著者
相澤 省一 森 勝伸 小池 優子 角田 欣一
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.271-279, 2017-04-05 (Released:2017-05-13)
参考文献数
15
被引用文献数
3

赤城大沼湖心部の堆積物では放射性セシウムは湖底下5 cm以内の表層にとどまるのに対し,水深の浅い流入部や流出部では15 cmから20 cm付近まで放射性セシウムが含まれていた.流入部や流出部では,粒度の粗い堆積物粒子間への湖水の浸透あるいは湖底での水の流れによる表層堆積物の撹乱が下方まで放射性セシウムが取り込まれた原因と考えられる.湖底堆積物の主な構成鉱物はクリストバル石,石英,斜長石であり,そのほか比較的多量の非晶質物質が含まれる.これらの非晶質物質が放射性セシウムの保持に係わっている可能性がある.周辺土壌の多くは500 Bq kg−1から5000 Bq kg−1の放射性セシウム含有量であり,放射性セシウムの分布について湖周辺で地域的な顕著な偏りは見られなかった.湖底堆積物及び周辺土壌の放射性セシウム含有量から赤城山一帯に降下した放射性セシウムの降下量を見積もったが,その数値は文部科学省が航空機モニタリングで求めた赤城山一帯の沈着量に近い値だった.