内分泌学会雑誌 (ISSN:00290661)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.80-89,75, 1972

家兎の耳静脈よりNa<SUP>131</SUP>I (100μC.) を注射, 15分後から48時間後にわたって甲状腺内の有機ヨード化合物への<SUP>131</SUP>Iの取り込みをしらべた.摘出甲状腺をトリプミン消化後, ブタノール抽出し, この抽出物の濃縮液を水平式高圧濾紙電気泳動 (ホウ酸-NaOH, pH10.8;3.000volt.) にかけ, 泳動後ラジオ・オートグラムをつくつた.ラジオ・オートグラムから<SUP>131</SUP>I放射性のバンドの泳動した炉紙上の位置を求めて切出し, 各バンドのc.p.mを測定した.<BR>Na<SUP>131</SUP>I静注後15分にして7~8本の放射性バンドが認められ, 1~3時間で10~12本に達し, 以後, バンド数はこのままで増減はなかつた.最も速かに泳動される無機ヨード (I<SUP>-</SUP>) を除いた全バンドのc.p.m.の総和から各バンドのc.P.m.の相対量 (百分比) を求め, それぞれのバンド中の<SUP>131</SUP>I の相対量が注射後の時間でどう変動するかをしらべてみたところ, MITが先づ増え (15分でピーク), ついでDITが30分でピークに達した.T<SUB>3</SUB>画分は30分まで放射能が認められなかつたが, T<SUB>4</SUB>画分は15分から既に<SUP>131</SUP>Iの取り込みが見られた.しかし, T<SUB>3</SUB>は60分以後, T<SUB>4</SUB>は15分以後, 48時間までの間に有意の増減を示さなかった点は従来のネズミについての多くの文献のデーター (ペーパークロマトグラフィーで分離している) と著しく相違していた.この点については, あるいは動物の種の違いと分析方法の相違がその理由かもしれないが, 今後の解決に俟たねばならない.