著者
泉 貞有 上森 知彦 今村 寿宏 平塚 徳彦 加治 浩三 松延 知哉 河野 勤 鬼塚 俊宏 畑中 均 神宮司 誠也 岩本 幸英
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.53-56, 2018-03-25 (Released:2018-05-21)
参考文献数
5

マッサージ後に発症した成人環軸椎回旋位固定(成人AARF)の1例を経験したので報告する.症例は37歳女性,喘息・アトピーの既往歴あり.初診時,後頚部痛を認めたが斜頚は存在せず,Xp・MRI精査するも有意な病変は無かった.初診後,整骨院で2日間,後頚部の愛護的マッサージを受けた.翌朝から斜頚を自覚し改善せず.2ヶ月後,斜頚を主訴に再診.Xp・CTにてFielding分類type 1のAARFを認めた.AARF以外は身体所見・臨床検査データ等も正常だった.入院後,頚椎持続介達牽引を施行.斜頚出現3ヶ月後,鎮静下に徒手整復を行った.オルソカラー固定するも1日で再脱臼した為,再整復しHalo vest固定を8週間施行した.現在,整復後2年が経過するもAARFの再発は認めない.成人AARFは非常に稀で,マッサージ後の発症例は報告がない.また,整復までに3ヶ月を要した慢性例であったが保存治療が可能であった.
著者
久保 壱仁 田行 活視 渡邊 匡能 佐藤 元紀
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.244-246, 2017-03-25 (Released:2017-05-01)
参考文献数
8

レボフロキサシンの稀な副作用としてアキレス腱障害がある.今回レボフロキサシン投与が誘因と考えられる両側アキレス腱断裂の1例を経験したので報告する.症例は70歳男性.尿路感染症に対しレボフロキサシン500 mg/日で4日間投与され,3日目より両側足関節痛を認めていた.レボフロキサシン投与中止後NSAIDS内服にて経過観察されていたが4週後起床時に両側足関節腫脹を認め,徐々に階段昇降やつま先立ちができなくなったためMRI撮影したところ両側アキレス腱断裂を認めた.両側アキレス腱縫合術を施行し,術後3週間免荷期間を設け,その後荷重訓練を開始した.現在は自立歩行可能で再断裂は認めていない.ニューキノロン系薬剤の副作用による腱障害の機序については明らかにされていないが,高齢,ステロイド内服,慢性腎不全などがリスク因子である.
著者
河上 純輝 菊川 憲志 小田 勇一郞 森田 誠 橋本 憲蔵 田村 諭史 福間 裕子 高田 興志
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.552-555, 2018-09-25 (Released:2018-11-12)
参考文献数
4
被引用文献数
2

肩石灰性腱炎と診断されシメチジンを投与した症例について,臨床症状および単純X線の改善率を検討した.当科において肩石灰性腱炎と診断され,シメチジンを投与された33例35肩(男性6肩,女性29肩)を対象とした.病期分類としてDePalma分類を用いた.シメチジン内服後の疼痛を消失・軽快・不変に分け評価した.石灰化については,単純X線正面像で評価した.DePalma分類における急性期が25肩,亜急性期が6肩,慢性期が4肩であった.30肩(85%)で症状の改善(消失+軽快)を認め,24肩(69%)の症例で単純X線写真での石灰化改善を認めた.肩石灰性腱炎に対し,シメチジンの投与は有効な治療法の一つであると思われた.
著者
中島 大介 白石 元 杉 基嗣 住浦 誠治
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.568-570, 2017-09-25 (Released:2017-12-14)
参考文献数
5
被引用文献数
1 1

【目的】スポーツにより発症した第1肋骨疲労骨折の3例を経験したので報告する.症例1は14歳男性でスポーツは軟式テニス,症例2は14歳男性でスポーツは剣道,症例3は17歳男性でスポーツは野球であった.全例で明らかな外傷なく発症し,スポーツを禁止し自然に軽快した.第1肋骨疲労骨折の疼痛部位については,多くが第1肋骨部でなく肩甲部痛であったと報告されており,症例3では疼痛部位が異なるため診断に難渋した.また画像診断についても,単純X線正面像では,第1肋骨疲労骨折の好発部位である第1肋骨の鎖骨下動脈溝が,鎖骨や第2,3肋骨と重なりやすく,診断に難渋する場合があるが,単純X線で上から15~30度での撮影や,下から60度での撮影が有用である可能性がある.
著者
伊集院 俊郎 石堂 康弘 八尋 雄平 廣津 匡隆 栫 博則 瀬戸口 啓夫 中條 正典 福倉 良彦 小宮 節郎
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.737-740, 2014-09-25 (Released:2014-11-11)
参考文献数
19

