著者
内山田 康 O'DAY ROBIN O'DAY Robin
出版者
筑波大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2014-04-25 (Released:2015-01-22)

From April 2016 to August 2016, Dr. O'Day did 4 months of ethnographic fieldwork and continued working with NG0s, Fukushima evacuees and activists working on the related issues. He worked with a group mothers who have evacuated from Fukushima to Tokyo with their children, a group of mothers who remained in Fukushima after the nuclear accident, a group of volunteers that identify themselves as “supporters” of those evacuees, a peace movement of women called “Mothers Against War”, and another student peace and pro-democracy movement called Student Emergency Action for Liberal Democracy (SEALDs). In addition, Dr. O'Day also engaged in participant observation research at political demonstrations, community events, and by volunteering in some disaster reconstruction projects.
著者
梅田 道生
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011 (Released:2011-12-12)

本年度は昨年度の後半に引き続いて東京大学において研究を行い, 選挙制度改革が有権者の政権評価や投票行動に与えた影響を検証するために, 近年発達したベイジアン動的線型モデルについての研究を行った。またこの手法の基礎となるベイズ統計学とコンピュータを利用したその応用法についても学んだ。さらにこのモデルを昨年度までに作成した1960年代より今日に至るまでの日本の有権者世論調査に関するデータセットに対して用い, 分析を進めた。分析の結果は近日中に論文としてまとめ, 学会において報告する予定である。また本研究課題の一部として, 昨年よりミシガン大学のマッケルウェイン教授と朝日新聞社が衆議院総選挙前にそれぞれの選挙区において行っている有権者調査の1979年以降のデータを用いた共同研究を行ったが, この研究の成果の一部である選挙区レベルでの政党支持及び無党派層の割合の推移と政党得票の関係について, 5月に京都大学で行われた2013年度日本選挙学会総会・研究会において報告することができた。そのほかの研究実績としては, 選挙区ごとの有権者と議員/候補者の政策選好の類似性, および現職優位性について論じた単独研究の成果をそれぞれ学会で報告したこと, 谷口将紀研究室のメンバーでの共同研究の成果を岩波書店『世界』にて発表したこと, さらにダートマス大学の堀内勇作教授との共同研究の成果を, 日本政治学会や米国政治学会などの学会で報告し, さらにその成果の一部に基づく論文を査読付研究誌に投稿したこと, 昨年度執筆した書評が出版されたことなどが挙げられる。
著者
山中 伸弥 JOHANSSON ERIK MARTIN Johansson Erik Martin JOHANSSON Erik Martin
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2014-04-25 (Released:2015-01-22)

本研究の目的は、iPS細胞にがん特異的ゲノム変異を導入することで、脳腫瘍の発生をインビトロで再現し、遺伝子発現ダイナミクスを中心にした分子機序を明らかにすることである。本研究では、シングルセルエピゲノム解析によって、細胞の分化過程における遺伝子発現制御のダイナミクスを明らかにする。特に細胞分化過程における遺伝子発現のヘテロ性を考慮した解析を行うことによって、シングルセルレベルでの分化の度合いの定義を行い、その分化の度合いに従った遺伝子発現制御を明らかにする。これらのシングルセル技術を脳腫瘍発生モデルに応用することで、脳腫瘍の発生モデルを構築すると共に創薬スクリーニングの基盤を提供する。具体的には、二次性神経膠腫で特異的に見られるIDH1変異体をiPS細胞に導入し、この変異体をアストロサイトなどの神経細胞へ分化させる際に一過的に癌発現させる。その変異体がひきおこす正常分化の異常を捉えることを試みる。さらには複数の変異遺伝子を同時、または連続的に発現させることで多段階発がんモデルを作製する。これらのモデルを用いて、正常な神経分化から逸脱する細胞集団をシングルセル遺伝子発現解析で同定する。さらにはこの分化系を用いて癌様細胞が発生する培養条件で、それらの細胞集団を標的とする化合物の同定を試みる。
著者
三浦 瑠麗
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007 (Released:2007-04-01)

