著者
熊谷 武久 瀬野 公子 渡辺 紀之
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.179-184, 2006-03-15 (Released:2007-03-09)
参考文献数
16
被引用文献数
2 1

乳酸菌添加液に玄米を浸漬することによる乳酸菌の付着性を検討した.(1)米及び米加工品より分離したL. casei subsp. casei 327を乳酸菌スターターとして,コシヒカリ,ミルキークイーン及びこしいぶきの玄米を用い,玄米浸漬液にスターターを添加して37℃,17時間発酵することにより,乳酸菌の増殖が浸漬液及び玄米で見られた.16SrRNA遺伝子塩基配列により当該菌が増殖したことを確認した.(2)発酵処理した玄米のpHはおおよそ6であり,炊飯後の米飯の食味に影響を及ぼさなかった.(3)発酵温度の低下により発酵処理玄米のLactobacillus数が低下し,玄米と浸漬液の配合比及びスターター量の変化では,大きな影響はなかった.(4)乳酸菌を添加しない区では,乳酸菌以外の菌数が増加し,Enterobacteriaceaeが主要な菌であった.(5)5菌種,7菌株の乳酸菌,全てで発酵液及び発酵処理玄米のLactobacillus数の増加が見られ,L. acidophilus JCM1132Tのみ生育が悪く,L. casei subsp. casei 327が最も増殖効果が高かった.
著者
林 徹
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.91-92, 2010-02-15 (Released:2010-03-31)
参考文献数
1

食品にガンマ線や電子線などの放射線を照射すると,脂質が分解して炭化水素など種の放射線分解生成物が生成する.放射線照射によりトリグリセリドのアシル基-酸素結合が開裂すると,元の脂肪酸と同じ炭素原子数の2-アルキルシクロブタノン(2-ACB)が生成する(図1).この物質の存在が知られる以前には,放射線照射によって食品中に生成する分解生成物として,非照射食品中にも含まれる成分か,他の調理加工などによっても生成が誘発される既知の物質しか検出されなかった.ところが,2-ACBは加熱,マイクロ波照射,紫外線照射,超高圧処理,超音波処理などによって生成することはなく,放射線照射によってのみ生成する化合物である.すなわち,この物質は,現在知られている唯一の放射線特異分解生成物(Unique Radiolytic Product)である.前駆体となるトリグリセリドの脂肪酸組成に対応して異なるシクロブタノンが生成し,パルミチン酸から2-Dodecylcyclobutanone,パルミトレイン酸から2-Dodec-5′-enylcyclobutanone,ステアリン酸から2-Tetradecylcyclobutanone,オレイン酸から2-Tetradec-5′-enylcyclobutanone,リノール酸から2-Tetradecadienylcyclobutanoneが生成する.2-ACBは放射線照射により特異的に生成し,かつその生成量は線量に依存して増加するので,照射食品の検知に利用できる.2-ACB分析は,鶏肉,畜肉,液体卵,カマンベールチーズ,サケを対象とした検知技術として,ヨーロッパ標準法及びコーデックス標準法となっており,国際的に認知された照射食品検知技術である.照射食品の安全性を判断するには,放射線特異分解生成物である2-ACBの毒性を評価する必要がある.ドイツの研究者がコメットアッセイにより2-ACBには細胞のDNA損傷を誘発することを見出して,その安全性が問題となった.しかしエームス試験や復帰突然変異原性試験では,このような2-ACBの毒性は観察されなかった.また,非常に高濃度の2-ACBをラットに投与しても,それ自身が発ガン物質として働くことはなかった.しかし,ラットに発がん物質であるアゾキシメタンとともに2-ACBを投与したところ,3ケ月後の観察ではアゾキシメタンと水を投与したコントロールと比べて異常はなかったが,6ケ月後に2-ACB投与群で腫瘍数および腫瘍サイズの増大が認められ,2-ACBには発がん促進作用活性のあることが確認された.この投与実験で使われた1日当たりの2-ACBの用量は3.2mg/kg体重であり,ヒトが照射食品から摂取する2-ACBの最大量と想定される1日あたりの値の5-10μg/kg体重のよりもはるかに多く,約500倍であり,本実験結果が実際の食生活における照射食品の危険性に直接結びつくものではないと考えられている.また,米国で行われた100トン以上の照射鶏肉を用いたマウスや犬を対象とした大規模な長期動物飼育試験では,59kGyという高線量照射したにもかかわらず毒性は認められなかった.なお,この時に使用された照射鶏肉には2-ACBの存在が確認されている.これらの結果を総合的に考慮して,WHOや米国FDAなどの機関は,照射食品中のアルキルシクロブタノンの毒性が実際に問題になることはないと判断している.
著者
前橋 健二 有留 芳佳 股野 麻未 山本 泰
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.186-190, 2008-04-15 (Released:2008-05-31)
参考文献数
25
被引用文献数
2 4

