著者
小羽田 悠貴 武本 健士郎 郷力 昭宏 梶原 充
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.110, no.1, pp.28-31, 2019-01-20 (Released:2020-01-20)
参考文献数
6

Trousseau症候群は,悪性腫瘍に伴う血液凝固異常により,血栓塞栓症を来す病態である.今回われわれは,内分泌療法が奏効したTrousseau症候群を合併した進行性前立腺癌の1例を経験したので報告する.症例は67歳男性,平衡障害,背部痛を主訴に近医脳神経外科受診,頭部MRIにて多発性脳梗塞と診断された.しかし,CTにて傍大動脈領域に多発リンパ節腫脹を認めたため,当院総合診療内科紹介加療となった.抗凝固療法としてヘパリンNa持続静注を開始し,Trousseau症候群疑いもあり並行して原疾患となる悪性腫瘍の検索をした.結果,PSA値の著明な上昇を認め,原疾患として進行性前立腺癌が疑われ,前立腺生検を施行した結果,前立腺癌と診断し,Combined Androgen Blockade(CAB)治療を開始した.CAB治療が著効し,PSA値の低下,腫大リンパ節の縮小を認めた.現在ヘパリンCa皮下注とCAB治療継続しているが,脳梗塞再発なく,PSA低値安定し経過良好である.Trousseau症候群は原疾患の性質上予後不良とされているが,本症例のごとく前立腺癌を契機に発症した場合,内分泌療法が概して効果的であるため,抗凝固療法にて急性期の血液凝固異常による全身性血栓症を首尾よく乗り切れば,良好な経過を示すことが期待されると考える.