著者
吉永 敦史 吉田 宗一郎 中込 一彰 後藤 修一
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.98, no.5, pp.710-712, 2007-07-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
15

症例は62歳, 男性. 1998年交通事故によりC3-4レベルの頚髄損傷となり両上下肢麻痺, 膀胱直腸障害が出現したが, 手術とリハビリテーションによって現在では歩行可能となっている. また排尿状態については術後尿閉がみられたが, 次第に改善し自排尿可能となっていたとのことであった. 2001年排尿障害を自覚し, 尿の排出ができなくなったため自己導尿目的にネギを尿道に挿入したが抜去できなくなったため当科受診となった. 鉗子による異物の除去はできず, 経尿道的に異物の除去を行った. 尿道カテーテルの歴史について調べてみると, 金属製のものや自験例のようなねぎなどが用いられていた時代もあった.
著者
小堀 善友 青木 裕章 西尾 浩二郎 佐藤 両 芦沢 好夫 八木 宏 宋 成浩 新井 学 岡田 弘
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.103, no.3, pp.548-551, 2012-05-20 (Released:2013-06-13)
参考文献数
10

(目的)不妊症の原因が膣内射精障害であるカップルは少なくない.これらの膣内射精障害患者に対し,マスターベーションエイドであるTENGA®を用いてリハビリテーションを行った.(対象と方法)男性不妊症患者で膣内射精障害を訴えた男性16人(29~48歳).非用手的マスターベーションや,強すぎるグリップなど,マスターベーション方法に誤りが認められる患者を10名認めた.テストステロン値には異常を認めなかった.外来にてカップルに対してカウンセリングと正しいマスターベーション方法を指導し,マスターベーションエイドを用いた射精リハビリを指導した.併用した薬剤や挙児希望者に対して用いた生殖補助医療についても検討した.(結果)16例中12例(75%)は射精リハビリテーションの結果TENGA®を用いてのマスターベーションは可能になり,マスターベーション方法は補正が可能であった.さらにこのうち5例(31%)は膣内で射精が可能になった.(結論)膣内射精障害は,潜在的に多くの患者がいる可能性がある.マスターベーション方法が間違っている患者に対しては,マスターベーションエイドにて補正が可能であり,膣内射精も可能になる事が示された.マスターベーションエイドは,膣内射精障害治療の選択枝の一つとなりうると考えられた.
著者
桑田 真臣 千原 良友 鳥本 一匡 影林 頼明 中井 靖 三馬 省二
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.100, no.6, pp.632-634, 2009 (Released:2012-02-01)
参考文献数
10
被引用文献数
1

思春期尿道異物の2例を経験したので報告する.症例1は12歳, 男子.肉眼的血尿, および尿道痛を主訴に当科を受診した.KUB, および尿道膀胱鏡で前立腺部尿道に全長7.5cmの伸展させた状態の安全ピンが認められた.患者は否定したが, 安全ピンは自己挿入されたと推察された.症例2は14歳, 男子.全長5cmの円柱状の金属を自慰目的で自己挿入した.KUBで異物は膀胱内に認められた.2例とも内視鏡的に異物を摘出し得た.2例の家庭環境の共通点として, 母子家庭であることがあげられる.症例1の父親は, 患者が 5 歳のときに患者を助けようとして患者の目の前で交通事故死した.症例2では, 両親が離婚していた.幼児期における父親との離別が精神状態に不安定性を与え, 結果的に尿道への異物自己挿入の原因となった可能性が考えられる.泌尿器科医にとって尿道膀胱異物はまれではないが, 15歳以下の報告は極めてまれである.尿道異物自己挿入の原因としては自慰目的がもっとも多いが, 思春期の症例では精神神経疾患の初期症状であるものや, 精神状態が不安定であるものが散見される.膀胱尿道異物患者, とくに思春期の患者においては, 異物自己挿入にいたった背景や精神状態を慎重に評価し, 精神医学的検索や治療の必要性を的確に判断することが泌尿器科医に求められると考える.
著者
金子 立 宮崎 一興
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.84, no.8, pp.1479-1488, 1993-08-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
19
被引用文献数
1 2