ゴーヤ料理にかつお節がしばしば使用されることに注目し,かつお節の苦味低減作用について検討した.(1)生ゴーヤおよびゴーヤチャンプルの苦味強度はかつお節をまぶすことによって著しく低下した.(2)苦味抑制効果はかつお節エキスよりもかつお節エキス調製後のだしがらに著しく認められ,ゴーヤエキスにかつお節だしがらを加えて乳鉢でよく混和したところ,その上清の苦味は大きく減少していた.(3) かつお節だしがらを詰めたカラムを作成しそれにゴーヤエキスを通したところ,ゴーヤ中の苦味成分はカラムに強く吸着し蒸留水では溶出されなかったが60%エタノールによって溶出された.これらの結果から,かつお節にはゴーヤ中の苦味物質を強く吸着する性質があることがわかり,この性質によりゴーヤに含まれる苦味成分を舌に感じさせなくすることがかつお節の脱苦味作用であると考えられた.
著者
等々力 節子 亀谷 宏美 内藤 成弘 木村 啓太郎 根井 大介 萩原 昌司 柿原 芳輝 美濃部 彩子 篠田 有希 水野 亮子 松倉 潮 川本 伸一
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.25-29, 2013-01-15 (Released:2013-02-28)
参考文献数
16
被引用文献数
1 3

食品中放射性セシウムの一般食品の新基準値である100Bq/kg程度の大麦玄麦を焙煎し,標準的な方法で調製した麦茶について放射性セシウムの浸出割合を検討した.焙煎麦から浸出液への放射性セシウムの移行は,浸出時間120分で38 %程度であった.浸出液は焙煎麦に対し約30倍量の水で希釈され,さらに移行率も50%を超えないため,麦茶の放射性セシウム濃度は,1.83Bq/kg程度であり,100Bq/kg程度(138Bq/kg)の玄麦を原料として使っても,飲料の基準の10Bq/kgを大きく下回ることが予想される.
著者
喜多 記子 中津川 かおり 植草 貴英 田代 直子 HA Tran thi 長尾 慶子
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.261-267, 2006-05-15 (Released:2007-05-15)
参考文献数
15
被引用文献数
6 3

ジャポニカ米を主原料とした米粉麺の調製法の確立と,嗜好的に好まれるジャポニカ種米粉麺のテクスチャーの改良を目的に,副材料の添加を検討した結果,以下のような知見が得られた.(1)DSC測定,顕微鏡観察および流動特性測定より,ジャポニカ種の糊化温度はインディカ種よりも低く,高温域で澱粉の膨潤,崩壊によってゾルの粘性が増した.(2)インディカ種は米粉液を75℃,ジャポニカ種は同65℃まで加熱することで,麺の調製を可能にした.(3)ジャポニカ種加熱麺はテクスチャー及び力学試験結果より付着性が高く,軟らかいため,予備実験として行った官能評価の結果からもインディカ米の麺と比較して低い評価であった.(4)ジャポニカ麺のテクスチャー改良のため,タピオカ澱粉を添加した麺は,硬さ,付着性が改良され,官能評価では,ジャポニカ米のみの麺よりも高い評価を得た.(5)ジャポニカ米に豆乳を添加した麺は,力学試験や官能評価では有意な差は認められなかったが,精白米の制限アミノ酸(リシン)の補足効果が得られるため,栄養面と共に食味,食感などの品質の改良が今後の課題となる.
著者
柴原 裕亮
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.11, pp.571, 2008-11-15 (Released:2008-12-31)
参考文献数
2

