著者
林 徹
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.91-92, 2010-02-15 (Released:2010-03-31)
参考文献数
1

食品にガンマ線や電子線などの放射線を照射すると,脂質が分解して炭化水素など種の放射線分解生成物が生成する.放射線照射によりトリグリセリドのアシル基-酸素結合が開裂すると,元の脂肪酸と同じ炭素原子数の2-アルキルシクロブタノン(2-ACB)が生成する(図1).この物質の存在が知られる以前には,放射線照射によって食品中に生成する分解生成物として,非照射食品中にも含まれる成分か,他の調理加工などによっても生成が誘発される既知の物質しか検出されなかった.ところが,2-ACBは加熱,マイクロ波照射,紫外線照射,超高圧処理,超音波処理などによって生成することはなく,放射線照射によってのみ生成する化合物である.すなわち,この物質は,現在知られている唯一の放射線特異分解生成物(Unique Radiolytic Product)である.前駆体となるトリグリセリドの脂肪酸組成に対応して異なるシクロブタノンが生成し,パルミチン酸から2-Dodecylcyclobutanone,パルミトレイン酸から2-Dodec-5′-enylcyclobutanone,ステアリン酸から2-Tetradecylcyclobutanone,オレイン酸から2-Tetradec-5′-enylcyclobutanone,リノール酸から2-Tetradecadienylcyclobutanoneが生成する.2-ACBは放射線照射により特異的に生成し,かつその生成量は線量に依存して増加するので,照射食品の検知に利用できる.2-ACB分析は,鶏肉,畜肉,液体卵,カマンベールチーズ,サケを対象とした検知技術として,ヨーロッパ標準法及びコーデックス標準法となっており,国際的に認知された照射食品検知技術である.照射食品の安全性を判断するには,放射線特異分解生成物である2-ACBの毒性を評価する必要がある.ドイツの研究者がコメットアッセイにより2-ACBには細胞のDNA損傷を誘発することを見出して,その安全性が問題となった.しかしエームス試験や復帰突然変異原性試験では,このような2-ACBの毒性は観察されなかった.また,非常に高濃度の2-ACBをラットに投与しても,それ自身が発ガン物質として働くことはなかった.しかし,ラットに発がん物質であるアゾキシメタンとともに2-ACBを投与したところ,3ケ月後の観察ではアゾキシメタンと水を投与したコントロールと比べて異常はなかったが,6ケ月後に2-ACB投与群で腫瘍数および腫瘍サイズの増大が認められ,2-ACBには発がん促進作用活性のあることが確認された.この投与実験で使われた1日当たりの2-ACBの用量は3.2mg/kg体重であり,ヒトが照射食品から摂取する2-ACBの最大量と想定される1日あたりの値の5-10μg/kg体重のよりもはるかに多く,約500倍であり,本実験結果が実際の食生活における照射食品の危険性に直接結びつくものではないと考えられている.また,米国で行われた100トン以上の照射鶏肉を用いたマウスや犬を対象とした大規模な長期動物飼育試験では,59kGyという高線量照射したにもかかわらず毒性は認められなかった.なお,この時に使用された照射鶏肉には2-ACBの存在が確認されている.これらの結果を総合的に考慮して,WHOや米国FDAなどの機関は,照射食品中のアルキルシクロブタノンの毒性が実際に問題になることはないと判断している.
著者
前橋 健二 有留 芳佳 股野 麻未 山本 泰
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.186-190, 2008-04-15 (Released:2008-05-31)
参考文献数
25
被引用文献数
2 1

ゴーヤ料理にかつお節がしばしば使用されることに注目し,かつお節の苦味低減作用について検討した.(1)生ゴーヤおよびゴーヤチャンプルの苦味強度はかつお節をまぶすことによって著しく低下した.(2)苦味抑制効果はかつお節エキスよりもかつお節エキス調製後のだしがらに著しく認められ,ゴーヤエキスにかつお節だしがらを加えて乳鉢でよく混和したところ,その上清の苦味は大きく減少していた.(3) かつお節だしがらを詰めたカラムを作成しそれにゴーヤエキスを通したところ,ゴーヤ中の苦味成分はカラムに強く吸着し蒸留水では溶出されなかったが60%エタノールによって溶出された.これらの結果から,かつお節にはゴーヤ中の苦味物質を強く吸着する性質があることがわかり,この性質によりゴーヤに含まれる苦味成分を舌に感じさせなくすることがかつお節の脱苦味作用であると考えられた.
著者
等々力 節子 亀谷 宏美 内藤 成弘 木村 啓太郎 根井 大介 萩原 昌司 柿原 芳輝 美濃部 彩子 篠田 有希 水野 亮子 松倉 潮 川本 伸一
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.25-29, 2013-01-15 (Released:2013-02-28)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

