著者
小柳 賢太 五味 高志
出版者
一般社団法人 日本治山治水協会
雑誌
水利科学 (ISSN:00394858)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.34-51, 2018-02-01 (Released:2019-04-05)
参考文献数
37

平成28年熊本地震により阿蘇山の中央火口丘群に生じた崩壊は,森林と草地で分布と土砂移動の特徴が異なることが分かった。森林斜面に比べ草地斜面では崩壊密度が高く,特に35度以上の急斜面では草地斜面の崩壊が顕著であった。草地の牧野道や林道の崩壊も顕著であり,農林業の再建に向けて,土地被覆に応じた斜面崩壊危険度の判定を進める必要がある。また,地震後は草地斜面に比べ森林斜面で土砂の滞留が多く,今後の豪雨による土砂の再移動,それに伴う土石流などの二次災害が懸念された。地域の復興に向けては,上流域に滞留する土砂の再移動にも配慮する必要があり,長期的な土砂移動の観測が必要である。林業の復興という観点では倒流木の撤去などによる荒廃した林地の再生が必要であるが,倒流木が撤去されることによる土砂移動の変化については不明瞭であり,流域の復興と二次災害の防災・減災を両立して進めることが今後の課題である。