著者
内山田 康 O'DAY ROBIN O'DAY Robin
出版者
筑波大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2014-04-25

From April 2016 to August 2016, Dr. O'Day did 4 months of ethnographic fieldwork and continued working with NG0s, Fukushima evacuees and activists working on the related issues. He worked with a group mothers who have evacuated from Fukushima to Tokyo with their children, a group of mothers who remained in Fukushima after the nuclear accident, a group of volunteers that identify themselves as “supporters” of those evacuees, a peace movement of women called “Mothers Against War”, and another student peace and pro-democracy movement called Student Emergency Action for Liberal Democracy (SEALDs). In addition, Dr. O'Day also engaged in participant observation research at political demonstrations, community events, and by volunteering in some disaster reconstruction projects.
著者
梅田 道生
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

本年度は昨年度の後半に引き続いて東京大学において研究を行い, 選挙制度改革が有権者の政権評価や投票行動に与えた影響を検証するために, 近年発達したベイジアン動的線型モデルについての研究を行った。またこの手法の基礎となるベイズ統計学とコンピュータを利用したその応用法についても学んだ。さらにこのモデルを昨年度までに作成した1960年代より今日に至るまでの日本の有権者世論調査に関するデータセットに対して用い, 分析を進めた。分析の結果は近日中に論文としてまとめ, 学会において報告する予定である。また本研究課題の一部として, 昨年よりミシガン大学のマッケルウェイン教授と朝日新聞社が衆議院総選挙前にそれぞれの選挙区において行っている有権者調査の1979年以降のデータを用いた共同研究を行ったが, この研究の成果の一部である選挙区レベルでの政党支持及び無党派層の割合の推移と政党得票の関係について, 5月に京都大学で行われた2013年度日本選挙学会総会・研究会において報告することができた。そのほかの研究実績としては, 選挙区ごとの有権者と議員/候補者の政策選好の類似性, および現職優位性について論じた単独研究の成果をそれぞれ学会で報告したこと, 谷口将紀研究室のメンバーでの共同研究の成果を岩波書店『世界』にて発表したこと, さらにダートマス大学の堀内勇作教授との共同研究の成果を, 日本政治学会や米国政治学会などの学会で報告し, さらにその成果の一部に基づく論文を査読付研究誌に投稿したこと, 昨年度執筆した書評が出版されたことなどが挙げられる。
著者
山中 伸弥 JOHANSSON ERIK MARTIN Johansson Erik Martin JOHANSSON Erik Martin
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2014-04-25

本研究の目的は、iPS細胞にがん特異的ゲノム変異を導入することで、脳腫瘍の発生をインビトロで再現し、遺伝子発現ダイナミクスを中心にした分子機序を明らかにすることである。本研究では、シングルセルエピゲノム解析によって、細胞の分化過程における遺伝子発現制御のダイナミクスを明らかにする。特に細胞分化過程における遺伝子発現のヘテロ性を考慮した解析を行うことによって、シングルセルレベルでの分化の度合いの定義を行い、その分化の度合いに従った遺伝子発現制御を明らかにする。これらのシングルセル技術を脳腫瘍発生モデルに応用することで、脳腫瘍の発生モデルを構築すると共に創薬スクリーニングの基盤を提供する。具体的には、二次性神経膠腫で特異的に見られるIDH1変異体をiPS細胞に導入し、この変異体をアストロサイトなどの神経細胞へ分化させる際に一過的に癌発現させる。その変異体がひきおこす正常分化の異常を捉えることを試みる。さらには複数の変異遺伝子を同時、または連続的に発現させることで多段階発がんモデルを作製する。これらのモデルを用いて、正常な神経分化から逸脱する細胞集団をシングルセル遺伝子発現解析で同定する。さらにはこの分化系を用いて癌様細胞が発生する培養条件で、それらの細胞集団を標的とする化合物の同定を試みる。
著者
小保方 晴子
出版者
早稲田大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

