著者
山之内 克子
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学社会文化科学研究 (ISSN:13428403)
巻号頁・発行日
pp.27-51, 1997-02-28
被引用文献数
1

本稿では、このヘトリング=ノルテの理論的枠組みを念頭に、まず、市民史、とりわけその祝祭に関する先行研究の成果を前提として、十九世紀の市民祝祭の中にドイツ市民の精神性、特にかれらのドイツ民族主義を確認する。そのうえで、国家単位として、また、文化圏としての「ドイツ」にたいして常に微妙な立場にあったハブスブルク帝国、なかんずくその首都ウィーンをとりあげ、多民族国家におけるナショナリズムの特殊性が帝国首都の市民祝祭においていかなる形で現われたのか、また、しばしば「政治的アクション」としての側面が強調される市民祝祭において、その最も根源的な部分を支えた「象徴的行動様式」の特色を、ここにいかなる形で読み取ることができるか等の問題について検討したい。