著者
山中 二男
出版者
日本植物分類学会
雑誌
植物分類,地理
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.27-29, 1953

石立山の植物相の大要は上は述べた如くであるが,斯様な事實から,(1)此の山は未だ亜高山帯に達しないが區系的に注意すべき事は寒地性の依存分布があり,(例えばイワウサギシダ,ムシトリスミレ,その他)或は隔離分布を爲す著しい例が見られ,(例えばヒメフウロ,コウシユウヒゴタイ,その他)又一般に希少な植物がよく成長している事(例えばギンロバイ,イワユキノシタ,その他),(2)これらの植物は石灰岩地では可成り低い所まで見られる(例えばホソバシユロソウは500mまで),(2)石灰岩露出地の區系的組成乃至は植相は他の他の地方の蛇紋岩地帯とよく似た點が多い事(例えば群落が多く灌木叢林状でイワガサ,キハギ,イワツクバネウツギが優占的になる事など,その他)などが此の山でもうかがえる。斯様な點は石灰岩地帯に見られる特徴であり(植物研究雑誌XXVII, 33, 1952)區系地理學上意義が深い。今後更に精細な調査を行なう事によつて,或は更に新しい事實を見出し得るかも知れない。終りに本報文を草するに當つて,御教示をいたゞいた北村教授に厚く感謝する。又調査に際し種々御便宜をはかられた高知營林局和田豊洲氏高知大學の鎌倉五男氏に感謝する。