再生医療研究において、作製された医療材料の生態親和性を評価することは極めて重要な実験項目である。ヒト細胞を用いた研究においては免疫拒絶反応を回避するため、ヌードマウスを用いた移植実験が多く行われてきた。ヌードマウスにヒト細胞で作成された組織を移植すると、組織再生が促され、比較的長期に生体内で維持されることが多く報告されている。ヒト細胞のヌードマウスへの移植系はヒトへの自家移植系の模擬実験系と認識されている。そのため、ヒト細胞のヌードマウスへの移植結果は、ヒト臨床研究に移行する前の重要な参考データとなっている。本研究課題はこのような組織工学・再生医療研究の歴史を踏まえ、皮下移植後のヒト組織再生を促進させる因子の探索と、ヒト臨床研究に向けて、ヒトへの移植後どのような反応が起こるのかを正確に予測できるような動物実験モデルを構築することを目的として研究を進めている。特別研究員採用期間に行った研究から、再現性の高い皮下移植法を開発し、野生型マウスとヌードマウスの皮下移植後の免疫応答の違いや、汚職組織の組織再生能の違いについての形態学的・遺伝子学的に解析を行い新たな知見を多く見出してきた。また免疫応答をコントロールするため免疫抑制剤で免疫応答を抑制した野生型マウスとヌードマウスの皮下移植後の組織と免疫応答の比較研究も行ってきた。本年度はこれまでの研究成果を論文にまとめ、研究成果から見出された新規の体性幹細胞の研究にも取り組んでいる。
著者
谷口 雄太
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2015-04-24

本研究の目的は、中世後期の足利一門総体につき十分な理解を得ることにある。今年度はその第3年度であった。そこで得られた成果は以下の通り。第一に、足利氏・足利一門総体に関し、歴史学研究会大会で「足利時代における血統秩序と貴種権威」を報告し、『歴史学研究』963号に掲載された。また、「中世後期武家の対足利一門観」が『日本歴史』829号に掲載された。いずれも、足利氏を頂点とし、足利一門を上位とする中世後期武家の儀礼的・血統的秩序の形成・維持・崩壊過程について検討したものである。第二に、足利一門個別に関し、①「中世後期における御一家渋川氏の動向」が戦国史研究会編『戦国期政治史論集』西国編(岩田書院)に、②「今川氏と「足利一門」「吉良一門」」が大石泰史編『今川氏年表』(高志書院)に、③「足利成氏の妻と子女」が黒田基樹編著『足利成氏とその時代』(戎光祥出版)にそれぞれ掲載された。①は渋川氏の基礎的研究。②は今川氏の自他認識を足利一門・吉良一門をキーワードに考察したもの。③は関東足利成氏関係の基礎的研究。他に、書評類として「書評と紹介 松島周一著『鎌倉時代の足利氏と三河』」(『日本歴史』830号)・「書評 亀田俊和著『観応の擾乱』」(『週刊読書人』3208号)・「遠州飯尾氏は「両属」国衆か」(『静岡県地域史研究会報』213号)を書き、一般向け記事として「足利尊氏」(『南北朝』洋泉社)・「足利一族」(『足利将軍15代』洋泉社)・「関東吉良氏とその時代」(『世田谷往古来今』世田谷区)を認めた。なお、『世田谷往古来今』に関し、刊行後、拙稿部分を確認したところ、校正指示に従っておらず、内容改変もある等、種々の問題が見られた。また、コラムの一部には学術的・掲載媒体的に疑義のあるものがある。注意されたい。
著者
檜山 充樹
出版者
琉球大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究における目的は、鱗翅目シジミチョウ科の小型の蝶であるヤマトシジミの北限個体群において多数確認された翅の色模様修飾の出現要因を探ることを目的としている。その要因解明のため、1、野外個体における色模様修飾形質の遺伝性、2、色模様修飾と低温耐性の同時進化、3、色模様修飾個体における選択圧の有無という3つの視点から、去年度に引き続き研究を進めてきた。今年度の実験として、ヤマトシジミの生息北限において採集された斑紋修飾個体および非修飾個体からそれぞれF1、F2、F3を得たのち、各世代における色模様修飾個体の出現頻度を比較したところ、修飾個体が有する斑紋が遺伝することが確認され、北限個体群において生じた色模様変化形質が一部の個体では遺伝的に固定されていることが明らかとなった。また、配偶者選択における、雌個体の色模様修飾に伴う選択圧の有無を調べるため、北限個体の雄を用いて、修飾個体と非修飾個体とを選択させる行動実験を行ったところ、北限個体では南方の個体群と同様の選択性を示し、斑紋修飾が雄の配偶者選択に大きな影響を及ぼさないことが明らかとなった。以上の成果から、ヤマトシジミの北限個体群において生じた色模様修飾型の出現機構がほぼ明らかとなり、その過程は以下のようであったものと考えられる。すなわち、生息環境の北進に伴う未経験の低温環境が生じ、そのような低温環境に耐えるだけの低温耐性を持つ個体において、副次的に生じた色模様修飾が、低温環境が継続されることにより遺伝的に固定され、さらに色模様修飾個体に大きな選択圧がかからなかったことにより個体群内に浸透した結果、北限個体群において、色模様修飾個体の大量出現が生じたものと考えられる。以上の研究結果は、表現型可塑性が生物の進化の直接的な原動力になる可能性があることを示す、非常に貴重な研究事例であるものと考えられる。
著者
三浦 瑠麗
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

