- 著者
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春原 由香里
臼井 健二
松本 宏
小林 勝一郎
- 出版者
- 日本雑草学会
- 雑誌
- 雑草研究 (ISSN:0372798X)
- 巻号頁・発行日
- vol.40, no.2, pp.95-103, 1995-08-31
- 被引用文献数
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3
著者らはすでに, クロメプロップ自身はオーキシン活性を示さず, 植物体内でその加水分解物であるDMPAに分解された後に初めてオーキシン結合蛋白質に認識され, オーキシン活性を示している可能性が高いことを報告した。本論文では, クロメプロップの更は詳しい作用機構を調べることを目的とし, ダイコン幼植物を材料としてクロメプロップの茎葉処理後に生成されるエチレンが形態変化に関与しているかどうかの検討を行った。(1) クロメプロップ, DMPA処理後に現れる葉のカーリングや葉の葉柄間角度の増大はエチレン生成阻害剤(AOA)を前処理することにより軽減された(Fig. 1, Table 1)。 (2) クロメプロップ, DMPA処理後の上記の作用は, エチレン作用阻害剤(NBD)を後処理することにより軽減された(Fig. 2)。(3) エチレン生成量は, クロメプロップの場合, 茎葉処理12時間後までは殆ど生成されず対照区と同程度であったが, 24時間後からはエチレン量の増加が見られた。DMPAの場合は茎葉処理3時間後から徐々に増加し始め, 12時間後から生成速度が増加した(Fig. 3)。(4) エチレン生成促進剤(ETH)処理により, 著しく第1葉の伸長が阻害された(Fig. 4)。(5) クロメプロップ, DMPA処理により, ACC合成酵素が誘導され, AOAの前処理によりその誘導が抑制されることが確認された(Fig. 6)。(6) クロメプロップ, DMPA処理では, ACCからエチレンへの反応を触媒する酵素(ACC 酸化酵素)の誘導は起こらなかった(Table 2)。以上の結果より, クロメプロップは植物体内でDMPAへと変化し, DMPAがACC合成酵素を誘導することによってエチレン生成量を増加させ, そこで生成されたエチレンが, ダイコンの形態的変化を引き起こしているものと推察された。