射精不能者に対して, さまざまな人工的精液採取法が行われているが, Brindley 法とパルス電流を用いるように改良した Seager 改良法による電気射精を, 脊髄損傷40例, 直腸癌根治術後の射精不能例1例に対して行い, その有用性を検討した. Seager 改良法では, 刺激に際して患者に与える電気エネルギーを減じるため, 正弦交流にかえ両極性のパルス電流を用いた. Brindley 法では18例中11例から精子を回収し, Seager 改良法では29例中24例から精子を回収した. 直腸癌根治術後の射精不能例1例も Seager 改良法により精子を回収することができた.電気射精の副作用としては, 自律神経過反射と疼痛がみられた. 自律神経過反射は, 刺激の中止により速やかに消失し, この点でネオスチグミンのくも膜下腔注入法より安全な方法と考えられた.脊髄損傷例の精液所見では, 受傷後経過期間とともに回収できた総精子数は減少する傾向がみられ, 運動率は慢性期のみならず, 受傷後1ヵ月以内の急性期の症例においても低下がみられた. したがって, 脊髄損傷における精巣, 精巣上体等の障害はかなり早期からおこる可能性が示唆された.
著者
山田 哲夫 船橋 亮 村山 鐵郎
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.96, no.5, pp.554-559, 2005-07-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
14

(目的) 線維筋痛症 (FM) は米国において間質性膀胱炎 (IC) の約10%に合併するとされているが本邦ではほとんど知られていない. 我々も米国とほぼ同様な割合で合併例を経験した. 合併例の実情と意義について報告する.(患者と方法) 患者はICに関する1987年 National Institute of Diabetes, Digestive and Kidney Diseases (NIDDK) とFMに関する American College of Rheumatology (ACR) の診断基準を満たした過去4年間における30例で, これらの臨床所見の検討を行った.(結果) ICの symptom index と problem index の平均は各々14.9と14.6で, ACRの診断基準における圧痛点の平均は16ヵ所であった. 患者全体で9ヵ所の診療科を受診し, 患者の38%が精神病でないにも関わらず精神科受診を余儀無くされていた. 両疾患は疹痛閾値の低下やび漫性の痛み, 症状の増悪因子, 治療法などに類似点が認められた.(結論) ICの約11%がFMを合併し, 合併例は病状を理解されず全身の激しい痛みに耐えていた. ICとFM患者の臨床所見において共通点が多く認められた.
著者
甲斐 文丈 本山 大輔 海野 智之 須床 洋
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.105, no.1, pp.26-28, 2014-01-20 (Released:2015-01-30)
参考文献数
10

症例は29歳,男性.性同一性障害患者.主訴は陰嚢部痛.自己去勢を試みたが,出血と疼痛のため中止し,2時間後に当院に受診した.両側精巣は摘除されておらず,腰椎麻酔下に陰嚢縫合術を施行した.術後,自傷の反復は認めない.
著者
宮田 昌伸 水永 光博 佐賀 祐司 谷口 成美 金子 茂男 八竹 直
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.81, no.7, pp.1071-1078, 1990-07-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
17
被引用文献数
2 1

