著者
平良 文亨 古賀 康裕 高藤 愛郁 山口 仁士
出版者
長崎県環境保健研究センター
雑誌
長崎県環境保健研究センター所報 = Annual report of Nagasaki Prefectural Institute for Environmental Research and Public Health (ISSN:09140301)
巻号頁・発行日
no.54, pp.78-80, 2009-10

最近のエネルギー需要の増加や地球温暖化を背景として、原子力政策の見直し・推進による原子力関連施設の建設が世界的に進められている。一方、平成19年7月16日に発生した新潟県中越沖地震により、東京電力(株)柏崎刈羽原子力発電所(新潟県柏崎市)6号機の使用済み燃料プールの水が漏えいするなど複合災害の問題や核の脅威(テロ)、放射性廃棄物の海洋投棄問題など原子力の利用に伴う想定外の事象も存在していることから、地域住民の安全・安心を確保するために環境放射能(線)のモニタリング調査による科学的根拠が重要となる。平成18年10月9日の北朝鮮の地下核実験の発表に伴い、わが国ではモニタリング体制を強化し当センターを含む全国の環境放射能分析機関で、放射能の影響の有無について観測したことは記憶に新しいところである。本県では、昭和36年度から核実験の実施に伴うフォールアウト調査としての環境放射能水準調査(文部科学省委託、佐世保港における原子力艦寄港に伴う環境放射線調査を含む)をはじめ、平成12年度から五島市及び対馬市における環境放射線等モニタリング調査(環境省委託)、平成13年度から長崎県地域防災計画に基づく環境放射線モニタリング調査(平常時のモニタリング調査)を九州電力(株)玄海原子力発電所の10km圏内に位置する松浦市鷹島町で実施している。日本の西端に位置する本県は、その地理的特徴から大陸からの移流により、酸性雨・光化学オキシダント・黄砂などは越境汚染の可能性が示唆されているが、放射性核種についても大陸起源のエアロゾルや土壌粒子に起因した物質輸送が考えられている。そこで、最近の県内における環境放射能の分布状況について解析したので、その結果を報告する。