食品中放射性セシウムの一般食品の新基準値である100Bq/kg程度の大麦玄麦を焙煎し,標準的な方法で調製した麦茶について放射性セシウムの浸出割合を検討した.焙煎麦から浸出液への放射性セシウムの移行は,浸出時間120分で38 %程度であった.浸出液は焙煎麦に対し約30倍量の水で希釈され,さらに移行率も50%を超えないため,麦茶の放射性セシウム濃度は,1.83Bq/kg程度であり,100Bq/kg程度(138Bq/kg)の玄麦を原料として使っても,飲料の基準の10Bq/kgを大きく下回ることが予想される.
著者
喜多 記子 中津川 かおり 植草 貴英 田代 直子 HA Tran thi 長尾 慶子
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.261-267, 2006-05-15 (Released:2007-05-15)
参考文献数
15
被引用文献数
6 2

ジャポニカ米を主原料とした米粉麺の調製法の確立と,嗜好的に好まれるジャポニカ種米粉麺のテクスチャーの改良を目的に,副材料の添加を検討した結果,以下のような知見が得られた.(1)DSC測定,顕微鏡観察および流動特性測定より,ジャポニカ種の糊化温度はインディカ種よりも低く,高温域で澱粉の膨潤,崩壊によってゾルの粘性が増した.(2)インディカ種は米粉液を75℃,ジャポニカ種は同65℃まで加熱することで,麺の調製を可能にした.(3)ジャポニカ種加熱麺はテクスチャー及び力学試験結果より付着性が高く,軟らかいため,予備実験として行った官能評価の結果からもインディカ米の麺と比較して低い評価であった.(4)ジャポニカ麺のテクスチャー改良のため,タピオカ澱粉を添加した麺は,硬さ,付着性が改良され,官能評価では,ジャポニカ米のみの麺よりも高い評価を得た.(5)ジャポニカ米に豆乳を添加した麺は,力学試験や官能評価では有意な差は認められなかったが,精白米の制限アミノ酸(リシン)の補足効果が得られるため,栄養面と共に食味,食感などの品質の改良が今後の課題となる.
著者
奥西 智哉
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.7, pp.424-428, 2009-07-15 (Released:2009-09-01)
参考文献数
17
被引用文献数
13 7

小麦粉の一部を炊飯米で置換したごはんパンは置換率30%までのごはんパンは小麦粉パンと同等あるいはそれ以上の製パン性を有した.一方,部分置換タイプの米粉パンでは置換率の上昇とともに製パン性が低下した.置換率10-40%のごはんパンは,官能試験の総合評価で小麦粉パンより有意に評価が高く,最適置換率は30%であった.すだち・色相・香りは,20%ごはんパンの色相評価が有意に高い点を除き,いずれも有意差はなかった.内相の触感および硬さは10-30%ごはんパンで有意に評価が高く,20%が最適であった.味ともちもち感は,30%が最も高く,しっとり感と甘味は,40%までなら炊飯米置換率が高まるほど向上した.一方,米粉パンはすべての官能評価項目において小麦粉パンと有意差は見られず,特に総合評価では置換率にかかわらず評価が低かった.
著者
大原 浩樹 伊藤 恭子 飯田 博之 松本 均
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.137-145, 2009-03-15 (Released:2009-04-30)
参考文献数
16
被引用文献数
17 21

魚鱗コラーゲンペプチド(2.5g, 5g, 10g)の3用量の用量設定と豚皮コラーゲンペプチド(10g)の有効性確認を目的に,プラセボ群を設定して各々を4週間摂取して摂取前後の皮膚状態の変化を二重盲検法で比較した.その結果,魚鱗コラーゲンペプチド摂取によりその用量に応じて角層水分量の増加傾向が見られ,特に,30歳以上を対象とした層別解析で魚鱗コラーゲンペプチド5g以上の摂取により角層水分量の有意な増加が認められた.一方,豚皮コラーゲンペプチド摂取では有意な変化は得られなかった.この結果から,魚鱗コラーゲンペプチドの摂取は角層水分量の増加に有効であると考えられた.また,その他の評価項目(経表皮水分蒸散量,皮膚粘弾性,皮膚所見)に関しては,コラーゲンペプチド摂取に起因すると推定される変化は認められなかった.
著者
海野 知紀 坂根 巌 角田 隆巳
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.9, pp.740-743, 2000-09-15 (Released:2009-02-19)
参考文献数
20
被引用文献数
3 3

