著者
清家 章
出版者
高知大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

縄文時代から古墳時代を通じて、女性の地位がどのように変化するかを墳墓と遺存人骨から調査した。その結果、全時代を通じて女性家長が存在し双系的親族構造の中で女性はヘッドウーマンの地位を保持していることが明らかとなった。しかし、首長層における女性の地位と権能は複雑であることが明らかとなっている。弥生時代中期と古墳時代中期以降は女性首長の存在が認められず、その間に存在する弥生時代終末期〜古墳時代前期には女性首長の存在が一般的に認められる。つまり、首長層においては首長権を行使するこどに対し、女性の活動が活発的な時期とそうでない時期があるのである。その原因は性別分業と大きな関わりがあると考えられる。特に戦争との関わりが重視される。女性には戦争に関わる権能がない、あるいは積極的には認められていなかったため、戦争あるいは軍事的緊張が高まる時期、もしくは政権の軍事化が行われる時期には女性は首長になり得なかったのではないかと考えられた。また古墳時代中期以降に臨時的な場合を除いて、女帝・女性首長は存在しないので、これ以降女性首長が登場することはなかった。また、古墳時代中期以降は一般層においても父系的編成が行われたと考えられる墳墓群が認めあられた。政権が軍事化するに伴い、首長は男性に限定され、下位層に対しても軍事的な理由から父系的な編成が行われたと考えられるが、それは貫徹せず、双系的基盤は後世に受け継がれた。
著者
味村 俊樹
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

日本人における男女別、年代別の直腸肛門機能検査の基準値と内肛門括約筋の厚さと長さの基準値が得られた。機能的肛門管長は、女性よりも男性が長く、最大静止圧と随意収縮圧増加分は、女性よりも男性の方が高かった。最大静止圧のみが、加齢に伴って低下していた。直腸バルーン知覚検査では、女性の方が過敏で、加齢に伴って知覚が低下する項目があったが、必ずしも一定の結果は得られなかった。内肛門括約筋の長さは、年齢・性別で差を認めないが、厚さは男性の方が薄く、男女とも加齢に伴って厚くなる傾向を認めた。
著者
宗景 志浩 山本 由徳 吉田 徹志 宮崎 彰 加藤 伸一郎 加藤 伸一郎 バクタ ジャティンドラ ナース
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

ヴェトナムのエビ養殖池及びその周辺の底泥を採取して, 抗生物質, 重金属, 富栄養化物質の濃度を調べ, あわせて耐性菌の出現率や抗生物質の抵抗性に関する実験を行った。食料生産の場であるにもかかわらず, 重金属濃度は高く, 環境基準値を大きく超えるものもあった。多くの抗生物質や薬剤が使われており, 生物濃縮が危惧される。保全対策として光触媒と紫外線用いた蓄積抗生物質の分解, シリカセラミックを用いた重金属吸着除去法について研究した。
著者
阿部 真司
出版者
高知大学
雑誌
高知医科大学一般教育紀要 (ISSN:09123083)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.1a-15a, 1986-03-31

It has been generally thought that Yomino-kuni, the region of the dead, is under the ground or among the mountains and that Yomotsu-hirasaka, a border between Yomino-kuni and this world, forms a slope which is within the territory of Yomino-kuni. Having considered, however, the meaning of 'saka' and its examples in Kojiki, I found that Yornotsu-hirasaka, a point connecting Yomino-kuni and this world, forms a pass or a flat top of a mountain and that Yomino-kuni is a far-away land which is imagined to be extending beyond the Yomotsu-hirasaka on the same ground as this world.
著者
津野 倫明
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では、朝鮮出兵(文禄・慶長の役)に関する68通の豊臣秀吉文書の年代比定を全体構想としている。2年目にあたる本年度は、慶長の役に関すると推測される5通・現時点では推測が不可能な28通の年代比定にかかわる秀吉文書および関連する副状・諸大名間の書状などの収集と分析を進めた。1.史料収集:(1)9月、東京大学史料編纂所において承天寺文書・帆足コウ文書などの史料調査(閲覧・筆写)を実施した。また、徴古雑抄(国文学研究資料館所蔵)の複製を東京大学史料編纂所の採訪マイクロのデジタルデータにより入手した。(2)11月、東京大学史料編纂所において栃木県庁採集文書・神屋文書などの史料調査(閲覧・筆写)を実施した。2.史料分析:(1)昨年度の史料調査と1の作業により、上記68通のうち65通を収集し終えて、年代比定を進めている。(2)年代比定に要する刊本と原文書・影写本などとの字句の異同に関する知見を得た。3.研究発表:主要な発表は次のとおりであった。(1)「丁酉再乱時の日本の目的と日本側の軍事行動」を学会発表(国際学会、招待講演、韓日関係史学会、ソウル市(大韓民国))することができ、研究論文(「丁酉再乱時の日本の目的と日本側の軍事行動」『韓日関係史研究』第57輯)としても発表した。(2)「文禄・慶長之役諸大名的目的」を学会発表(国際学会、招待講演、ワークショップ「第二届壬辰戦争研究(国際)工作坊 壬辰戦争与日本、朝鮮、明朝 三国政治生態」、済南市(中華人民共和国))することができた。
著者
清家 章
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究課題は、南四国と瀬戸内の横穴式石室を比較検討することにより、古墳時代後期の両地域における交流実態を明らかにすることである。資料の分析とフィールドワークを重視して研究を進めた。横穴式石室墳に関わる様々な要素は、断続的に瀬戸内から南四国にもたらされたことが明らかとなった。第1段階:明見3号型石室の導入、第2段階:舟岩型石室の導入(伏原大塚古墳)、第3段階:南国市域で横穴式石室が普及・風水的選地の導入、第4段階:角塚型石室の導入という各段階である。
著者
奥谷 文乃 藤田 博一 村田 和子
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

