著者
小町谷 照彦
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.34, no.7, pp.41-49, 1985

好忠の詠作を専門歌人という視点から考察し、和歌史的に定位してみた。好忠は専門歌人として宮廷社会の中に自己の位置を確保しようと、新しい形式や表現を開拓しようとしたが、専門歌人に対する意識の変化や詠風の時代的先取りのために季節はずれ的存在として疎外され、晩年に至ってようやく歌合などに出詠できるようになった。次代に入ってようやく評価されるようになった好忠の詠歌の女歌に通じるような独特な抒情は、古今調の限界をきわめた表現時空を確立し、その切実な存在証明の営為の産物であった。