著者
小西 瑛子
雑誌
帝京科学大学教育・教職研究 = Journal of educational research and teacher development, Teikyo University of Science (ISSN:2433944X)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.11-19, 2019-03-30

本研究の出発点は,英語を不得意とする大学生の特徴を明らかにし,教育に生かしたいと考えたことである.これまで,英語を不得意とする大学生に関して,いくつか調査を行った.例えば,品詞の習得に関しては,名詞の習得が不十分であると判明した.ただし,これは高校生(上‐下位レベル)においても同様で (Konishi,2014),大学生特有の特徴は見出せなかった.更に,reading 力と語彙の関係は,統計的に有意だが弱いと判明した(N =59,r = .271,p < .05).前述の状態を踏まえたうえで,本研究ではlistening力とreading力の関係が数値的にどのようなバランスをとっているのかを焦点とした.先行研究によれば,TOEIC系のテストにおいては,listening がreading の得点を多くの場合上回っている.これは英語を不得意とする学習者にも当てはまるのかと疑念を抱いたからである.使用テストはTOEIC Bridge の公式問題集(100 点満点).Listening が3部,reading が2部,計5部構成の,約60 分のテストである.本研究の対象として,使用したテストの得点が50点以下の学生を85名抽出した.全体平均は45.64,listening力の平均は26.74,reading力の平均は18.89であった.Listening力がreading力を上回り,先行研究を踏襲した結果となった.この結果をt 検定にかけた結果,t(84)= 13.03,p < .01 となり,listening 力がreading 力を統計的に有意に上回っていることが判明した.また,両者の相関はr= -.401,p < .01となり,負の相関が有意に認められた.さらに,スピアマンの順位相関係数を求めたところ,r= -.468,p < .01となり,負の相関が確認された.つまり両者の関係はバランスがとれておらず不安定なものであるといえる.その結果を受け,授業では学習者に有利な評価を行うことにした.