これまで「攻撃的な戦争」の多くが軍の責任に帰されたのに対し、シビリアンは多くの攻撃的な戦争を引き起こしてきた。軍がシビリアンの推進する好戦的な戦争に反対したケースさえ数多く指摘できる。同様に、リベラリズムの議論は権威主義体制、全体主義体制やミリタリズムの国が攻撃的な戦争を引き起こしがちだと考えてきたが、実は安定したデモクラシーによって数多くの攻撃的な戦争が引き起こされてきたのである。本研究はデモクラシーにおける「シビリアンの戦争」というこれまで見過ごされてきたテーマの研究であり、リアリストの理論では説明できない開戦判断や敵意の説明、安保政策研究者が勝敗にのみ注目してきた戦争の開戦判断に纏わる説明を提供し、リベラリストが分析してこなかったデモクラシー下のシビリアンの戦争の理論化を試みた。事例としてアメリカ、イギリス、イスラエルの先進民主主義国を比較分析することにより、先進民主主義国特有の現代的な問題、軍の反対する「シビリアンの戦争」を指摘し得た。シビリアンの攻撃的な戦争は個別の歴史研究で明らかにされてきたし、人々は同時代の好戦的なシビリアンの存在をみとめてきた。しかし、個別の戦争の説明は特定の指導者の資質や好戦性など属人的な議論に流れがちであった。本研究は構造的な要因を説明し、デモクラシー下のシビリアンが攻撃的な戦争、不必要な戦争を望んだ時には、民主的な制度や理念による戦争の防止は期待できず、対照的な軍の消極性を考えれば、シビリアン・コントロールもまた攻撃的な戦争を防止するための解ではないことを解き明かした。このように、本研究は伝統的政軍関係理論とは異なる政治と軍事の関係の研究分野を切り拓くことができたのである。本研究はわたくしの博士論文として東京大学に提出するため、執筆の最終段階である。
著者
三浦 瑠麗
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究課題は多国籍企業の展開を通じた人々の意識の変化、そしてそれが国際関係にもたらす長期的な影響の仮説を理論的に構築し、部分的に実証することであった。そこで、昨年度は初年度の理論化の作業に続いて中国発多国籍企業のイギリスにおける進出の政治的余波とそれへの対応を調査し、先進国市場に進出したアジア発多国籍企業が直面する課題とそれへの対応が確実になされていることを確認した。また、経済的相互依存による平和仮説、いわゆるコマーシャル・ピースの例外とされる東アジア(いわゆる東アジアパラドックス)において、日中韓につきN=各2000での対外意識調査を設計し同時に実施した。それを分析した結果、人々の対外認識がビジネスの性質によって大きく異なることを実証した。一般的には東アジアでは歴史問題の存在によって厳しい政府間の対立があり、また攻撃的な世論の存在がその政府の対立姿勢を支えているとされる。しかし、東アジアパラドックスの存在を指摘しただけでは、コマーシャル・ピースのメカニズムが実際に存在しているのか、それとも存在していないのか(政治と経済は別なのか)は定かではない。したがって、本研究ではコマーシャル・ピースが機能するための段階論を定義した上で、日中、日韓の貿易構造や国内政治経済構造を分析の射程に含め、どのようにコマーシャル・ピースが十分に作用しなくなっている状態なのかを解析した。この研究成果は東京大学政策ビジョン研究センターの主催した日米中韓を主な参加者とする国際会議において発表し、高い評価を受けた。また、時事通信社のE-Worldにも短い論考ではあるが日中両国民間にしぼった分析を寄稿した。引き続き研究成果を還元するため成果を様々な媒体に公表していきたい。
著者
一戸 猛志
出版者
東京理科大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

