著者
大森 正子 星野 斉之 山内 祐子 内村 和広
出版者
JAPANESE SOCIETY FOR TUBERCULOSIS
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.82, no.2, pp.85-93, 2007
被引用文献数
9

〔目的〕結核患者の発生を職場という視点で分析し,職業別に患者発見の動向を明らかにすること,特に看護師については罹患率を推計すること。〔資料と方法〕結核発生動向調査年報,国勢調査年の職業別人口を用いた。職業別に患者の発見方法の変化を比較し,看護師と教員・医師の罹患率を男女別に推計した。〔結果〕看護師等では新登録中職場健診発見割合が年々拡大し,2004年は40.4%になった(医療機関発見割合は43.9%)。また看護師等では家族以外の接触者検診で発見される割合が1995年以降急速に拡大し,2000年以降は6~9%になった。1987年から2004年にかけて新登録者は5.6万人から3.0万人へ47.4%の減少をみたが,看護師等は490人から574人へ17。1%の増加となった。18年の間,看護師の罹患率は横ばい状態で,2004年の罹患率は,女で10万対46.3,男で825と推計された。その他の職業の20~59歳の罹患率と比較した相対危険度は,女で4.3(95%CI:3.9~4.8),男で3.8(95%CI:2.8~5.2)となった。一方,教員・医師の相対危険度は男女とも1以下であった。〔考察〕相対危険度から看護師の結核の約80%は職業起因と推察され,看護師の働く場である医療機関あるいは高齢者施設等においては,職場健診も含めて院内(施設内)感染対策の充実と徹底を期待する。
著者
星野 斉之 内村 和宏 山内 祐子
出版者
JAPANESE SOCIETY FOR TUBERCULOSIS
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.84, no.1, pp.1-8, 2009-01-15
被引用文献数
1

〔目的〕青中年期結核罹患率の地域差を検討する。〔方法と結果〕2005年の結核発生動向調査と国勢調査を用いて,都道府県別の性・就業状況別の青中年期(25~54歳)罹患率を算出し,背景要因を検討した。〔結果〕都市と周辺地域の罹患率が高い。四大都市通勤圏とその他の地域の比較では,都市通勤圏の日本人の就業者,無職,主婦で有意に高かったが,主婦では差は小さかった。生活保護対象者の罹患率は高いが,受給率に地域差はなかった。外国人の罹患率は高いが,女性の無職・その他のみに地域差を認めた。電車・バス利用回数と罹患率が,就業者で強い相関を示したが,主婦に相関はなかった。居住状況と都道府県罹患率に相関はなかった。糖尿病,悪性腫瘍,関節リューマチの受療率は結核罹患率と相関せず,推定HIV感染合併患者数は少なく,除外しても罹患率の差異は保たれた。〔考察〕都市部における公共交通機関の利用と就業による感染リスクが示唆され,事業所の患者発見対策強化と必要時の公共交通機関における接触者健診が勧められる。また,貧困の影響の可能性があり,詳細な検討が必要である。外国人,居住状況,HIV感染,糖尿病,悪性腫瘍,関節リューマチの影響は示唆されない。