- 著者
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山下 ひろ子
小山田 玲子
奥 直子
西村 正治
石黒 信久
- 出版者
- 一般社団法人 日本環境感染学会
- 雑誌
- 日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
- 巻号頁・発行日
- vol.27, no.5, pp.333-341, 2012
2007年度,当院では病棟の入院制限を必要とするほどの大規模なノロウイルス胃腸炎の集団感染事例を5件経験した.いずれの事例も発端者が発症してから隔離されるまでに2~5日かかっていた.発症者隔離までの期間を短縮することで集団感染を回避することはできないかと考え,感染性胃腸炎患者の早期隔離に努めてきた.その結果,入院制限を必要とするほどの大規模な集団感染は2008年度と2009年度には各1件,2010年度には0件と減少したことから,2006年4月から2011年3月の5年間に感染性胃腸炎として報告された事例168件を対象として詳細に検討した.入院患者の発症事例85件のうち,各部署で発症を把握した当日(隔離までの所要日数0日)に発症者を隔離した64件では大規模な集団感染を回避できたが,翌日(同1日)に隔離した11件のうち1件(9.1%),翌々日(同2日)に隔離した5件のうち2件(40.0%),それ以降(所要日数3日以上)に隔離した5件では全件(100.0%)に大規模な集団感染が発生した.職員の発症事例83件中81件(97.6%)は,各部署で発症を把握した翌日(同1日)までに発症者の隔離がおこなわれており,大規模な集団感染の発生はなかった.以上より,臨床症状に基づいて感染性胃腸炎患者を早期に把握して隔離することが大規模な集団感染を回避するために有用であることが明らかとなった.<br>