フィリピンで糖尿病に有効であるとされているバナバについてXODに対する阻害効果に関する評価を行った.(1) バナバ葉熱水抽出物は緑茶,ルイボス茶,杜仲茶と比較して強いXOD阻害効果を示した.(2) バナバ葉熱水抽出物を合成吸着樹脂であるダイアイオンHP-20に供し,そのメタノール溶出フラクションを回収したところ,XOD阻害活性が上昇した.(3) HPLCを用いた分析より,バナバ葉成分としてエラグ酸の存在を認め(乾燥重量として3.1%),エラグ酸がバナバ葉熱水抽出物のXOD阻害効果に関与している可能性があることを推察した.
著者
柴原 裕亮
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.11, pp.571, 2008-11-15 (Released:2008-12-31)
参考文献数
2

甲殻類アレルギーは,エビ,カニといった甲殻類を摂食することにより,蕁麻疹,呼吸困難,眼瞼浮腫,嘔吐,咽頭瘙痒感に加え様々な全身症状を呈するもので,時にアナフィラキシーショック症状を発現する.甲殻類の主要なアレルギー誘発物質(アレルゲン)であるトロポミオシンは分子量3.5~3.8万のサブユニット2つからなる2量体で,アクチン,トロポニンとともに細い筋原繊維を構成している熱に安定なタンパク質である.各種甲殻類のトロポミオシンはお互いに抗原交差性を示すが1),これは甲殻類間におけるトロポミオシンのアミノ酸配列の相同性が高いためでえび類のブラウンシュリンプを,クルマエビ(えび類),アメリカンロブスター(ざりがに類),シマイシガニ(かに類)とそれぞれ比較すると,すべて90%以上と非常に高い値を示している.さらに,ブラウンシュリンプのトロポミオシンについては,全配列をカバーするペプチドとエビアレルギー患者の血清IgEを用いた評価から主要なIgE結合エピトープが報告されている.これらのエピトープの部分配列は他の甲殻類においてもよく保存されており,抗原交差性を裏付けている.また,甲殻類以外とのアミノ酸配列の相同性は,上記と同じくブラウンシュリンプとの比較で,甲殻類と同じ節足動物に属するゴキブリ類,ダニ類が約80%,軟体動物のたこ類,いか類,貝類が60%程度で,いずれも抗原交差性が確認されている.一方,脊椎動物の鳥類,哺乳類もアミノ酸配列の相同性は60%程度なものの,抗原交差性は確認されていない.これらの抗原交差性の違いは節足動物および軟体動物では甲殻類とIgE結合エピトープのアミノ酸配列の相同性が高いが,脊椎動物では低いことに起因すると考えられる.平成14年4月より本格的に開始されたアレルギー物質を含む食品表示制度において,甲殻類(えび・かに)は過去に一定の頻度でアレルギーの発症が確認され,引き続き調査を必要とする品目であることから,特定原材料に準ずる20品目に含まれた.その後も調査は継続され,平成17年度の調査ではアナフィラキシーショック症状を誘発した食品として「えび」は特定原材料に次ぐ6位であった2).一方,「かに」は13位で「えび」と比較して頻度は少ないものの,エビアレルギー患者の65%が「かに」に対しても反応することから,「えび」と「かに」との交差性の頻度の高いことが確認された.このような新たな知見によりアレルギー表示対象品目の見直しが行われ,「えび」「かに」は平成20年6月より特定原材料に追加された.さらに表示の範囲も,従来の「えび」の範囲である日本標準商品分類の分類番号7133 えび類(いせえび・ざりがに類を除く)に加えて,7134 いせえび・うちわえび・ざりがに類が追加された.また,「かに」については7135 かに類を範囲としており,「えび」「かに」は生物学的に十脚目に分類される甲殻類を表示の範囲としている.
著者
伊澤 華子 青柳 康夫
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.7, pp.348-353, 2012-07-15 (Released:2012-09-04)
参考文献数
20
被引用文献数
1 4