【目的】高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1)のヒトでの感染がアジアを中心に増加し高い致死率を示しており、それらに対応できる交叉防御能のあるワクチンの開発が急務である。我々は2005/2006シーズンのインフルエンザ三価HAワクチンの経鼻接種によるH5N1ウイルスに対する交叉防御を調べる事を目的とした。【材料と方法】本邦で認可されている三価インフルエンザHAワクチンをBALB/cマウスに経鼻接種及び皮下接種した。アジュバントとして合成二本鎖RNAであるpoly(I):poly(C_<12>U)(Ampligen[○!R])を用いた。ワクチン1μgをアジュバントと共にマウスへ3週間隔で3度経鼻又は皮下接種した。接種2週間後の血清中、鼻腔洗浄液中のウイルス特異的な抗体価をELISAで測定した。さらにワクチン接種2週間後に強毒H5N1株を1,000PFU経鼻感染させ(2μl/片鼻)、感染3日後の鼻腔洗浄液中のウイルス価をプラークアッセイ法にて測定し、マウスの生存率を14日間観察した。【結果と考察】皮下接種群ではワクチン特異的な血液中のIgG抗体応答が、経鼻ワクチン接種群ではワクチン特異的な血清中のIgG、鼻腔洗浄液中のIgA抗体応答が誘導された。高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1)による攻撃感染に対し、皮下接種群では防御効果が認められなかったが、経鼻接種群においてウイルス価の減少と生存率の上昇が認められた。アジュバント併用経鼻ワクチン群では、ワクチン株とは異なるH5N1ウイルス感染に対しても感染防御効果が見られた。このことからシーズナルインフルエンザワクチンの経鼻接種によりワクチン株と抗原性が異なる株が流行を起こしても、ある程度の感染防御効果が期待できることが示された。
著者
内村 康人
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2014-04-25

本研究は、世界最長のC-C単結合を有する化合物の合成研究を通して、共有結合の極限構造を実験的に明らかにすると共に、共有結合に関する新概念の確立を図ることを目的としている。また、導出した骨格を利用して世界最長の非イオン性C-O、C-N結合を有する化合物の合成研究への展開を目指したものである。昨年度までに、分子内の立体歪み効果を利用した分子設計に基づき、①従来の世界記録1.791(3)Åを上回る炭素‐炭素単結合を有する1H-ベンゾ[cd]インドール-2-オン骨格を含むヘキサフェニルエタン(HPE)型化合物、②1H-シクロブタ[de]ナフタレン骨格を含む、世界初のHPE型化合物のα,o-異性体、③“Scissor効果”を利用した、長いC-O結合を有する2H-ナフト[1,8-bc]フラン誘導体、の合成および構造決定に成功している。また、極限まで伸長した結合が示す『伸長性』に由来する特異な現象を数多く観測すると共に、精微な分子設計により、結合と非結合が重複する原子間距離領域が存在することを見出している。本年度は、これらの研究成果をまとめ、博士論文を作成し、博士号を取得した。また、ドイツのキール大学に渡航し、メビウス芳香族分子の合成研究に従事した。より自由度の低い新規メビウス分子を合成するために、ジエチルフェナントレンを基本ユニットとする化合物を設計し、その合成を行った。現在までにメビウス分子前駆体の合成に成功しており、今後、この原料をキール大学の学生が引き継ぎ、メビウス芳香族分子の合成を行う予定である。
著者
唐澤 太輔
出版者
早稲田大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

