著者
大鳥 精司 山下 正臣 井上 玄 古志 貴和 山内 かづ代 伊藤 俊紀 鈴木 宗貴 渡辺 朋子 守屋 秀繁 高橋 和久
出版者
日本腰痛学会
雑誌
日本腰痛学会雑誌 (ISSN:13459074)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.121-126, 2007 (Released:2008-01-22)
参考文献数
7

側方すべりを伴わない椎間板楔状化を伴う腰部脊柱管狭窄症に椎弓切除術群と固定術を併用した群の比較検討を行った.脊柱管狭窄症に対し連続して行った椎弓切除術群(13例)と,連続する固定術(12例)を対象とした.術式の選択は症状や画像評価によらず,初めの連続する13例は椎弓切除術のみ,後の連続する12例は固定術を選択した.症例はレントゲン単純仰臥位正面像にて1椎間の5°以上の椎間板楔状化がある症例で,側方すべり2 mm以内とした.術前,経過観察時の臨床成績,側方すべり(mm,正面像),左右屈にての可動角度(°,正面像)を評価した.結果,全症例の術後JOAスコアは23.2点と改善したが,固定術群の方が有意に改善していた.その理由として,成績不良例は椎弓切除群に3例認められ,側方すべり距離は術前0から術後2 mmに,左右屈にての椎間可動角度は術前平均12°から術後14.6°となっていた.術前,左右屈にての椎間可動角度が10°以上の症例で,成績不良であった.これら3例に関しては再固定術を追加し,良好な成績を得た.椎間板楔状化を伴う脊柱管狭窄症ではX線正面左右屈像において椎間可動角度が10°以上は成績が悪く,病態に,除圧術後の椎間板楔状化の悪化が神経症状を惹起していることが考えられた.

2 0 0 0 Modic sign

著者
大鳥 精司 折田 純久 稲毛 一秀 鈴木 都 山内 かづ代
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1129-1137, 2016-12-25

Modic signとは 椎体終板変性は,MRIで日常的に観察される変化である.一般的には退行性変化として考えられている.図1で示すように,年齢とともに椎間板高が減少し,その変化が椎体終板に発生する現象である.高齢者の8割以上はこのような画像を呈している.変性腰椎の椎体終板変性はModicら1)により報告され,一般的にはModic signと呼ばれている.椎体終板はMRIのT1強調画像で低輝度,T2強調画像で高輝度を呈するModic Type 1,T1強調画像,T2強調画像でともに高輝度を呈するType 2,さらにT1,T2強調画像で低輝度を呈するType 3に分類された2,3)(図2).最近のModic signのレビューによると,腰椎にその変性を認める割合は14%であり,変性の程度は年齢に比例し,10年間で6%の増加を認めることが報告されている.Modic signの分類ではType 2が多く,次にType 1であり,Type 3が最も少ない2).多くの論文において椎間板の変性が腰痛の原因となりうることが報告されているが,椎間板の近傍に存在する椎体終板変性の病理と臨床的意義に関する論文は少ない.本稿では,現在までにわかっているModic signの臨床的意義に関して述べたい.