著者
小橋 麗香
出版者
大阪国際大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

(1)研究対象となるポップスグループのコンサート会場周辺におけるフィールドワーク、(2)別のポップスグループのコンサートおよび他の演目形態(ソロライブ、演劇、ミュージカル)におけるフィールドワークによる、主要顧客層および演目形態の違いによる比較分析、(3)研究対象インターネット上消費者コミュニティサイトおよび類似サイトの掲示板の投稿記録の収集と考察、(4)研究代表者のもう一つの研究主題であるテレビゲーム産業との比較によるエンタテインメント産業におけるネットコミュニティ上消費者行動の特異性と共通点の考察、を実施した。この3年間で、研究対象サイトの1日当たり述べ訪問者数は、8,000人→1,900人にまで急激に減少した。当該アーティストの活動内容や人気に大きな変化は無く、また比較対照サイトでは、2006年3月現在1日当たり平均訪問者数(約11,000人)も平均投稿数(11.17回)も過去3年間で減っておらず活発な運営が続けられている。ゆえに、参加者の減少の原因は研究対象サイト固有のものであると推察できる。最大の原因は、運営者の掲示板への関与のあり方にあると思われる。インターネットの普及により参加者が急激に増加し、文章表現や思考の稚拙な投稿が増加した。「ファンサイト」という前提がある以上、当該アーティストに対して少しでも批判的な意見を投稿する人間は「悪口を書かないで欲しい」という意見に対して分が悪い。明確に掲示板上でトラブルが発生しない限り、運営者は管理人の立場に徹して個人としての意見を発しなかった。「愛ある辛口」投稿がほとんど見られなくなった結果、表面的な感想が多くなり、掲示板の魅力が減少した。比較対照サイトでは、管理人がファンとして独自の見解を折に触れて発信しており、またそのスタンスが単に褒め称えるだけでなくかなり辛口の意見が多いため、掲示板全体としての雰囲気が決して甘すぎにならず、賛否両方の読み応えのある議論が生まれている。