南方熊楠の「やりあて」(偶然の域を超えた発見や発明・的中)を可能たらしめている「場」の研究を中心に行った。その場とは「南方曼陀羅」における「理不思議」という領域であることを明らかにした。そして、統合失調症者に見られる様々な症状を比較対象とし、いわば「人間学的精神病理」の見地から研究を行った。自己と他者との境界・区別が曖昧になる領域を、自己と他者とをつなぐ「通路(パサージュ)」として捉え、その場に立ち、他者と交感し、さらに再び自己へと戻ることが、「やりあて」を可能にする条件の一つという結論を導き出した(『ソシオサイエンスvol.17』「南方熊楠の『大不思議』論-根源的な場に関する考察-」)。「やりあて」が可能になる場を「自他の区別が曖昧になる場」とする一方、自他を根底から支え、含み、さらに自他の内に含まれながらも、それらを超えている根源的な場を「自他融合の場」とし、それを「南方曼陀羅」における「大不思議」に見出した。そして、「大不思議」という、いわば「生命の根源的な場」を、熊楠と土宜法龍との間の往復書簡における言説から考察した。またCG.ユングの深層心理学を援用し、「南方曼陀羅」が熊楠の思想の核であると同時に、彼自身の心のカタルシス(浄化作用)としても機能していたのではないか-つまりこの曼陀羅を構築することで、彼自身の心に「統合性」が与えられていたのではないか-という新たな仮説を立て、考察を行った(『トランスパーソナル学研究vol.11』「南方曼陀羅への深層心理学的アプローチ-ユング心理学を手がかりに-」)。さらに、熊楠と彼の研究対象であった粘菌との関係から、熊楠が知り得たことを「内観」をキーワードに、研究・発表した、(「第9回日本トランスパーソナル学会大会」「南方熊楠の「内観」に関する考察-ユング心理学を援用して-」)。
著者
吉川 禄助
出版者
長崎大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2015-04-24

①SFTSフレボウイルス(SFTSV)は2011年に中国で発見され、その後我が国でも発見された、新規のフェニュイウイルス科フレボウイルス属に属する新興ウイルスであり、重症熱性血小板減少症候群の原因ウイルスである。SFTSVはヒトには病原性があるが、実験動物であるマウスには病原性を示さず、マウスはSFTSVを自然免疫依存的にその病原性を抑制していることがわかっている。そこで、その病原性の差異を理解することはSFTSVの制御につながると考え、その原因を探索することを目的とした。前年度では、IFNシグナル阻害活性を有するSFTSVのNSsタンパクがヒトでは機能するが、マウスでは機能しないことを見出した。また、それはNSsがIFNシグナルにおいて重要な役割を担う、宿主タンパクであるSTAT2と結合できないためであることを見出した。今年度はマウスに加えて、SFTSV非感受性であるハムスターでも同様な現象がみられることを確認した。その結果、NSsはハムスター細胞においてマウスと同様にIFNシグナルを阻害できず、NSsはハムスターSTAT2と結合できなった。そのため、ハムスターもマウスと同様の機構でSFTSVを抑制していると考えられる。このことから、NSsの抗STAT2活性が病原性を規定し、その宿主特異性を規定していると強く言えると考えている。この結果から、NSsとSTAT2がSFTSVの治療標的になりうると推察している。これらの結果をまとめ、現在論文投稿準備中である。②昨年度に引き続きSFTSVのリバースジェネティクスの開発を進めた。その結果、一定の成果が得られた。
著者
松田 和樹
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2017-04-26

4-6月期は、修士課程における研究を更に発展させるとともに、フェミニズム/クィア理論によるリベラリズムに対する批判を検討した。この成果を5月31日のクィア・セミナー(東京大学駒場キャンパス)と、6月18日の日本女性学会(中京大学)にて報告し、そこで討議された内容を研究にフィードバックした(クィア・セミナーにおける研究報告は日本女性学会におけるものとほぼ同様のものであったため、業績欄には掲載していない)。7-9月期は、主にリベラリズムによるフェミニズム/クィア理論に対する批判を検討した。この期間に研究した成果と修士論文の研究内容の一部、そして博士課程での研究計画の一部を、9月初旬の東京法哲学研究会/関西法理学研究会合同研究合宿(同志社大学)にて報告した。10-12月期は、フェミニズム/クィア理論に、リベラルな正義基底性への内在的コミットメントを見出すことができるか否かを検討した。この研究成果の一部と修士論文の研究内容の一部とを、12月のジェンダー法学会(東北学院大学)にて報告した。また、交付申請書に書かれた研究実施計画よりも早くに研究を進展させることができたため、この時期に初年度新たに取り組んできた研究成果全体を一本の軸にまとめ治す作業を行い、これを通して2018年度の日本法哲学会(東京大学)にて報告するテーマと内容とを概ね決定し、分科会報告に応募した(発表確定済みであるが、次年度の研究報告書に記載する)。1-3月期は、次年度の作業を予備的に行いつつ、修士論文の研究成果と初年度の研究成果とを更に発展させた。ここでの研究成果の一部を、国家学会雑誌における論文に掲載する(掲載確定済み)。また次年度の研究計画をより詳細なものに練り上げていった。
著者
奥野 淳也
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

