著者
小野 芳秀
雑誌
東北福祉大学研究紀要 = Bulletin of Tohoku fukushi university (ISSN:13405012)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.35-60, 2017-03-17

本研究の目的は,希死念慮のある思春期児童を対象としたスクールソーシャルワークにおいて,支援を目的とした "かかわり" の手段として,近年 10 代の若年層にもユーザーが増大している SNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)を用いた事例について考察し,そのメリット(有効性)とデメリット(限界・注意点)を整理することである。SNS を用いたスクールソーシャルワークの実践事例を分析した結果,SNS 活用のメリットとして,既読表示や交信履歴の縦覧機能等を活用でき,自殺防止を目的とするゲートキーパーとしてのモニタリング効果が期待されることが明らかとなった。一方,デメリットとして,SNS を支援ツールとして用いる場合は,予め時限的活用やバウンダリーの配慮が成されないと,被支援者の転移の把握とコントロールが困難であり,頻回相談により支援者の負担が大きくなること,特に対象者が危険因子として精神疾患を有する場合は,精神症状を刺激する可能性もあり,医療と福祉的支援の連携による家族を含めた生活環境への現実的かつ具体的介入が同時に必要であることが判った。この結果により,実効性のあるソーシャルワーク実践,とりわけスクールソーシャルワークにおける "生命の危険を伴う"緊急度の高いケースや当事者達に "困り感" が欠如しているような支援困難ケースにおいては,子どもや保護者に接触できる専門的スキルを持った支援者が,関係機関の連携による支援体制のもと,本人主体を原則としながらも,当事者たちの問題解決のための方法を選択するための改善策の提示や,主体的に問題解決に取り組むための意識変容を目的に誘導的に介入する意識的 "かかわり" による積極的支援が必要であり,これらの支援ツールとして適切に用いれば SNS は有効であると結論づけた。
著者
小野 芳秀
出版者
東北福祉大学
雑誌
東北福祉大学紀要 = Bulletin of Tohoku Fukushi University (ISSN:13405012)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.111-135, 2022-03-18

実習生としてのレディネス(準備性)を明らかにすることを目的に,精神障害の当事者性を有する実習生を対象に「実習中困難だったこと」,「実習中困難だったことにどう対処したか」,「実習中困難だったことを回避するための方法」について実態調査を行った。実習中に遭遇する「困難さ」として,「実習指導者との関係性の困難」,「精神障害特性による困難」「利用者・患者との関係性の困難」「外的要因による困難」のカテゴリーが抽出され,実習生としてのレディネス(準備性)として「自己覚知」,「自己コントロールを含むセルフケア」,「対人コミュニケーション」,「自身を含む状況の俯瞰視」,「自身が困難を抱えていることを表明できる」の5 つのスキルに対する視座が明らかとなった。今後の課題として,実習生としてのレディネス(準備性)の状態を把握するためのアセスメント(査定)基準の設定及びアセスメントの方法,実習生としてのレディネス(準備性)が獲得されていると判断され得る一定の基準に到達するための効果的な教育プログラムの開発の必要性が確認された。
著者
小野 芳秀
雑誌
東北福祉大学研究紀要 = Bulletin of Tohoku fukushi university (ISSN:13405012)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.35-60, 2017-03-17

本研究の目的は,希死念慮のある思春期児童を対象としたスクールソーシャルワークにおいて,支援を目的とした “かかわり” の手段として,近年 10 代の若年層にもユーザーが増大している SNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)を用いた事例について考察し,そのメリット(有効性)とデメリット(限界・注意点)を整理することである。SNS を用いたスクールソーシャルワークの実践事例を分析した結果,SNS 活用のメリットとして,既読表示や交信履歴の縦覧機能等を活用でき,自殺防止を目的とするゲートキーパーとしてのモニタリング効果が期待されることが明らかとなった。一方,デメリットとして,SNS を支援ツールとして用いる場合は,予め時限的活用やバウンダリーの配慮が成されないと,被支援者の転移の把握とコントロールが困難であり,頻回相談により支援者の負担が大きくなること,特に対象者が危険因子として精神疾患を有する場合は,精神症状を刺激する可能性もあり,医療と福祉的支援の連携による家族を含めた生活環境への現実的かつ具体的介入が同時に必要であることが判った。この結果により,実効性のあるソーシャルワーク実践,とりわけスクールソーシャルワークにおける “生命の危険を伴う”緊急度の高いケースや当事者達に “困り感” が欠如しているような支援困難ケースにおいては,子どもや保護者に接触できる専門的スキルを持った支援者が,関係機関の連携による支援体制のもと,本人主体を原則としながらも,当事者たちの問題解決のための方法を選択するための改善策の提示や,主体的に問題解決に取り組むための意識変容を目的に誘導的に介入する意識的 “かかわり” による積極的支援が必要であり,これらの支援ツールとして適切に用いれば SNS は有効であると結論づけた。