甲殻類アレルギーは,エビ,カニといった甲殻類を摂食することにより,蕁麻疹,呼吸困難,眼瞼浮腫,嘔吐,咽頭瘙痒感に加え様々な全身症状を呈するもので,時にアナフィラキシーショック症状を発現する.甲殻類の主要なアレルギー誘発物質(アレルゲン)であるトロポミオシンは分子量3.5~3.8万のサブユニット2つからなる2量体で,アクチン,トロポニンとともに細い筋原繊維を構成している熱に安定なタンパク質である.各種甲殻類のトロポミオシンはお互いに抗原交差性を示すが1),これは甲殻類間におけるトロポミオシンのアミノ酸配列の相同性が高いためでえび類のブラウンシュリンプを,クルマエビ(えび類),アメリカンロブスター(ざりがに類),シマイシガニ(かに類)とそれぞれ比較すると,すべて90%以上と非常に高い値を示している.さらに,ブラウンシュリンプのトロポミオシンについては,全配列をカバーするペプチドとエビアレルギー患者の血清IgEを用いた評価から主要なIgE結合エピトープが報告されている.これらのエピトープの部分配列は他の甲殻類においてもよく保存されており,抗原交差性を裏付けている.また,甲殻類以外とのアミノ酸配列の相同性は,上記と同じくブラウンシュリンプとの比較で,甲殻類と同じ節足動物に属するゴキブリ類,ダニ類が約80%,軟体動物のたこ類,いか類,貝類が60%程度で,いずれも抗原交差性が確認されている.一方,脊椎動物の鳥類,哺乳類もアミノ酸配列の相同性は60%程度なものの,抗原交差性は確認されていない.これらの抗原交差性の違いは節足動物および軟体動物では甲殻類とIgE結合エピトープのアミノ酸配列の相同性が高いが,脊椎動物では低いことに起因すると考えられる.平成14年4月より本格的に開始されたアレルギー物質を含む食品表示制度において,甲殻類(えび・かに)は過去に一定の頻度でアレルギーの発症が確認され,引き続き調査を必要とする品目であることから,特定原材料に準ずる20品目に含まれた.その後も調査は継続され,平成17年度の調査ではアナフィラキシーショック症状を誘発した食品として「えび」は特定原材料に次ぐ6位であった2).一方,「かに」は13位で「えび」と比較して頻度は少ないものの,エビアレルギー患者の65%が「かに」に対しても反応することから,「えび」と「かに」との交差性の頻度の高いことが確認された.このような新たな知見によりアレルギー表示対象品目の見直しが行われ,「えび」「かに」は平成20年6月より特定原材料に追加された.さらに表示の範囲も,従来の「えび」の範囲である日本標準商品分類の分類番号7133 えび類(いせえび・ざりがに類を除く)に加えて,7134 いせえび・うちわえび・ざりがに類が追加された.また,「かに」については7135 かに類を範囲としており,「えび」「かに」は生物学的に十脚目に分類される甲殻類を表示の範囲としている.
著者
奥西 智哉
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.7, pp.424-428, 2009-07-15 (Released:2009-09-01)
参考文献数
17
被引用文献数
13 12

小麦粉の一部を炊飯米で置換したごはんパンは置換率30%までのごはんパンは小麦粉パンと同等あるいはそれ以上の製パン性を有した.一方,部分置換タイプの米粉パンでは置換率の上昇とともに製パン性が低下した.置換率10-40%のごはんパンは,官能試験の総合評価で小麦粉パンより有意に評価が高く,最適置換率は30%であった.すだち・色相・香りは,20%ごはんパンの色相評価が有意に高い点を除き,いずれも有意差はなかった.内相の触感および硬さは10-30%ごはんパンで有意に評価が高く,20%が最適であった.味ともちもち感は,30%が最も高く,しっとり感と甘味は,40%までなら炊飯米置換率が高まるほど向上した.一方,米粉パンはすべての官能評価項目において小麦粉パンと有意差は見られず,特に総合評価では置換率にかかわらず評価が低かった.
著者
大原 浩樹 伊藤 恭子 飯田 博之 松本 均
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.137-145, 2009-03-15 (Released:2009-04-30)
参考文献数
16
被引用文献数
24 27