平成25年度の中心的課題は、北欧諸国の中央地方改革を、福祉国家形成・再編の政治過程との関係性に着目しながら、分析する作業である。昨年度は、スウェーデンのレギオン設置改革の考察を主たる論題としたが、本年度はそれに引き続き、分析対象をデンマークにも広げ、北欧近接比較の観点から検討することを試みた。北欧諸国を一つの「北欧モデル」論で語る論調がある一方で、その類似性の中の差異に着目した秀逸な比較研究がこれまで多く出されてきた。その厚い基盤を吸収しつつ、福祉国家再編期の北欧二国の政治現象を比較の枠組みの中で捉えるべく、その準備の考察を進めた。成果は、2014年6月の日本比較政治学会において報告されることが予定されており、目下その用意を進めている段階である。また、両国の福祉国家形成のプロセスについて、その収敏一分岐(類似性と差異性)のダイナミズムを、歴史的な時間軸の中に置き直し、その位置づけを考究する作業にも取り組んでいるが、これに関しては、学位請求論文執筆時までの続行課題としたい。北欧における市民社会論・国家社会関係をめぐるトピックスを検討する作業も、関連文献の収集. 読解を、引き続き、行っていく。
著者
中野 綾子
出版者
早稲田大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、学徒兵の戦場での読書行為の様相を、実証的かつ総合的に明らかにしていくことで、アジア・太平洋戦争以降、読書の枠組みがどのように組み替えられ、または固定化されてきたのかという、読書行為の認識そのものを問うことを目的としている。本年度は以下のような研究を実施した。昨年度に引き続き、戦時下学生の読書関係資料の収集、調査を継続した。その中で、文部省と日本出版文化協会による良書推薦制度についての分析を行った。その成果は、20世紀メディア研究所発行『Intelligence』に掲載予定である。また、入手困難とされていた雑誌『新若人』(旺文社)の学生向け読書関連記事についての考察を行うことで、戦時下の学生の読書に対する意識変化を明らかにした。その成果は「雑誌「新若人」について 付・「学徒は如何なるものを読む可きか」アンケート結果一覧」として、『リテラシー史研究』(8)に掲載されている。また、昨年度の高知大学に所蔵される木村久夫の蔵書調査から判明した、戦時下の木村久夫の読書状況について、『東京新聞』(夕刊)に寄稿した。当該年度は、戦場における学徒兵(知識階級層)の読書についての考察のため、『兵隊』や『陣中倶楽部』などの戦場に流通していた雑誌について分析を行った。中国大陸における代表的二誌の読者層を明らかにし、その成果については日本出版協会発行『出版研究』に掲載予定である。さらに、当該年度は戦後の「戦場における読書」に関する表現の分析にも着手した。『きけ わだつみのこえ』収録の手記に掲載されている読書状況をはじめ、大西巨人『神聖喜劇』などテクストに記された戦場での読書の分析を進めることが出来た。その成果については、学会誌に投稿予定である。
著者
永岡 崇
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