これまで「攻撃的な戦争」の多くが軍の責任に帰されたのに対し、シビリアンは多くの攻撃的な戦争を引き起こしてきた。軍がシビリアンの推進する好戦的な戦争に反対したケースさえ数多く指摘できる。同様に、リベラリズムの議論は権威主義体制、全体主義体制やミリタリズムの国が攻撃的な戦争を引き起こしがちだと考えてきたが、実は安定したデモクラシーによって数多くの攻撃的な戦争が引き起こされてきたのである。本研究はデモクラシーにおける「シビリアンの戦争」というこれまで見過ごされてきたテーマの研究であり、リアリストの理論では説明できない開戦判断や敵意の説明、安保政策研究者が勝敗にのみ注目してきた戦争の開戦判断に纏わる説明を提供し、リベラリストが分析してこなかったデモクラシー下のシビリアンの戦争の理論化を試みた。事例としてアメリカ、イギリス、イスラエルの先進民主主義国を比較分析することにより、先進民主主義国特有の現代的な問題、軍の反対する「シビリアンの戦争」を指摘し得た。シビリアンの攻撃的な戦争は個別の歴史研究で明らかにされてきたし、人々は同時代の好戦的なシビリアンの存在をみとめてきた。しかし、個別の戦争の説明は特定の指導者の資質や好戦性など属人的な議論に流れがちであった。本研究は構造的な要因を説明し、デモクラシー下のシビリアンが攻撃的な戦争、不必要な戦争を望んだ時には、民主的な制度や理念による戦争の防止は期待できず、対照的な軍の消極性を考えれば、シビリアン・コントロールもまた攻撃的な戦争を防止するための解ではないことを解き明かした。このように、本研究は伝統的政軍関係理論とは異なる政治と軍事の関係の研究分野を切り拓くことができたのである。本研究はわたくしの博士論文として東京大学に提出するため、執筆の最終段階である。
著者
三浦 瑠麗
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01 (Released:2014-01-29)

本研究課題は多国籍企業の展開を通じた人々の意識の変化、そしてそれが国際関係にもたらす長期的な影響の仮説を理論的に構築し、部分的に実証することであった。そこで、昨年度は初年度の理論化の作業に続いて中国発多国籍企業のイギリスにおける進出の政治的余波とそれへの対応を調査し、先進国市場に進出したアジア発多国籍企業が直面する課題とそれへの対応が確実になされていることを確認した。また、経済的相互依存による平和仮説、いわゆるコマーシャル・ピースの例外とされる東アジア(いわゆる東アジアパラドックス)において、日中韓につきN=各2000での対外意識調査を設計し同時に実施した。それを分析した結果、人々の対外認識がビジネスの性質によって大きく異なることを実証した。一般的には東アジアでは歴史問題の存在によって厳しい政府間の対立があり、また攻撃的な世論の存在がその政府の対立姿勢を支えているとされる。しかし、東アジアパラドックスの存在を指摘しただけでは、コマーシャル・ピースのメカニズムが実際に存在しているのか、それとも存在していないのか(政治と経済は別なのか)は定かではない。したがって、本研究ではコマーシャル・ピースが機能するための段階論を定義した上で、日中、日韓の貿易構造や国内政治経済構造を分析の射程に含め、どのようにコマーシャル・ピースが十分に作用しなくなっている状態なのかを解析した。この研究成果は東京大学政策ビジョン研究センターの主催した日米中韓を主な参加者とする国際会議において発表し、高い評価を受けた。また、時事通信社のE-Worldにも短い論考ではあるが日中両国民間にしぼった分析を寄稿した。引き続き研究成果を還元するため成果を様々な媒体に公表していきたい。
著者
唐澤 太輔
出版者
早稲田大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009 (Released:2009-04-01)

