著者
橋本 美樹 桜井 康徳 小野 竜也 本多 律子 岩井 さくら
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会
巻号頁・発行日
vol.27, pp.96, 2008

【はじめに】全校児童141人の那須塩原市立青木小学校では5年生の総合的な学習の一環として福祉の授業を行っている。今回、理学療法士(PT)が関与して小学生に車椅子体験の出前授業を試みる機会を得たので報告する。<BR>【活動の実際】PTについての啓蒙と障害への理解を得ることを目標に、PT4名で当日出席の5年生28名(男14名 女14名)を対象に2時限分行った。1時限目は医療職をクイズ形式やパネルを使って紹介した。次に車椅子の使用説明後、班別にリレー形式でUターンやジグザグコースを回り自力駆動を体験させた。2時限目は班別に校内探検(障害者用トイレ、一般トイレ、スロープ、段差、電話、水道、階段、教室内など)をし、介助の模擬体験をさせた。最後に、バリアフリーの利便性、マンパワーによるサポートの必要性、そういった点への介入がPT業務の1つであると説明した。後日まとめの授業で感想文を書いてもらい授業終了となった。<BR>【結果】医師と看護師は全員が知っていたがPTを知る児童は1名だけだった。この学級では今回の授業の前にも「未来ちゃん体験(高齢者疑似体験)」を行ったが担任教師が指導しただけなので専門性は不十分で、遊んだりしてしまう児童もいたそうだが、今回我々が関与したことで緊迫感が生まれ、専門家による臨場感あふれる指導に関心を示してくれた。感想文では「体の不自由な人は不幸なわけじゃなく不便なだけだ(3名)」とわずかに障害を正しく理解できた児童もいるが、「車椅子は大変だ(14名)」が最も多く「車椅子の人は一人では何もできない・かわいそう(4名)」と逆に偏見を持ってしまった児童もいた。<BR>【今後の展望】様々な刺激を柔軟に吸収する学童期に、逆に障害者と接する機会の少ない日本社会では福祉の心が育ちづらい。学校側ではキャリア教育・ボランティア教育として専門性の高い外部講師を望んでおり、我々PTがその専門的知識や経験・ネットワークを活かせればと考え、双方合意の上で今回の活動が実施された。学校側からは好評で活動の継続を切望された。今後の続編として、車椅子で活躍されている方を招き、障害も個性の1つとしてとらえ、共に生きていく仲間であることを学ぶ機会を与えたい。今回は栃木県士会公益事業部の活動として行ったがこの活動をどういう形で継続していくか、資金調達やスタッフの確保が今後の課題となった。<BR>【まとめ】成人への介護指導等のみならず、未成年に対して障害を考える機会を提供することは、ノーマライゼーション社会を築く担い手の育成に貢献できる。そこにPTが専門性を活かして自ら積極的に介入していく必要があることを提言する。