うつ病の患者では食欲が低下し、体重が減少することが知られている。味覚・嗅覚機能の異常を来している可能性を検証するために本研究を実施した。同意の得られたうつ病患者さんに、嗅覚検査を実施したところ、ほぼ全例で嗅覚機能は正常であり、functional MRIにより中枢性の嗅覚情報処理機能を検索すべき症例が得られなかった。しかしながら、同様に抗うつ剤で治療を受けている「パニック障害」の患者さんでは嗅覚閾値が検知・認知いずれもきわめて低いことがわかった。以上より、「うつ病」に限らず、各種精神神経疾患における嗅覚機能の検索が診断・治療の重要な情報を提供する可能性が示唆された。
著者
野口 悟
出版者
高知大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2012

国公私立525大学を対象に外部資金獲得に対しての研究支援事務サポートの実態調査をアンケート形式で実施し、252大学から回答を得た(回収率48%)。本調査では、修士以上の学位を持つ職員の研究支援部門への配置状況、URA(ユニバーシティ・リサーチ星アドミニストレーター)の配置、事務部門の一元化、特徴的な取組事例等についても研究支援事務サポートの新たな展開に繋げることを目的として行うた。当初、私が最も期待していた修士以上の学位を有する職員の積極的な採用や異動を行って事務サポートを強化している大学は、ほとんどなく(私学1大学/252大学)、現状では通常の事務職員の人事異動の一環で異動が行われており、専門的なスキルや知識の継承に支障をきたしていた。この現状を打破する施策として、平成23年度以降URA職(教職中間職の専門職)が注目されており、URA職の設置状況についても調査した。URA類似職も含めた設置割合は12%(30大学/250大学)であったが、設置していない220大学に対してURA職の必要性について尋ねると約半数の98大学が必要と答えた。今後、我が国での研究支援の在り方がURAの活躍によって変化してくることが推察される。また、各大学の特徴的な取り組みとしては、「ブラッシュアップ制度」「インセンティブ制度」が最も多く、その他には「若手への研究費の配分」「独自の研究業績DB開発」、経費のかからない対策としては「職員による各研究室訪問による情報収集」や「ワンストップサービスの実現」といった取組があった。なお、この調査結果は報告書としてまとめており、希望があれば配布することとし、全国の大学における外部資金獲得サポート業務の新たな展開の一助になると考えている。(jm-snoguchi@kochi-u.ac.jpへ連絡していただければ配布します)(調査協力大学へは別途配布)
著者
徳山 英一 村山 雅史 宮里 修 谷川 亘 山本 裕二
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