南方熊楠の「やりあて」(偶然の域を超えた発見や発明・的中)を可能たらしめている「場」の研究を中心に行った。その場とは「南方曼陀羅」における「理不思議」という領域であることを明らかにした。そして、統合失調症者に見られる様々な症状を比較対象とし、いわば「人間学的精神病理」の見地から研究を行った。自己と他者との境界・区別が曖昧になる領域を、自己と他者とをつなぐ「通路(パサージュ)」として捉え、その場に立ち、他者と交感し、さらに再び自己へと戻ることが、「やりあて」を可能にする条件の一つという結論を導き出した(『ソシオサイエンスvol.17』「南方熊楠の『大不思議』論-根源的な場に関する考察-」)。「やりあて」が可能になる場を「自他の区別が曖昧になる場」とする一方、自他を根底から支え、含み、さらに自他の内に含まれながらも、それらを超えている根源的な場を「自他融合の場」とし、それを「南方曼陀羅」における「大不思議」に見出した。そして、「大不思議」という、いわば「生命の根源的な場」を、熊楠と土宜法龍との間の往復書簡における言説から考察した。またCG.ユングの深層心理学を援用し、「南方曼陀羅」が熊楠の思想の核であると同時に、彼自身の心のカタルシス(浄化作用)としても機能していたのではないか-つまりこの曼陀羅を構築することで、彼自身の心に「統合性」が与えられていたのではないか-という新たな仮説を立て、考察を行った(『トランスパーソナル学研究vol.11』「南方曼陀羅への深層心理学的アプローチ-ユング心理学を手がかりに-」)。さらに、熊楠と彼の研究対象であった粘菌との関係から、熊楠が知り得たことを「内観」をキーワードに、研究・発表した、(「第9回日本トランスパーソナル学会大会」「南方熊楠の「内観」に関する考察-ユング心理学を援用して-」)。
著者
永岡 崇
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006 (Released:2006-04-01)

アジア・太平洋戦争において、天理教の信徒たちが行ったひのきしんがもつ意義を、帝国日本というより大きな文脈に位置づけなおすため、1940年代前半の代表的ひのきしん論である諸井慶徳『ひのきしん叙説』と、帝国日本による「聖戦」の教義を端的に示すと思われ、天理教のひのきしん隊も多数参加した橿原神宮神域拡張事業において語られた言説との比較を試みた。天理教信徒にとって、「聖戦」の教義はひのきしんの教義と深いところで響きあっており、前者を後者に手繰り寄せる形で総力戦の遂行を主体的に担っていったと思われる。また、「聖戦」の教義がひのきしんのような宗教思想・信仰と親縁性を有し、それへの読み替えを通じて実践されたことを明らかにし、アジア・太平洋戦争の宗教戦争としての性格を改めて見直し、その宗教性の受け皿となった宗教教団や社会集団の思想・実践との比較を行うとともに、それらとの接触の様相を分析していく必要性を提起した。これまで遂行してきた作業によって、戦後の宗教教団にとって非本来的で否定的なものとしてのみとらえられがちであったアジア・太平洋戦争期の経験を、現代の教団、またその教義や信仰のあり方を構成する重要な要素として位置づけ、負の側面へと深化していく宗教性のありようを積極的にとらえる歴史-宗教学的考察の領域を切り開くことができた。
著者
林 博貴
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009 (Released:2009-04-01)

本研究の目的は、超弦理論の真空を用いて現象論における問題を解明することである。その中でも特に、F理論のコンパクト化は四次元の超対称性大統一理論に出現する物質場と湯川結合を全て生成することができるため、現象論を議論する超弦理論の真空として非常に魅力的である。本年度はF理論を用いた超対称性大統一理論における陽子崩壊問題について議論した。超対称性を持った大統一理論は、繰りこみ可能な陽子崩壊を引き起こす演算子の存在が一般には許されてしまう。そこで、F理論を用いて大統一理論を構築した際にも、この項をなんらかの方法で禁止する必要がある。我々の研究以前まででよく用いられてきた方法は、あるゲージ群を大統一理論のゲージ群へ破る際に導入する随伴表現スカラー場の期待値を特殊に調節することによって、余分なU(1)対称性を低エネルギー理論に残すというものである。このU(1)対称性によって次元四の陽子崩壊演算子は禁止されると思われてきた。しかし、内部空間の構造をよく調べるとこの期待値が発散し、ゲージ理論の近似が悪くなる場所があり、そこを考えてもU(1)対称性が残るかは自明ではない。そこで、我々は期待値が発散する場所も含めたF理論の内部空間全体を詳細に解析することで、生成されると思われてきたU(1)対称性が実際には破れていることを示した。さらにその元で、次元四の陽子崩壊演算子が生成されることをも明らかにした。我々の研究によって初めて、ゲージ理論の枠内を越えた寄与が物理的帰結を与えることが示され、F理論の内部空間全体の構造も重要であることが認識された。
著者
橋本 剛
出版者
静岡大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002 (Released:2002-04-01)