アジア・太平洋戦争において、天理教の信徒たちが行ったひのきしんがもつ意義を、帝国日本というより大きな文脈に位置づけなおすため、1940年代前半の代表的ひのきしん論である諸井慶徳『ひのきしん叙説』と、帝国日本による「聖戦」の教義を端的に示すと思われ、天理教のひのきしん隊も多数参加した橿原神宮神域拡張事業において語られた言説との比較を試みた。天理教信徒にとって、「聖戦」の教義はひのきしんの教義と深いところで響きあっており、前者を後者に手繰り寄せる形で総力戦の遂行を主体的に担っていったと思われる。また、「聖戦」の教義がひのきしんのような宗教思想・信仰と親縁性を有し、それへの読み替えを通じて実践されたことを明らかにし、アジア・太平洋戦争の宗教戦争としての性格を改めて見直し、その宗教性の受け皿となった宗教教団や社会集団の思想・実践との比較を行うとともに、それらとの接触の様相を分析していく必要性を提起した。これまで遂行してきた作業によって、戦後の宗教教団にとって非本来的で否定的なものとしてのみとらえられがちであったアジア・太平洋戦争期の経験を、現代の教団、またその教義や信仰のあり方を構成する重要な要素として位置づけ、負の側面へと深化していく宗教性のありようを積極的にとらえる歴史-宗教学的考察の領域を切り開くことができた。
著者
林 博貴
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は、超弦理論の真空を用いて現象論における問題を解明することである。その中でも特に、F理論のコンパクト化は四次元の超対称性大統一理論に出現する物質場と湯川結合を全て生成することができるため、現象論を議論する超弦理論の真空として非常に魅力的である。本年度はF理論を用いた超対称性大統一理論における陽子崩壊問題について議論した。超対称性を持った大統一理論は、繰りこみ可能な陽子崩壊を引き起こす演算子の存在が一般には許されてしまう。そこで、F理論を用いて大統一理論を構築した際にも、この項をなんらかの方法で禁止する必要がある。我々の研究以前まででよく用いられてきた方法は、あるゲージ群を大統一理論のゲージ群へ破る際に導入する随伴表現スカラー場の期待値を特殊に調節することによって、余分なU(1)対称性を低エネルギー理論に残すというものである。このU(1)対称性によって次元四の陽子崩壊演算子は禁止されると思われてきた。しかし、内部空間の構造をよく調べるとこの期待値が発散し、ゲージ理論の近似が悪くなる場所があり、そこを考えてもU(1)対称性が残るかは自明ではない。そこで、我々は期待値が発散する場所も含めたF理論の内部空間全体を詳細に解析することで、生成されると思われてきたU(1)対称性が実際には破れていることを示した。さらにその元で、次元四の陽子崩壊演算子が生成されることをも明らかにした。我々の研究によって初めて、ゲージ理論の枠内を越えた寄与が物理的帰結を与えることが示され、F理論の内部空間全体の構造も重要であることが認識された。
著者
前田 太郎
出版者
東京海洋大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

嚢舌目ウミウシは、餌海藻の葉緑体を細胞内に取り込み光合成を行わせる(機能的盗葉緑体現象)。今までは嚢舌目Volvatellidae科が、盗葉緑体現象が獲得される前の祖先的な形質状態を残すグループと考えられてきたが、今回、嚢舌目内の分子系統解析により、嚢舌目の分化と同時に盗葉緑体現象が獲得され、その後Volvatellidae科内で失われたことを示した。これにより、盗葉緑体を獲得する以前の祖先種の生活史や形態の見直しを行い、盗葉緑体というユニークな現象の進化を、信頼できる系統関係から考察することができるようになった。さらに、嚢舌目ウミウシの内、盗葉緑体の光合成能保持期間が最も長い(約10ヶ月)チドリミドリガイ(Plakobranchus ocellatus)について、葉緑体DNA上にコードされるrbcL遺伝子を標的としたクローンシーケンシング解析とt-RFLP解析により、1,単一のチドリミドリガイ個体が、8種の藻類(嚢舌目ウミウシの中では最も多い)に由来する葉緑体を保持すること、2,8ヶ月間に渡り、経時的に、野外個体内の葉緑体組成を計測したところ、組成が月ごとに大きく変化することが示された、今まで、チドリミドリガイは機能的盗葉緑体に強く依存し、幼体期に摂食をして葉緑体を得た後は、摂食を行わないと考えられてきたが、もし野外で摂食が希ならば、葉緑体組成は変化せず、月間で同じような組成を示すはずなので、この結果は、野外でチドリミドリガイが頻繁に摂食を行い、葉緑体を補充していることを示している。このことから、野外の個体は、光合成のみに依存せず、海藻の摂食からも栄養を得ていることが示唆された。これは、機能的盗葉緑体を行う種の、野外での栄養取得状況を初めて確度高く推定したものである。