著者
桐谷 圭治 山下 英恵
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.77-86, 2008-05-25
被引用文献数
4

森林生息種のルイスオサムシの産卵フェノロジーと産卵数,発育零点,年間世代数を落とし穴トラップで採集した個体の解剖ならびに飼育によって調べた.越冬成虫は4月末に現れ,5月から9月初めまで成熟卵の形成がみられ,5月と8月に産卵活動(蔵部数と蔵卵雌率)のピークがみられた.捕獲消長には,5,6,8月にピークがみられ,それぞれが越冬成虫の産卵期に対応した活動期とみられた.解剖結果から有効卵巣小管数は通常5対,卵形成周期は平均3回,最高蔵卵数は15,また飼育実験からは,0.43卵/♀/日と計算された.産卵は約4ヵ月継続すると仮定すると,1雌当たりの産卵可能数は50卵以下と推定された.従来法と池本・高井法で推定した卵の発育零点と有効積算温度は,それぞれ6.36℃,133.3ddと7.86℃,120ddであったIsomorphy理論に基づき,卵から成虫羽化に必要な有効積算温度を求めるとともに,調査地における利用可能な有効積算温度から可能世代数を推定した.年間2世代の経過に温量の不足はないにもかかわらず,新生成虫の成虫休眠によって基本的に年1世代の生活史が維持されていると考えられる.さらにオサムシ科の共通の最適温度を求めたところ,15-16℃の範囲にあり,温帯圏起源が示唆された.