コンピュータ将棋の開発では探索と評価関数が大きな2本の柱であるが,評価関数は従来各駒の玉との相対位置を点数化した「相対評価」が主流であった.だが相対評価には悪手であるにもかかわらず玉が自分の駒に接近してしまうなど重大な副作用がある.本稿ではこのような副作用のない「絶対評価」をメインにして相対評価の使用を大幅に制限する評価関数TACOSYSTEMを提案し,その実装方法を具体的な例を用いて示す.TACOSYSTEMを実装した我々の将棋プログラムTACOSは第14回世界コンピュータ将棋選手権で決勝入りを果たすという好成績を収めた.ゲーム木探索にとって水平線効果は最も厄介な問題で,特に水平線効果が出やすいゲームではその対策が不可欠である.将棋など持ち駒を使用するゲームでは明らかに損と断言できる水平線効果の指し手が存在するが,これまでその対策が論じられたことはなく現在も将棋プログラムで頻繁にみられる現象である.これを「強度の水平線効果」の指し手と呼び,ゲーム木探索においてこれを完全に除去する方法「SHEK (Strong Horizon Effect Killer)」を提案した.SHEKでは探索中の局面同士で生じる強度の水平線効果はもちろん,ルート局面以前の過去の局面とで生じる強度の水平線効果も指し手の履歴さえあれば完全に除去することが出来るが,計算コストはほとんどかからない.SHEKの概念と実装方法を紹介したのち,千日手問題等に適用する方法も提案し,将棋プログラムに実装してその効果を実証していく.
著者
越野 剛
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005 (Released:2005-04-01)

今年度は三年間の研究の成果をまとめ、社会に還元するようなかたちで総括的な仕事をいくつか行うことができた。北海道大学スラブ研究センターの主催した市民向け公開講座「拡大する東欧」の中で、チェルノブイリ原発事故について講演した。その内容については雑誌「しゃりばり」およびスラブ研究センターのホームページに掲載されている。これまでの研究で得た成果を用いながら、現代ベラルーシの国民形成にとってチェルノブイリ事故が大きな影響を及ぼしていることを説明している。チェルノブイリの医療支援に長年携わっている長崎医大の山下俊一先生のイニシアチブにより、ベラルーシの詩人リホール・バラドゥーリンの作品を翻訳することができた(『バラドゥーリン詩集:風に祈りを』越野剛訳、春風社、2007年)。バラドゥーリンはベラルーシの代表的な詩人の一人で、ノーベル文学賞候補としてベラルーシ作家同盟から推薦されたこともある。今回訳出した詩の多くにはチェルノブイリ原発事故や放射能の恐怖のもとで暮らす人々の生活が描かれている。2月には3週間のモスクワ出張を行い、国立図書館などで資料を収集した。チェルノブイリ原発事故だけではなく、災害の記憶と結びついて連想されるような歴史的事件にも関心を広げるように努めた。とりわけ第二次世界大戦とナポレオン戦争の記憶はロシア・ウクライナ・ベラルーシ地域の人々にとって重要な意味を持っており、今後の研究にもつなげていきたい。
著者
横山 明彦 ATTAVIRIYANUPAP Pathom ATTAVIRIYANUPAP P.
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003 (Released:2004-04-01)

欧米を中心とする世界各国において、電力自由化が進められており、その一環として競争的電力市場が創設されている。代表的な例としては、米国のPJM ISOやNY ISOのエネルギー市場。日本では2005年4月より電力自由化の一層の進展が始まり、日本卸電力取引所等が開設された。電力自由化においては、全国各地で新規参入が増えて地域間の電力取引が活発になると、これまでの電気の流れ(電力潮流)が大きく変化し、予測が難しくなる。地域によっては送電能力が不足して送電系統が混雑し、意図した電力取引ができなくなってしまう。電気料金が高くなる原因の一つと考えられる。現在NY ISO等がこのような問題で苦しんでいる。また、電力系統における設備に事故が起こった場合も停電が起こり易くなる。電力供給信頼性に影響を与えるものと懸念されている。「価格高騰」及び「供給信頼度」問題を解法するために、送電系統を拡充することが方法の一つと考えられる。しかしながら、送電線新設には多額のコストと時間がかかるため、投資者にはリスクがある。また場所がかかるため、重要な環境問題でもある。本研究では、「価格引き下げ」と「安定供給」を目指して、電力自由化における様々な送電系統拡充方法を分析し、最適な送電系統拡充方法を選択する。送電系統拡充方法としては、「送電線の新設」、「FACTS機器の投入」、「現在系統のまま」3つの方法がある。各方法においては様々な不確実性(需給計画、発電計画・運用、設備の事故等)の影響も考慮する。以上を検証するために、計算機シミュレーションのための数式モデルを作成し、シミュレーションを行い、結果分析を行った。
著者
小島 渉
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011 (Released:2011-12-12)