歴史南海地震の災害記録(沈降量・津波浸水域)が海底で保存されていると考えられている高知県沿岸部の3地域(大月町柏島・須崎市野見・土佐清水市爪白)について調査を実施した。大月町柏島では、サイドスキャンソナーによる詳細な海底地形調査、および試料採取を実施した。海底地形分析の結果、柏島北部の海底に海岸線と平行に伸びる3段の石堤構造物を確認することができた。これまで文献等により2段の存在は確認できていたが、今回初めて3段目の存在を確認できた。試料採取は3段の異なる石堤について実施することができた。また、水中カメラの科学的利用可能性を確認した。須崎市野見では、野見湾内で、海底の試料採取地点の正確な情報を取得するために購入したUSBL方式水中測位装置(Applied Acoustic Engineering社製EasyAlpha)のテストを実施した。その結果、地図をベースとした潜水士の位置情報をリアルタイムに把握することが不可欠であるとわかったため、新たにUSBL用のソフトウェアの改良を実施し、潜水士2人の位置情報を同時に地図上で確認できるシステムを構築した。土佐清水市爪白では、海底に沈んでいる人工石柱の起源を明らかにするため、岩石物理化学データと年代データを取得した。岩石物理化学データの結果から、石柱の起源は三崎層群竜串層の砂岩である可能性を強く示した。さらにpXRFによる元素分析データを用いた多変量解析を実施した結果、海底石柱は、三崎層群竜串層砂岩だけでなく、爪白地区にある比較的古い時代に作られたと考えられる石造物(石段・家の基礎)と同じ化学的特徴を示していることが明らかとなった。
著者
高橋 綾
出版者
高知大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本年度も引き続きFDG-PET/CTを用いた乾癬患者における関節症の評価を行った。60名の乾癬患者が参加された。内訳は関節症性乾癬 (PsA) 患者31名、尋常性乾癬 (PsV) 患者29名であった。PsV患者では無症候性の付着部炎の評価のため、全身療法を受けていない18名の患者において詳細な解析を行った。その結果、全身療法を行っていないPsV患者18名のうち6名(33.3%)において付着部炎が検出され、これらの患者を無症候性PsAと診断した。6名中3名では2箇所以上の付着部炎が検出されており、好発罹患部位としては股関節周囲が最多で(50%)次いで四肢末端関節(33%)であったが、脊椎炎はみられなった。次にPsA、PsVおよび無症候性PsA患者の3群間で臨床的・血液学的相違点の検討を行った。PsA発症の臨床的予測因子と考えられる、爪、頭部および臀部の乾癬の合併率は無症候性PsA患者群でそれぞれ66.7%、100%、83.3%であり、PsV患者群(42%、67%、25%)に比べ高い傾向がみられた。一方、PsA患者における、爪、頭部および臀部の乾癬の合併率はそれぞれ64%、54%、14%であり、頭部と臀部乾癬の合併率はPsV患者より低い結果であったが、これはPsA患者の半数が全身療法をうけており、治療による修飾があると考えた。血液検査では炎症反応の指標として、白血球数、CRPと血沈値を3群間で比較した。PsV患者と無症候性PsA患者で明らかな差は見られず、PsA患者群でCRPと血沈の上昇がみられた。HLAタイピングにおいても、PsV患者と無症候性PsA患者において特記すべき違いはみられなかった。無症候性PsA患者6名のうち1名は数ヶ月後にPsAへ移行した。1名はその後約2年間関節症状は出現していない。残り4名は皮膚病変のために全身療法が導入され、以後も関節症状はみられていない。
著者
佐々 浩司 林 泰一 村田 文絵 益子 渉 橋口 浩之
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

竜巻発生環境を再現する実験装置を確立し、メソサイクロン高度に依存して竜巻発生状況が異なることや竜巻の詳細構造を示した。この知見は竜巻予測精度向上に寄与すると期待される。また、レーダー観測により竜巻発生件数の多い高知県において積乱雲中の渦の8割が土佐湾海上で発生することと、福岡竜巻の事例についてメソサイクロンと竜巻渦との関係を示した。モデル解析においては非スーパーセル竜巻事例の発達過程を示した。
著者
岩崎 貢三 康 峪梅 田中 壮太 櫻井 克年 金 哲史 相川 良雄 加藤 伸一郎 NGUYEN VAN Noi LE THANH Son BANG NGUYEN Dinh VENECIO ULTRA Jr. Uy. TRAN KHANH Van ZONGHUI Chen NGUYEN MINH Phuong CHU NGOC Kien 小郷 みつ子 福井 貴博 中山 敦 濱田 朋江 杉原 幸 瀬田川 正之
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究では, (1)ハノイ近郊の鉱山周辺土壌における重金属汚染, (2)紅河流域畑土壌における有害金属・農薬残留に関する調査を実施し, 特に有害金属に関し, 工場・鉱山を点源とする汚染と地質に由来する広域汚染が存在することを明らかにした. また, これら金属汚染土壌の植物を用いた浄化技術について検討するため, 現地鉱山周辺で集積植物の探索を行ない, Blechnum orientale L.やBidens pilosa L.を候補植物として見出した.
著者
大迫 洋治 由利 和也
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究において、一夫一婦制げっ歯類をパートナーと別離させると、炎症時の痛み行動が増悪し、疼痛関連脳領域のうち、前頭前野、側坐核、扁桃体の活動が低下すると同時にこれら脳領域と他の疼痛関連脳領域との機能的結合が変化することが明らかになった。さらに脳内ドーパミン産生ニューロンが豊富に存在する腹側被蓋野における痛み刺激に反応するサブリージョンの興奮パターンが異なることが明らかになった。本研究により、精神的ストレスによる痛みの増悪に脳内ドパミン回路の機能変調が関与する可能性が示唆された。