正常成人女性36名の58回の排尿について, Uroflow Diagnostic Interpretation (UDI) の排尿パラメーターと排尿量の関係を解析した. 最大尿流量率 (Qmax) と排尿量の中央90%に対する平均尿流量率 (QM90) は, 排尿量400mlまでは直線的に増加した. 排尿時間 (T100) は100~400mlの排尿量ではこれに依存せず一定範囲の値をとり, 全体でも21秒を越えるものはなかった. 排尿量の中央90%に要する排尿時間 (T90), 最大尿流到達時間 (TQmax), Qmax から排尿量の95%までの所要時間 (Tdesc) は排尿量に依存しなかった. 尿流量率の最大増加率 (dQ/dT max) と膀胱容量が40mlに達した時点の計算上の膀胱壁収縮速度 (dL/dT40) は排尿量に依存して増加する傾向が見られた. 20名の神経因性膀胱患者の25回の排尿のうち84.0%, 21名の慢性膀胱炎患者の27回排尿のうち66.7%にT100の延長が見られ, これらはすべてT90の延長を伴っていた. 他のパラメーターでは正常女性と患者間の差もしくは患者群間の差が明らかではなかった. 排尿時間は女性排尿のパラメーターとして有用である.
著者
河内 明宏 渡辺 泱 中川 修一 三好 邦雄
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.84, no.10, pp.1811-1820, 1993-10-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
16
被引用文献数
7 7

一般の小学生と幼稚園児2,033名を対象として, 正常児および夜尿児の膀胱容量, 夜間尿量と夜尿を含む夜間の排尿行動を, 質問紙法により調査した. 正常児の朝, 昼の膀胱容量と夜間尿量は, 年齢との間で直線回帰式にて表せる, 有意な相関関係を示した. また体の成長との関係においては, 身長, 体重および体表面積の3者の内で, 体重との間で最も良い相関関係を示した. 夜間尿意覚醒時の膀胱容量と朝, 昼の膀胱容量を比較すると, 朝の膀胱容量が夜間の膀胱容量に近い値を示し, 夜尿を論じる際の膀胱容量は朝起床時の膀胱容量を重視すべきであると思われた. 夜尿児の朝の膀胱容量は, 正常児と比較して, 6歳までは小さいが, 7歳以上では逆に大きいと考えられた. 正常児の間でも10~15%に夜間多尿であると思われる児童が存在し, これらは覚醒機能が正常で, 夜間尿意覚醒するために夜尿とならないと考えられた. 夜尿児の頻度は全体で14%であり, 9歳までは男が多かったが, 10歳以上ではほぼ同じ頻度であった. 過去に夜尿があった児童の調査結果より, 夜尿の平均自然消失年齢は7.3歳であり, このことより8歳以降持続する夜尿は積極的治療の対象になると考えられた.
著者
相川 浩一 木村 高弘 小池 祐介 山田 裕紀 頴川 晋
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.109, no.4, pp.204-207, 2018-10-20 (Released:2019-10-18)
参考文献数
15

(目的) 陰茎折症は性行為に関連した稀な疾患であり,本邦においてまとまった報告は少ない.東京慈恵会医科大学附属病院では,近年16例の陰茎折症を経験したので,その臨床的特徴と合併症について報告する. (対象と方法) 2005年9月より2017年10月までの間に当院で陰茎折症と診断した16例を対象とした.発症誘因,症状,診断方法,治療方法,および術後の合併症に関して調査した. (結果) 年齢の中央値は41歳(22~67歳)であった.受傷起転の判明した15例のうち,性交渉中は5例(31%)で,4例(25%)は自慰行為中であった.尿道損傷が合併した症例は認めなかった.術前MRIを8例に施行し,所見記載を確認し得た7例すべてにおいて白膜の断裂部位が術前に診断可能であった.治療は全例で観血的手術を施行し,白膜の断裂を確認後に縫合を行った.術後は全例で勃起不全(ED)の合併は認めなかった.1例(6%)で術後陰茎屈曲を認めた. (結語) 陰茎折症は性行為,自慰によるものが多かった.全例外科的治療を施行し,手術後のEDの発症は認めず,陰茎屈曲を1例に認めた.中長期の男性機能評価,術後合併症に関しては経過観察期間が短く,更なる検討努力が必要である.
著者
阪口 和滋 大村 稔 堀内 晋
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.104, no.1, pp.6-11, 2013-01-20 (Released:2014-02-21)
参考文献数
15