集団で生活するカブトムシの幼虫において、自分が作った蛹室が、近くにいる他個体に壊されてしまう可能性がある。前年度の研究から、蛹室に幼虫が近づいた時、蛹は回転運動により振動を発し、幼虫の接近を防ぐことが明らかとなった。今年度は、蛹の振動信号を受容した幼虫が、どのようなプロセスで蛹室から離れるのかを解析した。幼虫の行動を直接観察するのは困難なため、幼虫が地中を動くときに発する微弱なノイズを計測することで、幼虫の行動を評価した。その結果、蛹の振動を受容した幼虫は約10分間のフリーズ反応をおこすことがわかった。また、蛹の発する振動の成分中の低周波の成分が、幼虫にこのフリーズ反応を引き起こすことが明らかとなった。幼虫の天敵であるモグラの発する振動に対しても、幼虫はフリーズ反応を示したことから、振動に対する幼虫の反応は、モグラなどの捕食者に対する戦略が起源となっているのではないかと考え、種間比較を行った。蛹が振動を発しない近縁種のスジコガネ亜科とハナムグリ亜科の幼虫に対し、カブトムシの蛹の発する振動を与えたところ、カブトムシの幼虫と同じように、約10分間のフリーズ反応をおこした。つまり、ある振動に対してフリーズを起こすという幼虫の性質は、コガネムシのグループに古くから存在していた性質だと考えられる。カブトムシの蛹は、もともと幼虫が持っていた性質に便乗することで、振動信号を進化させた可能性が高い。本研究は、感覚便乗モデルの数少ない実証例であり、動物のコミュニケーションの進化を考える上で重要な発見である。
著者
菊田 康平
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2017-04-26 (Released:2017-05-25)
著者
夏目 房之介 HOLMBERG R.E. HOLMBERG R. E.
出版者
学習院大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010 (Released:2010-12-03)

今回のライアン・ホームバーグと夏目房之介の共同研究では、戦後の日本でおこったマンガの変革期である60-70年代に焦点をあて、マンガ家、編集者、読者だった人々への基礎的な取材調査を通して、当時のマンガ文化の動向を読みとくための基礎資料を編纂することを目指しています。特に2011-2012年度は、上記で述べた各関係者への取材に専念しました。質問内容を吟味し、各項目を作成するために、現代マンガ図書館(東京)、国際子ども図書館(東京)、昭和漫画館青虫(福島)を中心にして、研究資料の収集につとめ、また、その内容を分析・検討しました。2011年7月に始め、下記の10人を取材しました:戦後マンガの中心的な作であるさいとうたかを氏、貸本マンガ作家である石川フミヤス氏と山森ススム氏、60年代の前衛的な作家である佐々木マキ氏と林静一氏、月刊誌「ガロ」の元編集者高野慎三氏、「ガロ」の中心的な作家であるつげ忠男氏と蛭子能収氏、60-70年代の長編マンガ作家のビッグ錠氏、60年代に始め現在までのマンガ評論家である小野耕世氏。各インタビューを録音し、その内の6本を、学習院大学大学院の生徒に依頼、文字起こしを行いました。またこれまでの研究、取材の成果を、アメリカのマンガ研究批評誌、「The Comics Journal」で月例連載として発表しつつあります。最終的にはインタビュー資料集として出版することを考えています。こうした調査の途中経過を、夏目氏のゼミで発表し、各研究者との間で意見交換をおこなう機会も得ました。
著者
横濱 雄二
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005 (Released:2005-04-01)