梨状筋症候群は,明らかな画像所見を伴わないことが多く,診断に苦慮することが多い.腰椎椎間板ヘルニアや神経症状を呈する骨盤内腫瘍など,他の疾患の除外も必要である.我々は,坐骨神経の解剖学的破格が原因であった2例を経験した.一例は,術前に解剖学的破格が推定できなかったが,もう一例は,術前にMRI検査でT2強調画像と拡散強調画像の融合画像により,術前に梨状筋・坐骨神経ともに2分しているBeaton分類B型の解剖学的破格を診断することが可能であった.梨状筋症候群は,坐骨神経の破格を伴うことも少なくなく,診断には他の疾患の除外診断とともに,特徴的な理学所見の有無,慎重な画像診断による解剖学的破格の有無を予測することが診断の一助となる.
著者
久芳 昭一 古市 格 村田 雅和 宮田 倫明 穂積 晃 前田 和政 松村 陽介
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.368-371, 2010-03-25 (Released:2010-05-25)
参考文献数
6
被引用文献数
1

胸腰椎圧迫骨折の臨床経過と予後予測について検討を行った.過去2年間で受傷早期に来院し入院治療を行った43例50椎体(男性15例,女性28例)を対象とした.3カ月以上の疼痛持続の有無とX線学的に椎体圧潰率,局所後弯を受傷時と最終観察時に計測し,受傷時MRI(T1強調像),年齢,性別,受傷時椎体圧潰率,受傷時後弯度,損傷部位,受傷機転との関連を検討した.疼痛持続,椎体圧潰進行はMRI像の後壁損傷と男性症例に関連を認めた.後弯進行はMRI像の後壁損傷に関連を認めた.胸腰椎移行部の損傷は有意に椎体圧潰が進行していた.
著者
酒本 高志 中島 三郎 井上 哲二 沼田 亨祐 宮﨑 信 平山 雄大 寺本 周平
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.558-561, 2015-09-25 (Released:2015-12-03)
参考文献数
13

Microgeodic diseaseの1例を経験した.症例は9歳男児.12月誘因なく右中指の腫脹と疼痛が生じ,持続するため翌年2月当科受診した.初診時,右中指中節部に腫脹,疼痛を認め,X線像で中節骨に複数の小円形骨透亮像,骨皮質辺縁不整像,MRIで中節骨骨髄にびまん性にT1 low,T2 high,STIR highの異常信号域を認めた.Microgeodic diseaseと診断し,経過観察を行ったところ,初診より3ヵ月で理学所見,X線像とも軽快を認めた.本疾患の病因は現在のところ明らかではないが,一般的には一過性の末梢循環障害説が支持されている.教科書的な記載が乏しく,本疾患に関する認識がなければ,凍傷,骨髄炎,骨腫瘍などとの鑑別が困難であり,生検など侵襲的な検査を要することもある.
著者
案浦 聖凡 王 享弘 小林 晶
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.339-343, 1996-03-25 (Released:2010-02-25)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

From 1986 to 1995, 256 patients who had an ACL injury were operated on in our hospital. We investigated ACL injury mechanism in these patients. We examined the relationship between the position of the knee joint and the derection of force when the ACL was torn. Valgus stress to the knee and external rotation of the tibia on the femur was thought to be the most common injury mechanism.Forty-four patients with an acute complete ACL tear were examined by Magnetic Resonance Imaging (MRI). Among them, 64% showed signs of “bone bruise” located at both the lateral femoral terminal sulcus and the postero-lateral part of the tibial plateau. These findings suggest that the common injury mechanism of the ACL involves severe anterior subluxation with impact of the posterior part of the tibia on to the femur. Particularly in a non-contact type of ACL injury, we think that contraction of the quadriceps exerts an anterior drawing force onto the tibial tubercle when the patient lands from a jump. This was thought to be the cause of the anterior tibial dislocation tibia, even if the tibia was rotated externally.
著者
高橋 良輔 黒木 一央 坂本 和隆 村田 雅和 熊谷 謙治 河野 昌文 重松 和人
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.148-151, 2015-03-25 (Released:2015-05-22)
参考文献数
10

