著者
山下 麻美 加藤 陽二 吉村 美紀
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.12, pp.637-642, 2012-12-15 (Released:2013-01-12)
参考文献数
26
被引用文献数
3

本研究では,シカ肉の食資源としての有効利用を目的として,近年,機能性アミノ酸として注目されているカルニチンについての定性および定量的な検討を行った.カルニチンには,遊離カルニチンと脂肪酸が結合したアシルカルニチンとしても存在するが,アシル体の多くが微量で,今までの酵素法などを用いた測定法ではそれぞれを分別して検出することができなかった.本研究では,LC-MS/MSを用いることによって,遊離カルニチンおよびアシルカルニチンであるアセチルカルニチン,ヘキサノイルカルニチン,ミリストイルカルニチン,パルミトイルカルニチンの5種類をシカ肉から検出することができた.さらに,シカ肉と牛肉,豚肉,鶏肉とのカルニチン量の比較を行った結果,遊離およびアシルカルニチンのいずれにおいてもシカ肉と牛肉に多く含まれていた.遊離カルニチンと短・中鎖脂肪酸が結合したカルニチンにおいては,シカ肉に多く含まれており,長鎖脂肪酸が結合したカルニチンは,シカ肉よりも牛肉に多く含まれていた.本研究の測定方法を用いることによって,遊離カルニチンに加えてアシルカルニチン類をシカ肉から検出することが可能となった.さらに,シカ肉に遊離カルニチン,アセチルカルニチンが多く含まれることが示され,脳機能向上などの機能性が期待されるアセチルカルニチンを多く含むことから,シカ肉の機能性食品としての可能性を見出すことができた.
著者
山下 麻美 加藤 陽二 吉村 美紀
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.178-181, 2013-04-10 (Released:2014-05-31)
参考文献数
16

本研究では,シカ肉の機能性食品としての活用を目的として,シカ肉の加熱調理によるカルニチン含有量の変化について検討を行った.加熱調理により,親水性であるL-カルニチンは,煮る調理加熱とスチーム加熱において,肉汁とともに溶出したため損失傾向を示した.疎水性であるアシルカルニチン類は,揚げる調理加熱を除いて,加熱調理により濃縮し,増加傾向を示した.アセチルカルニチンにおいてのみ,ヘキサノイルカルニチン,ミリストイルカルニチン,パルミトイルカルニチンほどの増加傾向は示さず,損失傾向を示す調理加熱方法もあった.アセチルカルニチンは,疎水性ではあるものの低分子であることが影響していると推察される.腸内細菌による代謝物を介して,アテローム性動脈硬化を引き起こす可能性が示唆されているL-カルニチンが,加熱調理により損失することで,疾病の予防につながることも考えられる.また,脳機能向上などの機能性が示唆されているアセチルカルニチンが加熱調理により損失せず,生肉の状態と同程度の含有量を保持する調理方法が望ましいと考えられる.これらの事より,本実験の加熱調理方法の中では,スチーム加熱がシカ肉の機能性食品としての活用を促進する上で,最も有効であると推察される.