植物性食品80種類について,ACE阻害とニコチアナミン量の測定を同時に行い,植物性食品の血圧抑制について検討した.ACE阻害は,イネ科の植物を除く多くの試料で60%以上の強いACE阻害が示された.ニコチアナミン量は,タラノメで74.8mg/乾物100gと最も多く,イネ科を除く多くの試料でニコチアナミンが検出された.科間の比較ではウコギ科はイネ科とユリ科の植物と比較してニコチアナミン量が有意に多いことが示された.アスパラガス,ウルイのように強いACE阻害を示すが,ニコチアナミンを含有していないものも存在していた.しかし,多くの植物性食品のACE阻害の強さにニコチアナミン量が少なからず影響していることが示された.
著者
中村 和夫 小林 奈保子 谷本 守正
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.9, pp.444-447, 2014-09-15 (Released:2014-10-31)
参考文献数
13
被引用文献数
2 4

食用きのこ12株のフスマ固体培養を行い,その抽出液の凝乳活性を測定した結果,ヤマブシタケ(Hericium erinaceum) NBRC 100328に高い凝乳活性を見い出した.さらにMAFF7株のヤマブシタケについて凝乳活性を測定したところ,4株について凝乳活性が存在した.これら5株について低温殺菌牛乳を用いたカードの作製を行った結果,5株全てにおいてカードの作製が可能であった.全凝乳活性およびカード収量が高かった,Hericium erinaceum MAFF 435060,MAFF 430234,NBRC 100328をチーズ作製に適した株として選抜した.
著者
伊澤 華子 吉田 望 白貝 紀江 青柳 康夫
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.253-257, 2008-05-15 (Released:2008-06-30)
参考文献数
16
被引用文献数
9 8

豆類41種類の熱水抽出液のACE阻害をスクリーニングしたところ,ナタマメを除きいずれも強いACE阻害を示した.IC50値の比較ではササゲ属が他の属に比較して阻害力が弱い傾向が見られた.豆類のニコチアナミン量は,絹さや(生)で77.0mg/乾物100gと最も多く,インゲン属,ダイズ属,エンドウ属などでは,ほとんどが30~55mg/乾物100gと豊富に含まれていた.属間の比較では,ササゲ属はエンドウ属(p<0.05),インゲン属,ダイズ属(p<0.001)と比較して有意にニコチアナミン量が少ないことが示された.豆類抽出物のACEに対するIC50値はニコチアナミン量と相関があることが示された.また,そのときの抽出物中ニコチアナミンの存在量は,ニコチアナミン標品のIC50値と一致していた.このため,豆類熱水抽出物のACE阻害は,ほぼニコチアナミン単独で発現しているものと推測された.
著者
齋藤 優介 西 繁典 小疇 浩 弘中 和憲 小嶋 道之
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.563-567, 2007-12-15 (Released:2008-02-01)
参考文献数
17
被引用文献数
3 3

7種類の食用豆類から80%エタノールと70%アセトンを用いた2段階抽出により全ポリフェノールを調製して,抗酸化活性,α-アミラーゼおよびα-グルコシダーゼ活性に対する抑制効果を比較した.ポリフェノール含量の多い豆は,順にアズキ,インゲンマメ,コクリョクトウ,黒ダイズ,リョクトウ,ダイズであったが,種子の大小や種皮色との関係は認められなかった.しかし,各豆類のモノマー型およびオリゴマー型ポリフェノール含量と抗酸化活性との間には高い正の相関関係が認められた.また,エンドウとダイズポリフェノールに占めるオリゴマー型ポリフェノールの割合は低く,α-アミラーゼおよびα-グルコシダーゼ活性の抑制作用はほとんど認められなかった.これに対して,アズキ,インゲンマメ,コクリョクトウ種子ポリフェノールには,オリゴマー型ポリフェノールが67-76%を占めており,抗酸化活性と共にα-アミラーゼおよびα-グルコシダーゼ活性の抑制作用を示した.リョクトウや黒ダイズポリフェノールは,α-アミラーゼ活性抑制作用はほとんど認められなかったが,α-グルコシダーゼ活性の抑制作用が認められた.これらの結果から,豆類ポリフェノールのオリゴマー型ポリフェノールは抗酸化活性作用とα-アミラーゼおよびα-グルコシダーゼ活性の抑制作用を有しているが,モノマー型ポリフェノールは主に抗酸化活性作用のみを有していることが推察された.
著者
早川 文代 井奥 加奈 阿久澤 さゆり 齋藤 昌義 西成 勝好 山野 善正 神山 かおる
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.8, pp.337-346, 2005 (Released:2007-04-13)
参考文献数
40
被引用文献数
14 17