組織学的にサルコイドーシスが疑われた抗酸菌症を経験した.症例)67歳男性.既往:糖尿病.右手背部腫瘤を主訴に来院した.右手背部に2.5×3.0×0.5cmの弾性軟の腫瘤を認め,軽度圧痛を除くと血液検査,X線検査上,有意な所見はみられなかった.MRIでは手背~手関節に伸筋腱腱鞘の腫瘍性肥大と液体貯留を認めた.軟部腫瘍,感染等による肉芽腫を疑い,切開生検を施行した.肉眼的には腱鞘周囲に腫瘍性病変がみられた.病理検査では壊死を伴わない類上皮細胞様の細胞増殖が主体をなしサルコイドーシスと診断された.手術後3週間でMycobacrerium marinumが検出され,抗菌薬治療を開始した.考察)本症例では病理組織学的に腫瘤内に乾酪壊死を検出できなかったので,積極的に抗酸菌症は診断されず,サルコイドーシスの所見と考えられた.しかし抗酸菌症とサルコイドーシスの治療法は全く異なるので鑑別は重要である.診断不確定な腫瘍では適切な病歴聴取,MRIや抗酸菌検査を含めた細菌培養が望まれる.
著者
塚本 祐也 神保 幸太郎 白濱 善彦 田中 康嗣 下河辺 久雄 重留 広輔 加藤田 倫宏 吉田 史郎 坂井 健介 田中 憲治 吉田 健治 後藤 琢也
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.469-471, 2014-09-25 (Released:2014-11-11)
参考文献数
7

近年,加圧トレーニングはトップアスリートだけでなく一般人にも広く普及している.加圧トレーニングによってCrush Syndromeおよび長期運動障害を合併した1例を経験したので報告する.症例は15歳男性.野球部の練習中に加圧トレーニングを約15分実施.直後より両上肢の鬱血と強い疼痛および運動障害をきたしたため当院救急外来受診.血液検査にて白血球14830/μl,CPK2095IU/l,ミオグロビン631ng/mlと上昇,入院にて輸液管理を行った.入院1日目にミオグロビンは2013ng/mlに上昇,入院2日目にCPKは32309IU/lと急激な上昇を認めCrush Syndromeと診断した.輸液負荷を継続することで入院4日目からCPKは改善傾向になり,8日目にはCPKおよびミオグロビンは正常範囲まで改善した.両肘関節運動障害は徐々に改善して,受傷4か月で完全伸展可能となった.
著者
平山 雄大 中野 哲雄 越智 龍弥 安岡 寛理 田畑 聖吾 中原 潤之輔 酒本 高志 前田 和也
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.690-692, 2018-09-25 (Released:2018-11-12)
参考文献数
8
被引用文献数
1

100歳以上の大腿骨近位部骨折の術後成績を検討した.症例は2001~2017年に手術を施行した100歳以上の大腿骨近位部骨折11患者13例で,年齢は100~103歳,平均100.9歳,性別は男性2名,女性9名,骨折型は大腿骨頚部骨折4例,転子部骨折6例,転子下骨折2例,頚基部骨折1例であった.手術法は全例内固定術を行い,うち頚部骨折1例は偽関節のため再手術(人工骨頭置換術)を施行した.歩行再獲得率は63.6%(7/11例)で,周術期の合併症は術前肺炎1例,術後肺炎1例,術後肺炎+心不全1例であったが,全例が改善して自宅退院・施設入所・転院となった.術前評価にて手術が禁忌となるような既往症がなければ,100歳以上の患者でも積極的に手術を行うべきであると考える.
著者
生田 拓也
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.688-691, 2010-09-25 (Released:2010-12-08)
参考文献数
11
被引用文献数
1

有痛性二分膝蓋骨に対してcannulated screwを用いたtension band wiringによる骨接合術を行い良好な結果を得ているので報告した.症例は6例である.X線学的分類では全例Saupe分類III型であった.性別は男性5例,女性1例で年齢は12~44歳,平均22.7歳であった.全例,分裂部を掻爬新鮮化した上で内固定を行った.術後はknee braceにて固定し,免荷することなくできるだけ手術翌日より可動域訓練を行った.術後4週頃よりスポーツを許可した.全例,術後経過は良好で疼痛は順調に軽快した.本疾患に対する骨接合術の報告においては良好な結果を得ている報告もあるが,内固定材のゆるみを生じ再手術を要したとの報告もある.本法は固定力が強く早期よりのリハビリテーションを許可しても良好な結果が得られており有用な方法であると考えられた.
著者
菅田 耕 黒木 浩史 濱中 秀昭 猪俣 尚規 増田 寛 樋口 誠二 帖佐 悦男
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.86-88, 2012-03-25 (Released:2012-06-26)
参考文献数
5