魚鱗コラーゲンペプチド(2.5g, 5g, 10g)の3用量の用量設定と豚皮コラーゲンペプチド(10g)の有効性確認を目的に,プラセボ群を設定して各々を4週間摂取して摂取前後の皮膚状態の変化を二重盲検法で比較した.その結果,魚鱗コラーゲンペプチド摂取によりその用量に応じて角層水分量の増加傾向が見られ,特に,30歳以上を対象とした層別解析で魚鱗コラーゲンペプチド5g以上の摂取により角層水分量の有意な増加が認められた.一方,豚皮コラーゲンペプチド摂取では有意な変化は得られなかった.この結果から,魚鱗コラーゲンペプチドの摂取は角層水分量の増加に有効であると考えられた.また,その他の評価項目(経表皮水分蒸散量,皮膚粘弾性,皮膚所見)に関しては,コラーゲンペプチド摂取に起因すると推定される変化は認められなかった.
著者
川崎 晋 齋藤 美枝 持田 麻里 等々力 節子
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.259-263, 2018-05-15 (Released:2018-05-17)
参考文献数
19
被引用文献数
2 3

牛挽肉および肝臓中でのC. jejuniのγ線照射による殺菌効果について検討を行い,殺菌に必要とされる線量応答を取得した.その際,望ましいγ線照射形態について検討するため,冷蔵·冷凍および含気·脱気包装条件下での殺菌効果を比較した.牛肝臓中でのγ線照射による殺菌には,従来の報告で示された牛挽肉殺菌試験結果よりやや高めの線量が必要で,冷蔵条件の場合のD10値は,含気条件で0.26kGy,脱気条件で0.33kGyであった.この現象は冷凍条件下ではより顕著に観察され,凍結条件下でのD10値は0.58kGyと,先の牛挽肉研究例と比較して高い線量照射を必要とした.さらに牛肝臓を脱気包装した場合では,さらなる殺菌効果の低下が観察され,D10値は0.69kGyとなり含気条件下よりさらに高い線量照射を必要とした.放射線照射時は食品自身の劣化防止のため低温かつ酸素濃度を低下させた環境が望まれるが,牛肝臓中での殺菌を行う場合,上記条件下での照射は品質評価と共に慎重に検討すべきである.
著者
海野 知紀 坂根 巌 角田 隆巳
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.9, pp.740-743, 2000-09-15 (Released:2009-02-19)
参考文献数
20
被引用文献数
3 5

フィリピンで糖尿病に有効であるとされているバナバについてXODに対する阻害効果に関する評価を行った.(1) バナバ葉熱水抽出物は緑茶,ルイボス茶,杜仲茶と比較して強いXOD阻害効果を示した.(2) バナバ葉熱水抽出物を合成吸着樹脂であるダイアイオンHP-20に供し,そのメタノール溶出フラクションを回収したところ,XOD阻害活性が上昇した.(3) HPLCを用いた分析より,バナバ葉成分としてエラグ酸の存在を認め(乾燥重量として3.1%),エラグ酸がバナバ葉熱水抽出物のXOD阻害効果に関与している可能性があることを推察した.
著者
伊澤 華子 青柳 康夫
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.7, pp.348-353, 2012-07-15 (Released:2012-09-04)
参考文献数
20
被引用文献数
1 8

植物性食品80種類について,ACE阻害とニコチアナミン量の測定を同時に行い,植物性食品の血圧抑制について検討した.ACE阻害は,イネ科の植物を除く多くの試料で60%以上の強いACE阻害が示された.ニコチアナミン量は,タラノメで74.8mg/乾物100gと最も多く,イネ科を除く多くの試料でニコチアナミンが検出された.科間の比較ではウコギ科はイネ科とユリ科の植物と比較してニコチアナミン量が有意に多いことが示された.アスパラガス,ウルイのように強いACE阻害を示すが,ニコチアナミンを含有していないものも存在していた.しかし,多くの植物性食品のACE阻害の強さにニコチアナミン量が少なからず影響していることが示された.
著者
須見 洋行 馬場 健史 岸本 憲明
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.10, pp.1124-1127, 1996-10-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
9
被引用文献数
3 6

