- 著者
-
小泉,佳男
- 出版者
- 日本産科婦人科学会
- 雑誌
- 日本産科婦人科學會雜誌
- 巻号頁・発行日
- vol.51, no.2, 1999-02-01
女性性器の単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)又は2型(HSV-2)の初感染における血清抗体(IgM, IgG)の推移をELISAを用いて検討した. HSV感染初期におけるIgM抗体の陽性率は第5〜7病日でHSV-1は53.3%, HSV-2は28.6%, 第11〜15病日ではHSV-1, HSV-2ともに100%であり診断的意義は高いと思われた. IgM抗体価の平均的な推移はHSV-1, HSV-2感染ともに2〜3週をピークとして徐々に低下したが症例ごとにみるとIgM抗体価の推移が三つのパターンに分けられることが判った. つまり2〜3週をピークとして低下する群, ピーク以降も低下しないで8前後の1%値を続ける群, 抗体価は上昇しないで2前後の低い値のまま持続する群の3群である. IgM抗体が8前後の高値のまま持続する群は, HSV-1感染例に比べてHSV-2感染例の方が有意に多かった. IgG抗体の陽性率は第5〜7病日ではHSV-1感染例とHSV-2感染例でそれぞれ13.3%と0%, 第11〜15病日でそれぞれ93.3%と62.5%となりHSV-2の方が陽転率が低かったが有意差はなかった. IgG抗体はIgM抗体よりも出現はやや遅れ, IgM抗体にはやや劣るものの診断的価値はあると思われた. IgG抗体はHSV-1, HSV-2ともに3週頃まで上昇したが, 抗体価は低く3カ月目まで臨床的にヘルペス既往のない妊婦や再発を繰り返す性器ヘルペス患者よりも遥かに低い値で推移した.