著者
山口 賀大 佐久間 重光 遠渡 将輝 坂口 晃平 田口 慧 小林 里奈 足立 充 伊藤 裕 田口 望 日比 英晴
出版者
一般社団法人 日本顎関節学会
雑誌
日本顎関節学会雑誌 (ISSN:09153004)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.126-134, 2016-08-20 (Released:2016-10-14)
参考文献数
34

運動療法は,施術直後より関節可動域を増大し,疼痛を早期に軽減させ病悩期間を短縮するものの,その効果について定量的な評価を行った研究は少ない。本研究では,術者が行う顎関節可動化療法と患者が行う自己牽引療法を1つの運動療法プログラムとして捉え,非復位性関節円板前方転位症例に実施した際の短期的治療効果を検討した。顎関節機能に中等度以上の障害が認められた45例を対象として運動療法を施行し,初診時とその約2週間後の初回再来時における臨床症状(最大開口域,安静時痛,開閉口時痛,咀嚼時痛および日常生活支障度)について評価した。その結果,最大開口域,開閉口時痛,咀嚼時痛および日常生活支障度において有意な改善を認めた(p<0.001)。これら症状の改善は,運動療法により関節可動域が改善され,関節腔が拡大されることで下顎頭の動きが改善したものと考える。したがって,本運動療法プログラムは,非復位性関節円板前方転位に伴う諸症状を短期間に軽減させる有効な保存療法になる可能性が示唆された。