納豆抽出液中に従来のナットウキナーゼでは説明できない強力なプロウロキナーゼアクチベーター活性を確認した.6種の市販納豆の活性はヒトプラズミンを標準として21.8±5.5CU/g湿重量であった.同酵素はゲル濾過法で分子量2.7万以上に3つ以上の活性ピークを示し,またDFPあるいはNPGBで阻害されるセリン酵素と思われた.この酵素を高力価含む乾燥粉末30gを5人の健常成人ボランティア(51~86歳,男女)に経口投与した結果,4~8時間目にわたるEFAの上昇あるいはFDPの増加から持続的な血中線溶亢進と血栓溶解の起こることが確認された.
著者
伊澤 華子 吉田 望 白貝 紀江 青柳 康夫
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.253-257, 2008-05-15 (Released:2008-06-30)
参考文献数
16
被引用文献数
9 11

豆類41種類の熱水抽出液のACE阻害をスクリーニングしたところ,ナタマメを除きいずれも強いACE阻害を示した.IC50値の比較ではササゲ属が他の属に比較して阻害力が弱い傾向が見られた.豆類のニコチアナミン量は,絹さや(生)で77.0mg/乾物100gと最も多く,インゲン属,ダイズ属,エンドウ属などでは,ほとんどが30~55mg/乾物100gと豊富に含まれていた.属間の比較では,ササゲ属はエンドウ属(p<0.05),インゲン属,ダイズ属(p<0.001)と比較して有意にニコチアナミン量が少ないことが示された.豆類抽出物のACEに対するIC50値はニコチアナミン量と相関があることが示された.また,そのときの抽出物中ニコチアナミンの存在量は,ニコチアナミン標品のIC50値と一致していた.このため,豆類熱水抽出物のACE阻害は,ほぼニコチアナミン単独で発現しているものと推測された.
著者
中村 和夫 小林 奈保子 谷本 守正
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.9, pp.444-447, 2014-09-15 (Released:2014-10-31)
参考文献数
13
被引用文献数
2 5

食用きのこ12株のフスマ固体培養を行い,その抽出液の凝乳活性を測定した結果,ヤマブシタケ(Hericium erinaceum) NBRC 100328に高い凝乳活性を見い出した.さらにMAFF7株のヤマブシタケについて凝乳活性を測定したところ,4株について凝乳活性が存在した.これら5株について低温殺菌牛乳を用いたカードの作製を行った結果,5株全てにおいてカードの作製が可能であった.全凝乳活性およびカード収量が高かった,Hericium erinaceum MAFF 435060,MAFF 430234,NBRC 100328をチーズ作製に適した株として選抜した.
著者
馬場 良子 中村 后希 熊沢 賢二
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.294-301, 2017-06-15 (Released:2017-06-30)
参考文献数
22
被引用文献数
5

ダージリン紅茶の特徴香に寄与する成分を探索するため,産地(銘柄)の異なる8種類の紅茶浸出液の香気寄与成分を比較検討し,以下の結果を得た.(1)ダージリン紅茶に特徴的な成分として,3,7-dimethyl-1,5,7-octatrien-3-ol (hotrienol)(floral, fruity),2,3-diethyl-5-methylpyrazine (roasty, nutty)および不明成分(green, meaty)を見出した.不明成分は,ダージリン茶葉のSDE抽出物より,シリカゲルカラム,次いで,オフライン2次元GCにて高度に精製し,最終的に,マスカット果実の重要香気寄与成分である4-mercapto-4-methyl-2-pentanone (MMP)と同定した.さらに,ダージリン紅茶とマスカット果実にて高い寄与度を有する香気成分を比較し,紅茶におけるマスカットフレーバーが,紅茶全般に共通する3成分(linalool, geraniol, β-damascenone)とMMPより形成され,その発現にはMMP含有量が深く関与している可能性を見出した.(2)(1)にて見出したダージリン紅茶に特徴的な3成分の生成に,製造工程中の乾燥条件や,茶葉の生育環境および品種に起因する前駆体量の違いが関与する可能性を推察し,ダージリン紅茶の,マスカットフレーバーを含む特徴香の形成に,特有の生育環境や伝統製法等の要因が影響している可能性を見出した.
著者
外薗 英樹 上原 絵理子
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.7, pp.306-311, 2016-07-15 (Released:2016-08-31)
参考文献数
20
被引用文献数
3 7

