著者
屋地 康平 松木 吏弓 北村 亘 畔柳 俊幸 足立 和郞
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.45-51, 2013 (Released:2013-05-28)
参考文献数
23

電力設備の塩害対策として広く用いられているシリコーンオイルコンパウンドの塗布部分には,鳥類が原因と見られる著しい剥離の進行が散見され,保守現場で問題となっている.適切な鳥害対策を施すためには,鳥類種の特定が必要であることから,本研究では,シリコーンオイルコンパウンドと思われる人工物質を内容したペリットを採取し,DNA分析による種の特定,およびIR分析による内容物同定を行った.その結果,ペリットの吐出主がハシブトガラスであること,およびペリット試料に含まれる人工物が,設備のシリコーンオイルコンパウンドと同一の成分であることを突き止め,シリコーンオイルコンパウンド塗布部分への被害が,ハシブトガラスによってもたらされたことを示す一例を突き止めた.また,カラスの行うシリコーン化合物の採食行動が,従来考えられていた人工物からの脂質摂取とは異なる目的でなされた行動である可能性を指摘した.