著者
小野 俊樹
出版者
日本社会事業大学
雑誌
日本社会事業大学研究紀要 = Study report of Japan College of Social Work : issues in social work (ISSN:0916765X)
巻号頁・発行日
vol.66, pp.5-16, 2020-03

介護保険制度では、介護保険施設と短期入所を利用する低所得者に対し、食費・居住費の負担を軽減する特定入所者介護サービス費、いわゆる補足給付が支給されている。この補足給付については、社会保険である介護保険制度の給付ではなく、低所得者対策として社会福祉制度で実施すべきであるという指摘がある。また、在宅生活者との公平性の観点から、補足給付に資産要件などを設けることについて様々な意見がある。補足給付を全額公費負担による社会福祉制度に移行させれば、社会保険と社会福祉の役割分担を明確にして、きめ細かな低所得者対策を実施できるかも知れないが、現在の国と地方の財政状況に鑑みれば、全額公費負担化は容易ではない。補足給付を介護保険制度の給付として存続させる場合、相対的に高額なユニット型施設を普及させつつ、低所得者が介護保険施設を利用しにくくならないように配慮することが必要である。