著者
山下 幹雄 森田 隆二 勝呂 彰
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

10^<-15>秒域の光電場波束の発生・計測・制御を中心に研究を行った。その結果、自己位相変調(SPM)法により、可視域で世界最短のフーリエ変換限界単一パルス2.8fs・1.5サイクル光の発生に成功した。さらに、独自な誘起位相変調 (IPM) 法により、2.6 fs・1.3サイクル・1.4 GW光の発生に成功した。また、搬送波・包絡波位相 (CEP) を安定化したl kHz繰り返しの、3.3 fs・1.7サイクル光電場波束発生に成功した。加えて、フォトニッククリスタルファイバー (PCF) 法を用いた光パルス圧縮法としては、最短のサブ5 fsの光パルス発生が可能であることを実証した。これらは、一オクターブを越える帯域を有しかつ準実時間動作する、独自な自律型フィードバックチャープ補償システム(スペクトル位相を操作する空間位相変調器(SLM)+4f光学配置、スペクトル位相信号を高感度測定をするM-SPIDER、作成したプログラムによるスペクトル位相解析とSLM駆動のための計算機から成っている)の構築により可能となった。また、スペクトル位相解析にウェーブレット変換法を用いることにより、フィードバック補償の自動化と高精度スペクトル位相解析が可能であることを示した。さらにこのシステムの帯域を、紫外にまで拡げるため、新しい液晶を用いた空間光変調(SLM)素子を試作し、その位相変調特性の詳細な解明と有用性を確認した。一方、10^<-15>秒光電場波束の石英ファイバー非線形伝播について包絡波近似などのない厳密な非線形波動方程式を数値解析した。その結果、入射光CEPに著しく依存する第3高調波発生が見いだされた。これは、簡便なCEP計測法として利用できる現象である。