日本語のテクスチャー用語を収集し, 以下の知見を得た. 116人を対象としたアンケートによって用語を収集し, 討議により整理したところ332語を得た. これに文献調査の結果から94語を追加して426語とした. テクスチャーの研究者55人に用語の妥当性を評価させ, 専門家4人に面接調査を行って用語を削除, 追加し, 最終的に445語のテクスチャー用語を得た.1960年代に収集されたテクスチャー用語と比較したところ, “もちもち” “ぷりぷり” など新しい用語がみられた. また, 中国語などと比較すると, 日本語のテクスチャー表現は数が多いことが示された.テクスチャー用語の約70%は擬音語・擬態語であることから, 日本語のテクスチャー表現に擬音語・擬態語が重要な役割を果たすことが示唆された.
著者
外薗 英樹 上原 絵理子
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.7, pp.306-311, 2016-07-15 (Released:2016-08-31)
参考文献数
20
被引用文献数
4

GABA摂取が肌質,並びに,睡眠の質に及ぼす影響を評価することを目的として,肌荒れを自覚し,疲労や睡眠の不調を感じている成人女性を対象に,二重盲検並行群間試験を実施した.その結果,GABA摂取群において頬の皮膚弾力性指標がプラセボ摂取群と比較して有意に改善した.睡眠の質の評価においてはGABA摂取群とプラセボ摂取群の両群ともに摂取開始後に改善がみられたが,有意な群間差はみられなかった.本試験の結果から,GABAの摂取は日頃から疲労や睡眠の不調を感じ,肌荒れの自覚がある成人女性の頬の粘弾性の悪化を抑制する可能性が示された.
著者
伊部 さちえ 吉田 恵子 熊田 薫
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.189-192, 2006-03-15 (Released:2007-03-09)
参考文献数
17
被引用文献数
10 12

1)生大豆,浸漬大豆,蒸煮大豆,煮汁,発酵時間を変えて製造した納豆におけるACE阻害活性を調べた.大豆1gあたりのACE阻害活性(総活性)は浸漬大豆がもっとも高く,生大豆の約1.6倍であった.しかし蒸煮により,その活性は浸漬大豆の約50%,生大豆の約80%に低下した.納豆は蒸煮大豆よりも阻害活性が高く,本研究の実験条件下では発酵16~20時間(製品として適する発酵時間)において最も高い活性を示し,さらに発酵を続けると活性は低下した.2)市販納豆菌株および著者らが自然界から分離した納豆菌株を用いて納豆を製造し,納豆菌株によるACE阻害活性の相違について調べた.使用する納豆菌株により納豆のACE阻害活性に相違が認められた.市販株よりも高い阻害活性を持つ納豆を製造する納豆菌株が数株存在した.3)納豆のACE阻害物質は,蒸煮大豆に本来存在した物質,および発酵により蒸煮大豆中の前駆物質から新たに生成された物質から成ることが示唆された.
著者
早川 文代
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.7, pp.311-322, 2013-07-15 (Released:2013-08-31)
参考文献数
33
被引用文献数
4 1

Texture terms play an important role in food texture studies, especially in sensory evaluation. A well-organized texture lexicon assists researchers with sensory evaluation of texture. In this study, Japanese texture terms were collected, characterized, and classified in order to develop a texture lexicon. First, 445 texture terms in Japanese were collected from questionnaires to food scientists/technologists, literature searches, and interviews with experts. Next, foods associated with the 445 Japanese texture terms were collected and analyzed. The spatial configuration of the terms showed the structure of the Japanese texture vocabulary. The terms were then classified hierarchically by questionnaires and multivariate analyses. The classification in this study revealed some characteristics unique to the Japanese texture vocabulary, such as a wide variety of terms concerned with stickiness and elasticity. Additionally, the food texture vocabularies of Japanese consumers were investigated through questionnaires. The data showed that the recognition of some terms differed according to the gender, age and/or region of consumers. Some factors, such as eating experiences and dialect usage, could explain the reason behind these differences. The data obtained in this study can be applied to preliminary lexicon sources of descriptive sensory evaluation, and can provide useful clues to the understanding of Japanese texture terms.
著者
岡田 忠司 杉下 朋子 村上 太郎 村井 弘道 三枝 貴代 堀野 俊郎 小野田 明彦 梶本 修身 高橋 励 高橋 丈夫
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.8, pp.596-603, 2000-08-15 (Released:2009-02-19)
参考文献数
11
被引用文献数
33 136

