著者
小倉 協三 小畑 充生 古山 種俊
出版者
東北大学
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1993

中等度好熱性細菌B.stearothermophilusのファルネシルニリン酸(FPP)合成酵素については 1.部位特異的変異の導入 2.耐熱性変異型FPP合成酵素の大腸菌内での大量産生 3.熱処理と2段階のクロマトグラフィーによる精製の系を確立した。この系を用いてプレニルトランスフェラーゼに特徴的な7つの保存領域ミ内のアノ酸について変異型酵素を作成し、それらの触媒機能の変化を精査し、新規なC-C結合形成反応の触媒機能獲得の有無を調べた。領域VIIに保存されているArg-295をValに置換した変異型酵素R295Vの酵素活性はほとんど変化しなかったが、非アリル性基質イソペンテニルニリン酸(IPP)に対するKm値が野生型のFPP合成酵素のそれの約1.5倍に増大した。同様の変化がC末端のHisをLeuに換えたH297Lでも認められた。この変化はプライマー基質をジメチルアリルニリン酸(DMAPP)にした場合さらに顕著になり、変異体のKm値は約3倍となった。さらにCys-289をPheに換えたC289Fでは10倍になった。領域VIに保存さているモチーフDDXXDのAspの変異体、D224A、D224E、D-2251、D228Aはいずれも触媒活性が激減したが、反応速度論的解析では、基質に対するKm値はIPP、GPPのいずれに対しても大きな変化はなかった。D288Aのみが例外で、IPPに対するKm値が野生型の10倍にもなった。領域VIの下流に保存されているLys-238の変異体酵素K238AおよびK238Rはいずれも触媒活性には大きな変化はなかったが、IPPに対するKm値がそれぞれ4.2倍5.1倍になった。これらの変異体酵素はいずれもIPPに対するKm値が増大しているのでホモアリル性の基質に対する特異性が特に変化している可能性がある。これらの変異体酵素の人工基質ホモログに対する基質特異性の精査は今後の課題である。