(目的) 透析患者は一般人と比較して,腎癌発生率が高いため,腹部超音波検査,CTによる定期的スクリーニングが有益とされている.また,透析腎癌は高率に後天性嚢胞性腎疾患(ACDK)を合併し,その関連性が示唆されている.当院におけるスクリーニングの有用性,およびACDKとの関連性に関して検討した. (対象・方法) 2005年8月より2011年6月までに,当院で慢性腎不全に対し血液透析療法を施行された624症例と,そのうち腎癌症例12例を対象に解析を行った.スクリーニングは年に1回の腹部超音波検査で行った.透析腎癌の罹患率,発生率,発見契機とその予後,およびACDKの合併率を用いて考察した. (結果) 透析腎癌の罹患率は2.08%,年間発生率は0.33%と高率であった.発見の契機はスクリーニング超音波検査7例(A群),他疾患精査目的の腹部超音波もしくは腹部CT検査2例(B群),有症状精査3例(C群)であった.A群およびB群は1例の他因死を除き,全例癌なし生存であった.それに対してC群は,診断後全例6カ月以内に癌死した.C群3例のうち,スクリーニング検査を施行された症例は1例のみであった.また,ACDKの合併率は91.7%であった(p=0.0026). (結論) 透析患者の腎癌スクリーニング検査が予後に関し有用であると考えられた.透析腎癌にACDKは高率に合併し,その関連性が示唆された.
著者
伊藤 晴夫
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.88, no.8, pp.701-711, 1997-08-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
76
被引用文献数
1
著者
座光寺 秀典 宮本 達也 神家満 学 犬塚 秀康 土田 孝之 荒木 勇雄 武田 正之
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.101, no.1, pp.29-33, 2010 (Released:2012-03-16)
参考文献数
8
被引用文献数
1

われわれはロタウィルス胃腸炎後に両側尿管結石による急性腎不全となった2幼児例を経験した.症例は2歳4カ月の男児と1歳1カ月の男児.4~5日続く下痢,嘔吐に引き続いて無尿となったため当院を受診した.便中ロタウィルス抗原陽性で腹部超音波検査と腹部CTで軽度水腎症と両側尿管結石を認めたため,ロタウィルス胃腸炎後の尿管結石嵌頓による腎後性腎不全と診断した.直ちに経皮的腎瘻を造設し,数日で腎機能は正常化した.尿アルカリ化を行い腎瘻カテーテルから砂状の結石の排出を認めた.結石分析の結果酸性尿酸アンモニウムであった.酸性尿酸アンモニウム結石は先進国ではまれであるが,近年ロタウィルス胃腸炎後の両側尿路結石による急性腎不全の報告が散見される.これまでロタウィルス感染後の急性腎不全の主因は持続する脱水症と考えられていたが,本例のような尿管結石による腎後性の要因も考慮すべきであると思われた.
著者
中村 正広 野々村 祝夫 並木 幹夫 奥山 明彦 高 栄哲 近藤 宣幸 竹山 政美 清原 久和 藤岡 秀樹
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.80, no.9, pp.1362-1366, 1989-09-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
23
被引用文献数
1

ヒト精巣におけるDNA合成, RNA合成, 蛋白合成の至適温度を検討するために, 培養ヒト精巣組織への3H-チミジン, 14C-ウリジン, 14C-ロイシンの取り込みを28℃~43℃の温度条件で観察した. その結果, RNA合成, 蛋白合成は温度依存性に増加し, 37~40℃で最大になると考えられたが, DNA合成は31℃で最大となり, 微妙な温度感受性を示すと判断された. 従って, 精巣温度上昇による造精障害の根本原因の1つとして精巣DNA合成の障害が推察された.
著者
石引 雄二 松村 勉
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.97, no.1, pp.57-59, 2006-01-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