メディアミックス様々な物語メディアを横断するものであり、特にそのリアリティの構築を考える際の参考として、民俗学、哲学、精神分析などの理論を参考とし、また文学史や文学理論についても諸作を参照した。その成果の一部として、幻想文学に関する論文集である『ナイトメア叢書』(第3巻、第4巻)のブックガイド欄を分担執筆した(今後も継続予定)。また、大衆文化としての映画におけるメロドラマ性やスター性に注目し、近年のメロドラマ研究を参照した。この点を踏まえつつ菊田一夫『君の名は』について、ラジオドラマ、小説、映画のメディアミックスを分析した。時間的に初期のラジオドラマではメロドラマ以外に戦後の社会状況が多く織り込まれていたが、後半では物語の展開とともにラジオドラマ自身もメロドラマ性を強めているが、この傾向は小説や映画でも踏襲され、特に後追いで制作された映画では、ストーリー全体がメロドラマに特化している。こうした物語構成上の変化は『君の名は』ブームでの世評に対応したものといえる。また、全国を巡回するという構成上の特徴は、映画ロケ地の観光地化や、試写会に際しての出演者の全国ツアーといった、物語の外部に存在する俳優の身体性にも広がっている。このような形で物語の内部と外部をつなぐスターの身体性は、石原慎太郎の『太陽の季節』『狂った果実』における登場人物と実弟石原裕次郎との対応とも密接に関連する。また、キャラクタービジネスにおける物語を利用したマーケッティング手法は、こうした身体性と物語性との関係を応用したものと把握できる。メディアミックスはこのように見ると単に諸メディアを通底するばかりでなく、そうした通底性を基盤に俳優や作者といった物語そのものにとっては外部と見なしうる地平までその範囲を広げて考察することができる。これらの研究については、その一部を『層--映像と表現--』(近刊)に発表する。
著者
白井 聡
出版者
一橋大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005 (Released:2005-04-01)

報告者の平成18年度中の研究成果として最も特筆すべきことは、これまでのレーニンに関する研究をまとめた単著を刊行するめどをつけることができたことである。この著作は『未完のレーニン-<力>の思想を読む』と題され、5月10日に講談社選書メチエ・シリーズの一冊として刊行される予定である。本著作の内容の多くの部分は、報告者がこれまで雑誌等に発表してきた諸論考を元としているが、今回一冊の書物に編むにあたって、随所に大幅な改稿がなされた。本書は大枠として、レーニンの二つの著作、すなわち『何をなすべきか?』および『国家と革命』を精読するという体裁をとっているが、単に政治思想史的研究にとどまることなく、現代国家論・現代資本主義論・現代イデオロギー論といったアクチュアルな隣接諸領域についても踏み込んだ考察を行なっている。また、本書は読者への簡便性を考慮した選書シリーズの一環として刊行されるため、一般読者に対するわかり易さも考慮して書かれている。ゆえに、本書はマルクス主義思想への一種の入門書としても機能しうることが期待される。以上により、本書は古典的マルクス主義の思想についての内在的研究となっていると同時に、現代的諸課題について意義ある問題提起を行ないえている、と言えるだろう。また、報告者は2006年10月21日に社会思想史学会の第31回研究大会の<セッションA=マルクス主義の展開>において、「レーニンを再読する」と題した研究報告を行なった。同報告においては、今日レーニンの思想・ロシア革命を再検討する意義に関して、多くの社会思想研究者と意義深い意見交換を行なうことができた。
著者
張 子見
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2014-04-25 (Released:2015-01-22)

今年度は、当初から研究計画であった、福島第一原子力事故由来のホットパーティクル(HP)の破壊分析に史上はじめて成功した。帰宅困難区域で採取された環境試料から、オートラジオグラフィーによって強放射能源の位置を特定し、最終的に顕微鏡下でHP粒子を取り出した。単離されたHPを、高純度ゲルマニウム半導体検出器で測定し、HPに含まれる放射性セシウムを定量した。この放射能測定の結果から、Cs-134/Cs-137放射能比が得られる。この放射能比は、福島第一原子力発電所の原子炉ごとに異なる値をとるため、それらの値との比較から、今回採取されたHPがすべて一号機から放出されたことが推測できた。アルカリ溶融法によってHPを溶液化したのち、固相抽出―イオン交換法によってSr-90を分離した。分離されたSr-90を含む溶液をチェレンコフ光測定することで、Sr-90の放射能を定量した。これまで、計6つのHPに対して上記のSr-90分析を行った。HPに含まれるSr-90は最大で1.3 Bqであった。また、Sr-90/Cs-137放射能比は、すべて0.0001のオーダーであった。これらの結果から、今回分析対象としたHPのSr-90の含有量は低く、Sr-90による人体への被ばく影響はCs-137に比べて無視できると言える。この傾向は、事故後に行われた大規模な陸域の調査からも知られている。一般的に、原子炉過酷事故において、Csは、核燃料から放出されやすい揮発元素として知られており、Srは、比較的放出されにくい非揮発性核種として知られている。定性的にいえば、SrはCsに比べて核燃料からの放出率が低いために、最終的に環境中に放出された放射性物質のSr-90/Cs-137放射能比は低い傾向にある。これら成果は、測定試料の公開手続きを経て、随時論文化して発表する予定である。
著者
野原 将揮
出版者
早稲田大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011 (Released:2011-12-12)

