著者
小黒 昭雄
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, 1962

グリコーゲンの検出法としては,以前より沃度反応とBestのカルミン染色が用いられて来たが,1946年Mc Manusが過沃素酸Schiff試薬法(PASと略記)を考按発表して以来,グリコーゲンを含む多糖類の組織化学的研究は格段の進歩を示した.即ち,Hotchkiss-Mc Manusに次いでLilleの過沃素酸カリー硝酸Schiff反応,Casellaの過マンガン酸Schiff反応,清水,熊本,Glegg,Hashimの四酢酸鉛Schiff反応,Lhotkaの蒼鉛酸塩Schiff反応及び四酢酸マンガンSchiff反応等が考按利用され,グリコーゲンを始め,ムチン,粘液蛋白,糖蛋白,ヒアルロン酸,キチン,セレプロシド等が染色され,各科領域に於て多くの業績を生んでいる.しかし,これ等の諸法をもつてグリコーゲンを証明するには,固定液を適当に選定すると共に,唾液又はチアスターゼによる消化試験を併用せねばならない.最近Cawleyは0.1%Alcian-blue3%酢酸水溶液をPAS染色の前処置に用いてグリコーゲンを赤色に,粘液多糖類を緑,乃至は青紫色に染め分ける消化試験不必要の新法を用いて皮膚膠原病のグリコーゲンの消長を検討発表している.これ等の方法を用いて皮膚科領域に於けるグリコーゲンの態度を追究した論文は少なからず見る事が出来るが,特別に皮脂腺をとり上げて,その機能とグリコーゲンの態度との関連性を論じている報告としては谷中の研究のみである.谷中は結節癩の病変の推移に伴い,その皮脂腺の核酸,グリコーゲンの消長を検し,グリコーゲンが皮脂腺の活動度を知る示標たりうるだろうと云う推定を行つている.私はこの考え方にもとづき,皮脂腺の活動度とグリコーゲンの態度との間に果してかゝる相関々係が成り立ちうるか否かに就いて検討を加えて見た.