著者
山下(川野) 絵美
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.2-9, 2015-03-16 (Released:2015-04-03)
参考文献数
49

動物は,光を物の形や色を認識する「視覚」で利用するのに加え,生体リズムの制御などの様々な「視覚以外(非視覚)」の生理機能の調節に用いている。哺乳類を除く多くの脊椎動物において,非視覚の光受容には,松果体や脳深部などの,眼以外の光受容器官の関与が広く知られている。下等脊椎動物の松果体やその関連器官は、環境光の明暗だけでなく、波長成分(色)を検出できる(波長識別応答)。著者らは、ヤツメウナギ松果体において,波長識別応答に関わるUV光受容タンパク質としてパラピノプシンを同定した。これまでに行ってきた生化学的、分光学的、組織化学的、電気生理学的解析から、パラピノプシンは,松果体波長識別の分子基盤の解明のためだけでなく,その特徴的な分子特性から,脊椎動物の視覚オプシンの分子進化を考える上でもカギとなる分子であることが分かってきた。ここでは,松果体UV光受容タンパク質パラピノプシンに関する著者らの研究成果を中心に,松果体やその関連器官における波長識別とオプシンの分子進化に関する知見を紹介する。