著者
小清水 卓二 西田 緑
出版者
公益社団法人 日本植物学会
雑誌
植物学雑誌 (ISSN:0006808X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.735-736, pp.146-153, 1949 (Released:2007-05-24)
参考文献数
40
被引用文献数
1 3

1. 本報告は甘藷蔓苗の擴散型 (自家) 生長素の動靜分布を, 燕麥法によつて決定し, これが發根, 側芽の發生, 蔓の生長及び結藷などと如何なる關係を有するかに就いて研究したものである。2. 甘藷蔓苗の各節間に於ける擴散型生長素の分布は, 蔓の頂部から B1 の節位までは恰も一節間の如ぎ状態で, 各節間毎に獨自的偏在が見られない。3. 節位 B1 より基方の節間では, 生長素の分布が各節間毎に獨自的存在となり, 生長素の最大含有帶が, 生長帶の向基的移動と共に次第に各節間の基部の節部に近くに移動偏在を示すようになる。而してB5の節位に到ると, ただその節部即ち葉柄のつきもと附近だけに存するようになる。4. 甘藷蔓の節間の生長は, 最初は全體平等型, 次に中部型, 次に基部型生長となり遂に B5 の節位に於て生長が止まる。この生長帶の移動變化は, その節間内の擴散型生長素が向基的に移動偏在する變化と呼應している。5. 甘藷蔓苗の擴散型生長素は, 蔓の最頂端部ではなお前驅物質として存在するので未だ少いが, A1 の節位に於ては急に増加して最大量を示し, 更に蔓の基部に近ずくに從つて次第に減少する。6. 葉身及び葉柄の擴散型生長素の量は, 節位 B3 のものが最も多く, 節位 B4, B5 のものは少しく減退している。7. 發根は節位 B4, B5 で最も速いが, 發根數は却つで他の節位よりも少い。然しその根の總伸長量は (3週間後) 最大で, 生長も速い。8. 側芽の出るのは, 節位B5の節部が最も速く, 且つその伸長も (3週間後) 最も著しい。而して側芽は結藷上その生長因子の補給源として重要な役割をする。9. 結藷は (4週間後), 節位 B4, B5 の節部が最高を示す。10. 以上の結果から, 甘藷蔓苗の體内擴散型生長素の分布や, その量等の内的要因は, B5 の節位が發根, 側芽發生, 結藷等に最適状態にあるため, 甘藷蔓苗は, 節位 B5 を中心とする部分の健全である事が最も必要で, 挿苗にはこれ等の節位を中心としてなすべきである。