- 著者
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小林 正臣
小林 正臣
- 出版者
- 琉球大学法文学部国際言語文化学科欧米系
- 雑誌
- 言語文化研究紀要 (ISSN:09194215)
- 巻号頁・発行日
- no.14, pp.1-19, 2005-10
本稿はアメリカ社会における「人格性(personhood)」という問題の在り方の時代変遷を幾つかの文学作品を批評しながら検証している。とくに肥満体の正当化を目的とする運動は、肌の色などの外見による差別への抗議を含んだ公民権運動と同様に、外見の人格性に関する社会的事象として捉えられる。この点を論証するうえで本稿は、肥満体の人物が登場するチャールズ・ブコウスキーとポール・オースターの諸作品に注目する。それらにおける肥満体の描かれ方を分析すると、戦前と戦後、具体的には1930年代と1960年代の2世代における肥満体に対する意識の変遷が理解できる。そして「人物」に関する議論は、「人」であり「物」である法人に関する議論と不可分である。たとえば、リストラによる組織の「縮小化(downsizing)」という用語が示すように、人間の解雇の問題は法人の肥満の問題でもある。かくしてレイモンド・カーヴァーの小説において頻出する失業問題は、現実または社会における「人」と法律または経済における「人」の対立として考察できる。そして、この対立に関する判例は増加傾向にある。したがって本稿は、人格性に関する議論を通じて、人文科学としての文学と社会科学としての法律学や経済学との新たな学際的研究を行うための試論である。