GABA摂取が肌質,並びに,睡眠の質に及ぼす影響を評価することを目的として,肌荒れを自覚し,疲労や睡眠の不調を感じている成人女性を対象に,二重盲検並行群間試験を実施した.その結果,GABA摂取群において頬の皮膚弾力性指標がプラセボ摂取群と比較して有意に改善した.睡眠の質の評価においてはGABA摂取群とプラセボ摂取群の両群ともに摂取開始後に改善がみられたが,有意な群間差はみられなかった.本試験の結果から,GABAの摂取は日頃から疲労や睡眠の不調を感じ,肌荒れの自覚がある成人女性の頬の粘弾性の悪化を抑制する可能性が示された.
著者
早川 文代 井奥 加奈 阿久澤 さゆり 齋藤 昌義 西成 勝好 山野 善正 神山 かおる
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.8, pp.337-346, 2005 (Released:2007-04-13)
参考文献数
40
被引用文献数
19 31

日本語のテクスチャー用語を収集し, 以下の知見を得た. 116人を対象としたアンケートによって用語を収集し, 討議により整理したところ332語を得た. これに文献調査の結果から94語を追加して426語とした. テクスチャーの研究者55人に用語の妥当性を評価させ, 専門家4人に面接調査を行って用語を削除, 追加し, 最終的に445語のテクスチャー用語を得た.1960年代に収集されたテクスチャー用語と比較したところ, “もちもち” “ぷりぷり” など新しい用語がみられた. また, 中国語などと比較すると, 日本語のテクスチャー表現は数が多いことが示された.テクスチャー用語の約70%は擬音語・擬態語であることから, 日本語のテクスチャー表現に擬音語・擬態語が重要な役割を果たすことが示唆された.
著者
齋藤 優介 西 繁典 小疇 浩 弘中 和憲 小嶋 道之
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.563-567, 2007-12-15 (Released:2008-02-01)
参考文献数
17
被引用文献数
3 5

7種類の食用豆類から80%エタノールと70%アセトンを用いた2段階抽出により全ポリフェノールを調製して,抗酸化活性,α-アミラーゼおよびα-グルコシダーゼ活性に対する抑制効果を比較した.ポリフェノール含量の多い豆は,順にアズキ,インゲンマメ,コクリョクトウ,黒ダイズ,リョクトウ,ダイズであったが,種子の大小や種皮色との関係は認められなかった.しかし,各豆類のモノマー型およびオリゴマー型ポリフェノール含量と抗酸化活性との間には高い正の相関関係が認められた.また,エンドウとダイズポリフェノールに占めるオリゴマー型ポリフェノールの割合は低く,α-アミラーゼおよびα-グルコシダーゼ活性の抑制作用はほとんど認められなかった.これに対して,アズキ,インゲンマメ,コクリョクトウ種子ポリフェノールには,オリゴマー型ポリフェノールが67-76%を占めており,抗酸化活性と共にα-アミラーゼおよびα-グルコシダーゼ活性の抑制作用を示した.リョクトウや黒ダイズポリフェノールは,α-アミラーゼ活性抑制作用はほとんど認められなかったが,α-グルコシダーゼ活性の抑制作用が認められた.これらの結果から,豆類ポリフェノールのオリゴマー型ポリフェノールは抗酸化活性作用とα-アミラーゼおよびα-グルコシダーゼ活性の抑制作用を有しているが,モノマー型ポリフェノールは主に抗酸化活性作用のみを有していることが推察された.
著者
中村 美香子 野田 正順 村上 隆之 日俣 克一 細谷 誠生 山田 雄司
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.229-237, 2004-05-15 (Released:2009-02-19)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

