著者
小沼 貴裕 岡田 随象
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.345-353, 2021 (Released:2022-02-22)
参考文献数
37

近年のヒトゲノム研究の大規模化と遺伝統計学的手法の発展により,関節リウマチのゲノム解析は多くの進展が見られる.関節リウマチのゲノムワイド関連解析(GWAS)により100を超える遺伝子座が関節リウマチのリスクに有意に関連することがこれまでに報告されている.一方で,GWASにより同定される疾患感受性SNPのほとんどは非コード領域に存在するため,生物学的意義の解釈が困難である場合が多い.我々のグループでは,横断的オミクス解析によりゲノム解析結果と別階層のオミクスデータとを統合解析することで,関節リウマチを含む複数の疾患と形質について,有意に関連する炎症細胞タイプを明らかにした.また,関節リウマチでは体内の微生物叢(マイクロバイオーム)が疾患の病因や進展に関与することも知られる.我々のグループでは,ショットガンゲノムシーケンスを用いた腸内微生物叢のメタゲノムワイド関連解析(MWAS)により,ヒト宿主ゲノムと腸内微生物叢と関節リウマチとの3者の関連性を見出した.さらに,近年ではゲノム情報を用いた個別化医療への応用が注目を集めている.GWASの個別化医療の応用として,ポリジェニックリスクスコア(PRS)によるGWASで同定したSNPに基づく将来的な疾患発症の予測について報告されてきている.我々のグループでは,国際バイオバンク67万人の情報を解析することで,健康寿命に有意に関わるバイオマーカーの同定に成功した.