著者
永武 毅 山下 広志 出川 聡
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.87, no.2, pp.285-291, 1998-02-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
6

「かぜ症候群」の原因ウイルスには気道傷害性の強いものから弱いものまであり,その後の細菌感染とも深く関係してくる.しかし,かぜ症候群の原因となるウイルス感染では基本的には自然治癒がみられるものであり,注意深い経過観察か,治療としても対症療法が中心に行われている.中でもインフルエンザウイルス感染の場合にはしばしば大流行がみられると共に肺炎発症により健康成人でも重症化することがあり,早期診断と早期治療が求められる.インフルエンザ肺炎には純粋のウイルス性肺炎,ウイルスと細菌の同時感染による混合感染型肺炎あるいはウイルス感染軽快後の二次性細菌性肺炎がある.従って,適正な病型分類をすることが適切な治療に結びつくことになる.今日「かぜ症候群」の治療に細菌感染予防と称して抗菌薬が使用されることが多い.細菌混合感染の関与が明らかな場合や基礎疾患を有する場合のウイルス感染症としての重症化が予測される場合には早期から適正に抗菌化学療法を併用することに意味があるが,いずれにしても短期間投与を心掛けるべきである.