- 著者
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小松田 沙也加
- 出版者
- 金沢大学
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2013-04-26
これまで本研究では摂動角相関法[1]により、空気中での熱処理によって形成するZnO中の不純物AlとInの強い会合状態が真空中での熱処理により解離する現象を観測してきた。またこの局所構造変化が希薄な酸素濃度条件下での熱処理中に生じるZnOの酸素空孔形成に誘起される現象であることを見出した。平成26年度はこの局所構造変化の熱処理時間依存性を詳細に調べることにより、この反応の1123 Kにおける速度定数を見積もることができた。さらに同様の実験を異なる温度で行い、速度定数の温度依存性をみつもり、そこからZnOの酸素空孔形成の活性化エネルギーに相当する値を実験的に0.72(6) eVと見積もった。これは理論計算によって得られた酸素空孔形成エネルギーの値[2]が本実験結果と近い値を示すことからも強く示唆された。酸素空孔形成のエネルギーを実験によって見積もる手段は少なく,上記の結果は不純物をプローブとする摂動角相関法によって初めて得られた観測情報であるといえる。現在は試料の熱処理時の雰囲気条件を真空からアルゴンガスに変えて同様の実験を行い、圧力によるZnOの酸素空孔形成エネルギーの変化を調べている。また上記の研究成果をThe 5th Joint International Conference on Hyperfine Interactions and Symposium on Nuclear Quadrupole Interactions (HFI/NQI 2014) 、2014日本放射化学会年会・第58回放射化学討論会の国内外の学会にて報告し、それをまとめた論文がJournal of Applied Physics 誌、Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry誌にそれぞれ掲載された。[1] ホスト物質に放射性核種のプローブを導入し、プローブ位置での微視的な構造や性質を調べる分光法の一つ。本研究ではプローブに、ZnOのドナーである111Inを採用した。[2] F. Oba et al. Phys. Rev. B, 77, 245202 (2008)など