Cervical anginaはPhillipsによって1927年に初めて提唱された病態で,何らかの頸椎近傍の病変に由来する狭心症発作性前胸部痛と定義され,さまざまな報告がなされている.この胸痛は生命への危険性を有する虚血性心疾患と同様な疼痛を呈することから,心疾患による胸痛との鑑別が重要である.頚椎・頚髄疾患による胸痛の発生機序に関しては後根への刺激,前根への刺激,椎間板や椎間関節からの関連痛,交感神経系の関与などが提唱されているが,明確な原因は不明である.今回我々は,心疾患に由来する胸痛が否定され,CTMやMRIでC7神経孔部での神経根の圧迫を認め,神経根ブロックをおこない,症状の軽快を認めたことから,C7神経根由来のCervical anginaと診断し,椎弓形成術+椎間孔拡大術を施行し,症状の改善がみられた1例を経験した.
著者
帖佐 直紀 濱中 秀昭 黒木 修司 比嘉 聖 永井 琢哉 李 徳哲 黒木 智文 帖佐 悦男
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.374-377, 2021-09-25 (Released:2021-11-12)
参考文献数
11

【抄録】乳児の頸椎疾患に対しての手術は稀で本邦でも報告数は少ない.今回,点状軟骨異形成症の乳児に対して手術を施行した稀な症例を経験したので報告する.【症例】生後50日,女児.妊娠37週2日で出生.胎児期から鼻の低形成が疑われていた.出生時に第1啼泣なく陥没呼吸が強いため人工呼吸器にて管理された.画像所見にて点状石灰化や環軸椎亜脱臼による脊髄圧迫の所見の他,鼻根部低形成などの特徴的顔貌から点状軟骨異形成症が疑われた.手術目的に転院となり,環椎後弓切除術と大後頭孔減圧術を施行した.術後は四肢の麻痺や筋力低下なく経過し,術後の画像所見でも圧迫が解除されていた.【考察】点状軟骨異形成症の頸椎病変に対する治療の基準は確立されていない.本症例では生後50日と乳児のため環椎後弓切除術と大後頭孔減圧術のみとし,今後不安定性が残存する場合は固定も考慮される.児の年齢や罹患場所に応じた治療を選択する事が重要である.
著者
首藤 敏秀 小薗 敬洋 鈴木 周一 和氣 聡
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.595-598, 2016-09-25 (Released:2016-12-06)
参考文献数
11

体軸性脊椎関節炎という新しい疾患概念の導入や生物学的製剤の進歩など脊椎関節炎を取り巻く状況は大きく変化している.しかしながら,本邦ではその進歩がいまだ日常診療に十分に反映されていないのが実情かと思われる.本研究では体軸性脊椎関節炎とその疑い例における脊椎関節炎および強直性脊椎炎の特徴的症状や所見の出現頻度を調査し,早期診断における問題点を検討した.若年者の慢性の腰背部痛に対して炎症性腰背部痛や脊椎関節炎の脊椎外症状,家族歴などが評価されてないために,整形外科を受診していながら体軸性脊椎関節炎の早期診断がされていない例を認めた.問診票などを利用してこれらを効率よく把握することが体軸性脊椎関節炎の早期診断に重要と考える.
著者
井上 三四郎
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.312-318, 2017-03-25 (Released:2017-05-01)
参考文献数
21

【目的】2015-2016シーズンに当院整形外科病棟で生じたインフルエンザアウトブレイクを報告し,今後の教訓とすること.【経過】前日から咳が続く1名の看護師が,病棟勤務中に発熱し当院内科外来を受診しインフルエンザと診断された.その後感染が拡大し,最終的に看護師5名患者7名に治療量の抗インフルエンザ薬が投与された.3例の患者が特に治療に支障をきたし,うち1例は手術を延期した.全例が内科的合併症を有する高齢者であった.【考察】整形外科病棟でインフルエンザアウトブレイクが生じた場合,整形外科病棟責任者は関連部署に速やかに連絡し,病院としての方針を確認する必要がある.そして,院内感染対策チームを中心に適切かつ迅速な対応が行われるべきである.そのようなバックアップの下に,可能な限り手術を含めた急性期治療を遅滞なく行っていくことこそが,整形外科医に与えられた責務である.
著者
鬼木 泰成 藤原 怜 宮園 大地 大橋 浩太郎 山隈 維昭 髙木 克公 知花 尚徳 水野 秀夫 鬼木 泰博
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.222-226, 2017-03-25 (Released:2017-05-01)
参考文献数
9