平成24年度は前年度に引き続き戦国出土資料に見える通仮字の分析、〓東語の記述を行った。具体的には、(1)『清華大学蔵戦国竹簡』(以下清華簡と略称する)に見える通仮字の分析、(2)戦国時期の竹簡に見える舌音の再分類、(3)戦国出土資料に見える無声鼻音の再構、(4)〓東語福鼎店下方言の記述、以上の4点を中心に研究を進めた。(1)清華大学に所蔵される戦国期の竹簡は、その資料の特徴から、所謂「戦国楚簡」と称される竹簡とはやや異なる性格を有する(特に用字法の面で)。本研究では、上古中国語音韻体系から清華簡の通仮字(当て字の用法)に分析を加えた。その結果、『清華大学蔵戦国竹簡』の音韻体系はこれまでに再構された音韻体系とそれほど大きな違いが無いことが確認された。用字法の面では他の竹簡と差異がみられるが、音韻面では大きく異なるような通仮は多くない。(2)従来の研究成果(上古舌音のT-typeとL-typeの2類)を基礎に、新出土資料に見える字音について考察を加えた。いくつかの文字の字音はこれまで資料の制約により再構が困難であったが、新出土資料の出現によって明らかとなった(たとえば「潮」等は従来T-typeと再構されたが、L-typeである可能性が高い)。(3)そもそも上古中国語の研究では、研究対象とする時代を定めることが困難であるため、出土資料は音韻史にひとつの定点を与えるものとして重要視される。本研究は戦国時代中期~後期における無声鼻音について考察を加えたものである。結果、戦国期に無声鼻音が存在していたことを確認した。(4)上古中国語音韻体系の再構を進める上で、出土資料は貴重な資料であるが、明らかにできない点も少なくない。したがって古い要素を保存しているとされる〓語の記述も重要となる。本研究は前年度より継続してきた〓東語福鼎店下方言の記述を進めた。本年度は字音と語彙の記述を進めた。
著者
FEDOROVA ANASTASIA(2013) フィオードロワ アナスタシア
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011 (Released:2011-12-12)

本年度、申請者はこれまでのリーサーチを通して収集された一次資料の整理作業を行い、その分析をもとに"Japan's Quest for Cinematic Realism frorm the Perspective of Cultural Dialogue between Japan and Soviet Russia, 1925-1955"(和訳 : 「ソビエト・ロシアとの文化対話から見た日本映画史におけるリアリズムの追求、1925-19551」)というタイトルの博士論文を執筆した。本博士論文において、申請者は当初計画されていた研究課題を大幅に拡充した。即ち、本論文は、ソビエト・ロシアに留学し、そこで育んできたリアリズム観やモンタージュに対する知識を自らの作品のなかで応用してみせた日本を代表するドキュメンタリー映画監督である亀井文夫の作風ばかりでなく、1925年から1955年までの日本映画における、より広い意味での「リアリズム追求の歴史」を、日本とソビエト・ロシアとの映画交流を軸に論じているのである。申請者の博士論文は、1925年から1955年までの間におこった日ソ間の映画交流(相互間における映画作品や映画理論の受容、留学体験を通しての映画知識の共有、合作映画の製作など)を詳細に分析することで、これらの交流を促進させていたのが、日本とソビエト・ロシア両者におけるリアリズムに対する強い感心であったことを明らかにしている。結論部分では、日ソ両映画界に共通していたこの強い感心が、ハリウッド映画の世界的影響力への対抗心から来るものであったと主張され、日ソの映画人が目指していたリアリズムという芸術潮流は、メインストリーム(ハリウッド映画)に対するイデオロギー的及び美学的アルターナティヴの追求として定義付けられている。