医薬品として販売されているγ-アミノ酪酸製剤(合成GABA製剤)は,脳代謝促進作用があり,脳梗塞・脳出血後遺症等,脳血管障害の諸症状の改善や血圧上昇抑制効果が認められている.また最近の医学分野の研究では,更年期障害や初老期の自律神経障害にみられる精神的症状の緩和にも効果があると報告されている.本試験では,コメぬかから分別製造した「GABA蓄積脱脂コメ胚芽」を用いて,更年期及び初老期の被験者20名に対する効果をプラセボとの比較にて検討した.その結果,更年期及び初老期に見られる抑うつ,不眠,イライラ,不定愁訴の自律神経障害の改善に,GABA蓄積脱脂コメ胚芽が高い効果を示すことが明らかになった.またこのほかに,高血圧症や肝機能の改善作用も示され,服用に伴う副作用も全く見られなかったことから,毎日摂取できる機能性食品素材として高い利用価値を有していることも明らかになった.
著者
西山 美樹 江崎 秀男 森 久美子 山本 晃司 加藤 丈雄 中村 好志
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.9, pp.480-489, 2013-09-15 (Released:2013-10-31)
参考文献数
25

豆乳は栄養価に優れ,イソフラボン類などの機能性成分を含むが,その消費量は多くない.本研究では,豆乳の用途拡大および保健機能性の向上を目指して,豆乳から乳酸発酵豆乳,さらには豆乳チーズを試作するとともに,これらの抗酸化性の評価および主要成分の分析を行った.11菌株の乳酸菌で豆乳を発酵させたところ,9菌株において凝固が認められた.イソフラボン分析の結果,Lactobacillus plantarumおよびLactobacillus casei を用いた乳酸発酵豆乳では,豆乳中のグルコシル配糖体であるダイジンおよびゲニスチンは効率よく分解され,それぞれダイゼインおよびゲニステインを生成した.しかし,いずれの乳酸菌においてもマロニル配糖体は分解されなかった.Lb. casei MAFF 401404を用いた乳酸発酵豆乳は,滑らかなプレーンヨーグルト状に凝固し,官能評価においても高得点を収めた.この発酵豆乳よりカードを調製し,カマンベールチーズカビ(Penicillium camemberti NBRC 32215)およびロックフォールチーズカビ(Penicillium roqueforti NBRC 4622)を用いて豆乳チーズを調製した.いずれのチーズカビを用いた場合も,発酵·熟成にともない,ホルモール態窒素量および旨みを呈するグルタミン酸含量が顕著に増加した.また,官能評価においても高得点を得た.DPPH法による抗酸化試験の結果,豆乳チーズの抗酸化活性も発酵·熟成中に有意に(p<0.01)上昇し,カードの2~3倍に増大した.また,豆乳の乳酸発酵時には残存していたマロニル配糖体も,これらのチーズカビによって分解され,体内吸収性に優れたアグリコンに変換された.これらの結果より,この豆乳を用いたチーズ様食品は,将来,高付加価値をもつ新規食品として受け入れられる可能性が示唆される.
著者
渡邉 悟 牛澤 良美 草間 正夫
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.1-6, 1996-01-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
11
被引用文献数
2 3

アルカリ条件下でクロロゲン酸(Chl)とアミノ酸が反応して緑色色素を生成する現象は知られている.著者らは新しい天然色素の開発や食品中の色の変化についての基礎的な知見を得るため,Chlとグリシン(Gly)から生ずる緑色色素に対するpHの影響等について調べた.Chl・Gly混合液をアルカリ性でインキュベーションすると,680nmに極大吸収をもつ緑色色素が生成するが,この緑色色素を各pH (2~9)で処理すると,各pHでそれぞれ異なる吸収スペクトルが得られ,酸性側からアルカリ性側にかけて,赤,紫,青,緑系の色を呈した.これらの吸収スペクトルおよび呈色状況は時間とともに変化した.さらに各pH処理した緑色色素をHPLCで分析した所,各pHでパターンが異なり,アルカリ性で生成した緑色色素は複数の反応生成物から成ることがわかった.
著者
植村 邦彦
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.151-156, 2003-04-15 (Released:2009-02-19)
参考文献数
19
被引用文献数
1