スポーツ外傷の中でも足底筋膜断裂は極めて稀である.今回我々は女子バスケットボール選手に発生した足底筋膜断裂の1例を経験したので報告する.34歳女性,主訴は右足底部痛と歩行困難である.学生時代より県内トップクラスの選手であり,現在も競技生活を継続している.平成27年11月,バスケットボールのストップ動作にて右足底部に激痛とポップ音を自覚し,当院スポーツ外来を受診した.右足底,踵骨足底筋膜付着部を中心に,腫脹,圧痛,皮下出血を認めた.MRIで足底筋周囲,付着部,heelpad内へ広がる高信号域が確認され,連続性の途絶を認めた.2週間のシーネ固定と足部トレーニング,体幹下肢機能改善訓練を実施した.受傷後4週で若干の圧痛は残存するものの,歩行可能となった.受傷後8週でジョギングが可能となり,12週でバスケットボールへ復帰した.本症例は保存療法が奏功し,比較的早期復帰が可能であった.
著者
樋高 由久 古江 幸博 田村 裕昭 永芳 郁文 本山 達男 川嶌 眞之 尾川 貴洋 片山 隆之 川嶌 眞人
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.443-446, 2012-09-25 (Released:2012-11-27)
参考文献数
10

γネイルを用いた骨接合術後に二次骨折をおこした3例について報告する.〈症例(1)〉87歳,女性.施設で転倒し,左大腿骨転子部骨折を受傷.初回手術後35日目に転倒し,再骨折を認めた.〈症例(2)〉52歳,男性.施設入所中転倒し,左大腿骨転子下骨折を受傷.初回手術後38日目に転倒し,再骨折を認めた.〈症例(3)〉79歳,男性.ベッド上で左股関節痛により体動困難となり,左大腿骨転子下骨折を認めた.初回手術後182日目に転倒し,再骨折を認めた.全例がネイル先端から遠位横止めにかかる二次骨折であり,遠位横止め部位にかかる応力の集中が二次骨折に関与していることが考えられた.しかし,捻転力による二次骨折,ネイルの回旋や沈み込みによる変形や疼痛などの合併症を避けるためには,遠位横止めは必要であり,遠位横止めの是非は今後の検討が必要と考えられた.
著者
赤瀬 広弥 吉岩 豊三 宮崎 正志 野谷 尚樹 石原 俊信 津村 弘
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.362-366, 2017-03-25 (Released:2017-05-01)
参考文献数
10

【はじめに】Bertolotti症候群は1917年にBertolottiが提言した最尾側腰椎の肥大した横突起と仙骨間に関節を形成し,腰痛を生じる症候群である.今回,Bertolotti症候群に対し横突起切除術を施行した2例を経験したので報告する.【症例】28歳女性と64歳女性.いずれも保存的治療に抵抗性の腰痛があり,単純X線,CTでは片側性に横突起と仙骨翼での関節形成が見られた.両症例とも横突起直上より侵入し,横突起切除術を施行した.1例目では,横突起基部から関節突起間部にかけての視認性が不良であり,横突起基部の切除に難渋した.2例目では顕微鏡を使用し,L5神経根に対して,より愛護的に施行し得た.いずれも術後,症状改善を認めた.【考察】手術的治療には横突起切除術と固定術があり,いずれも良好な成績が報告されている.われわれの症例では,横突起切除術を施行し,症状の改善を認めた.横突起基部の切除には,L5神経根が近接するため慎重を要するが,愛護的な処置のために顕微鏡が有用であった.
著者
鶴田 敏幸 峯 博子
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.472-478, 2014-09-25 (Released:2014-11-11)
参考文献数
18
被引用文献数
1

上腕骨小頭離断性骨軟骨炎(OCD)症例106例を後ろ向きに調査し,家族歴,受動喫煙,スポーツ歴,内側上顆下端障害とOCD予後との関連を検討した.その結果,9.2%に家族歴があり,受動喫煙率は78.2%と高率であった.家族歴,受動喫煙率とOCDおよび橈骨頭予後の間には明らかな関連は認められなかった.スポーツは89.6%が野球で,投球動作のない水泳・新体操(1.9%)もあった.X線像上,少年野球選手に対し体操選手は上腕骨小頭後方に病巣が描出されていた.内側上顆下端障害は,初診時内側上顆下端に分離骨片を認め,最終調査時癒合が認められた群(type I),非癒合群(type II),初診時から変形治癒が認められた群(type III),変形が認められなかった群(type IV)に分類され,OCD及び橈骨頭の予後は,type IVは全例良好で,type IIで不良例の割合が高かった.また,初診時に骨端線が開存していた群は閉鎖後群に比べて予後が良好であった.