著者
尾﨑 加奈 富田 真弓
出版者
久留米大学大学院心理学研究科
雑誌
久留米大学心理学研究 = Kurume University psychological research (ISSN:13481029)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.13-21, 2020-03-31

本研究は,大学生の悩み相談に乗った経験が獲得的レジリエンスに及ぼす影響について,相談者の立場や気持ちを想像する共感性と,悩み相談に乗った経験に対する3つの評価(ポジティブ効果感,ポジティブ成果感,ポジティブな側面への焦点付け)に着目し,階層的重回帰分析を用いて検討した。その結果,獲得的レジリエンスの3つの下位尺度のうち,問題解決志向には,「他者心理の想像」及び「ポジティブな側面への焦点付け」の主効果,自己理解には,「他者心理の想像」と「ポジティブ効果感」の交互作用,他者心理の理解には「他者心理の想像」の主効果がみられた。このことから,共感的に悩み相談に乗り,相談者の立場や気持ちを想像しながら話を聴き疑似体験することと同時に,自分が相談者のために役に立てたと評価したり,悩み相談に乗った経験を振り返り自分の成長に繋がるような学びを得たと意味づけることが獲得的レジリエンスを高めるために有効であることが明らかとなった。