著者
水野(松本) 由子 小室 寛子 小縣 拓也 浅川 徹也 林 拓世
出版者
一般社団法人 日本臨床神経生理学会
雑誌
臨床神経生理学 (ISSN:13457101)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.61-72, 2012-04-01 (Released:2014-08-20)
参考文献数
34
被引用文献数
2

情動ストレス刺激直後における脳波の経時的変化を定量的に評価した。被験者は健常成人22名で, 心身状態をCornell Medical Index (以降, CMI) を用いて評価し, 領域I を健常群, 領域II, III, IVをCMI 高値群に分類した。被験者には, 安静, 快, 不快の視聴覚動画像刺激を提示し, 180 秒間にわたって脳波を測定した。十分な休息を挟みながら, 各刺激提示を3試行, ランダムな順序で実施した。1試行180 秒間のうち, アーチファクトを除いた152 秒間について, α帯域の平均スケログラム値 (ウェーブレットスペクトル値) を求め, 3試行分の平均値について, 測定部位ごとに, 刺激間, 被験者間の比較を行った。さらに, 実験開始前の安静閉眼の無負荷状態を基準値とし, 4 秒ごとの相対平均スケログラム値を求め, 刺激後の経時的変化を回帰分析を用いて定量化した。その結果, 健常群ではCMI 高値群と比較して, 情動刺激に対する反応が大きく鋭敏であった。健常群のスケログラム値は, 安静刺激では無負荷状態と同値に近づき, 不快刺激では増加した。心身状態の違いにより, 情動ストレス負荷後の脳波の経時的変化に違いがみられた。