著者
築谷 康人 岡野 徹 山下 優嗣 豊島 良太
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.66-71, 2013-03-25
参考文献数
7

【はじめに】先天性無痛無汗症の骨折患者1例を経験したので報告する.【症例】1歳8か月,女児.3週間前に母親が右前腕腫脹に気付き,前医を受診した.右尺骨骨折と診断され,右上腕~手関節までギプス固定を受けたが,骨折部での変形が改善せず,治療目的に当院紹介となった.X線像で右尺骨骨幹部に骨折を認め,仮骨の増生を認めたが,受傷時より転位は進行していた.ギブスを石膏ギブスに変更し,右肘関節を約100度屈曲位で固定させ,さらにストッキネットで右上肢全体を体幹に密着させる形で固定した.その結果,受傷後6か月で骨癒合を得ることができた.【考察】先天性無痛無汗症は,温痛覚と発汗機能の欠如,自傷行為,精神発達遅滞が特徴であり,幼少時より骨折・脱臼を生じやすく,偽関節,変形治癒になりやすい.本症例では,固定法を工夫することで,骨癒合まで長期間を要したが,最終的に良好な結果を得ることができた.