症例は16歳男性. 既往歴は10歳で近医にで性同一性障害の可能性指摘. 11歳で側頭葉てんかん. 2004年4月20日早朝, 睡眠中陰部疼痛で覚醒し, 陰嚢に出血あり. 父親がベッド下にカッターナイフ発見. 当科受診し, 右外傷性精巣脱出症の診断. 右陰嚢切開創より精索に及ぶ陰嚢内容脱出. 手術で陰嚢内容を還納し, 閉創. 術後8日目に退院. 退院後は自傷行為の再発なし, 性器自傷は本邦報告37例と比較的稀である. 自験例はこの内, 最年少であった.
著者
松本 富美 松井 太 矢澤 浩治 島田 憲次
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.108, no.1, pp.49-51, 2017-01-20 (Released:2018-01-23)
参考文献数
11
被引用文献数
1

2011年の保険適応以降,dextranomer-hyaluronic acid copolymer(DefluxⓇ)を用いた膀胱尿管逆流(vesicoureteral reflux:VUR)に対する内視鏡的逆流防止術は本邦でも多くの施設で行われるようになったが,その長期合併症についてはあまり知られていない.今回われわれは,3歳時にDefluxⓇを用いた内視鏡的逆流防止術の既往があり,12歳時に近医にて注入部位の石灰化のため,遠位尿管結石が疑われた症例を経験した.DefluxⓇ implantの石灰化は稀ではあるが,近年欧米で報告が増えつつある.不必要な検査を回避するために,このような長期合併症を認識する必要がある.
著者
岩本 晃明 柳瀬 敏彦 高 栄哲 堀江 均 馬場 克幸 並木 幹夫 名和田 新
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.95, no.6, pp.751-760, 2004-09-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
28
被引用文献数
22 24

(目的) 日本人成人男子の血清総テストステロン (総T) および遊離テストステロン (遊離T) の基準値を設定すること.(対象と方法) 健常に日常生活を営んでいる年齢20歳から77歳の男性1,143例を対象とした. 採血時間は総Tおよび遊離T共に日内リズムを認めたことから高値で比較的安定に推移する午前中に実施し, 分離した血清検体は測定まで-20℃保存した.(結果) 総Tの基準値は加齢の影響が小さかったことから全データを一括して2.01~7.50ng/mL (平均±2SD) と設定した. 一方遊離Tは加齢の影響を強く認めたことから10歳毎の年齢階層別に群別して, その基準値 (平均値±2SD) を求めた. 20歳代は85~27.9pg/mL, 30歳代は7.6~23.1pg/mL, 40歳代は7.7~21.6pg/mL, 50歳代は6.9~18.4pg/mL, 60歳代は54~16.7pg/mL, 70歳代は4.5~13.8pg/mLと設定した.(結論) 日本人成人男子の総Tおよび遊離Tの基準値を設定した. また, 遊離Tについては, 基準値とは別に20~39歳の若年成人平均 (YAM: Young Adult Mean) 値を求め, このYAM値の80% (124pg/mL) および70%値 (10.9pg/mL) を, 男性ホルモン補充療法の参考適用値として提示した.
著者
宮内 武彦 丸岡 正幸 長山 忠雄 若月 進
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.81, no.12, pp.1908-1911, 1990-12-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
8

鎮痛剤〔フェナセチン誘導体〕の常用によると思われる尿管腫瘍の夫婦症例を経験した. 症例は66歳の妻と70歳の夫で, 2人とも頭痛持ちのため妻は45歳頃, 夫は55歳頃よりノーシンを1~2包/日随時服用した. 推定総摂取量は4kgと2.5kgであった.妻は1985年1月2日血尿で来院, 左尿管腫瘍の診断で2月13日左腎尿管摘出膀胱部分切除術施行, 6月11日膀胱内に腫瘍再発, 7月26日膀胱全摘尿管皮膚移植術施行. 1988年12月28日癌死した.夫は1987年3月頃血尿, 8月4日来院, 左尿管腫瘍の診断で8月26日左腎尿管摘出術施行, 11月19日膀胱内に腫瘍再発, 経尿道的手術を施行したが, 再発のため1988年4月22日膀胱尿道全摘右尿管皮膚移植術施行, 7月腹腔内, 腹壁に転移が発生し, 10月15日癌死した.