(1) 臭素酸カリウムを添加した角型食パン及び山型食パンを調製し,それぞれパン中の臭素酸の残存量を,改良微量分析法(検出限界0.5ppb)を用いて測定した.その結果,角型食パンからは添加濃度13及び15ppmにおいて臭素酸は検出されなかった.一方,山型食パンからは各添加濃度(9,13及び30ppm)においてその添加量に比例して0.5ppb以上の臭素酸が検出された.(2) 臭素酸の分解を促進する製パン工程を明らかにするため,山型食パンの製造工程中における臭素酸の残存量の変化を,ポストカラムHPLC法(検出限界3ppb)を用いて測定した.その結果,ホイロ後,すなわち焼成前までに,臭素酸の残存量を低減した条件下において臭素酸の残存量が検出限界以下になることが認められた.しかし,その条件下では臭素酸カリウムの製パン性に対する改良効果があまり認められなかった.(3) 山型食パン中の残存臭素酸の分布を改良微量分析法(検出限界0.5ppb)を用いて測定した結果,上部クラスト(型に接していないクラスト)に臭素酸が残存していることが明らかとなった.一方,焼成型に蓋をして焼成する角食の食パン類には臭素酸が残存せず,焼成蓋をせずに焼成する山型食パンに臭素酸が残存することが明らかとなった.(4) 山型食パン中の臭素酸残存量を低減するため,各種還元剤(L-アスコルビン酸,硫酸第一鉄,システイン及びグルタチオン)を臭素酸カリウムと同時に添加し,それぞれのパン中の臭素酸残存量をポストカラムHPLC法(検出限界3ppb)を用いて測定した.その結果,いずれの還元剤も臭素酸残存量の低下に効果を示し,特に,L-アスコルビン酸(対粉30ppm以上),硫酸第一鉄(対粉15ppm以上)を同時に添加した場合に効果が高かった.しかし,これらの添加は,臭素酸カリウムの製パン性改良効果にあまり寄与しなかった.(5) 臭素酸カリウムを添加した山型食パン中の臭素酸残存量を低減するため,焼成条件及び焼成型の蓋について検討し,改良微量分析法(検出限界0.5ppb)を用いて残存臭素酸量を測定した.その結果,山型食パンの焼成温度を角型食パンと同じ210°Cにして,16分から33分間焼成したところ,焼成時間が長くなるに従って臭素酸の残存量が低下する傾向が認められた.また,山型食パンを焼成する際に,焼成型に蓋をすることによって,臭素酸の残存量が検出限界以下になることが認められた.(6) 実際の製造所(6箇所)において臭素酸カリウムを対粉12ppm(粉末添加む)とL-アスコルビン酸を対粉5ppm添加した角型食パンを試験的に調製し,改良微量分析法(検出限界0.5ppb)を用いて残存臭素酸量を測定したところ,パン中の臭素酸の残存量は検出限界以下であった.
著者
森 直子 浅野 智絵美 永田 忠博 伊藤 輝子
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.144-149, 2014-03-15 (Released:2014-04-30)
参考文献数
19
被引用文献数
1

干しいもの摂取が排便に及ぼす影響について平均年齢20±1歳の女子学生84名を対象とし,非摂取期2週間および摂取期2週間(干しいも100g/日)の単一群試験を実施した.被験者は,排便状況を毎日記録し1週間ごとに提出した.その際,食事調査と身体測定を受けた.また,週3日以上排便がない者を便秘群(15名),週4日以上排便のある者を非便秘群(69名)とし,群別に解析を行った.その結果,非摂取期と比較し摂取期では,被験者全体として排便日数,排便回数,排便量および放屁回数が有意に増加した.また便秘群では,排便日数および放屁回数が有意に増加したが,非便秘群では,放屁回数が有意に増加した以外に,他の項目での有意差は見られなかった.干しいもの摂取による排便促進効果を介入試験により示し,便秘の改善を確認したが,将来はプラセボ対照群を設定し,食事や長期摂取による影響を調べ,本試験結果を検証したい.