- 著者
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山口 勝弘
山崎 清
- 出版者
- 日本交通学会
- 雑誌
- 交通学研究 (ISSN:03873137)
- 巻号頁・発行日
- vol.53, pp.45-54, 2010 (Released:2019-05-27)
- 参考文献数
- 9
次世代の都市間高速交通網の一翼を担うことが期待される超電導磁気浮上式鉄道 の東京、名古屋及び大阪間への導入(中央リニア新幹線)について、分析モデルを用いて我が国の経済と環境に及ぼす影響を定量的に分析した結果、リニア導入の利用者便益は、今後の都市間交通需要の伸び、即ち、我が国の経済成長レベルに左右され、2005年度から70年間の年平均経済成長率が2.0-2.5%程度でなければ費用便益比率が1を超えないとの推定結果が得られた。また、リニア導入のCO₂排出量への影響については、新幹線からリニアへの需要のシフトが航空からのシフトよりも大きいため、東京=名古屋開通で2.7%、東京=大阪開通で4.9%増加することが判明した。さらに、中央リニア新幹線は、単体では採算が見込めるが、東海道新幹線には巨額の減収をもたらす。従って、JR東海がリニアを導入した場合、東海道新幹線からの需要シフトにより増収効果が小さいために中央リニア新幹線の事業収支は大幅な赤字となる。しかし、JR東海としては、他からの新規参入があった場合に比べ、自らリニアに参入した方が赤字幅を小さく抑えることができるため、次善の選択としてリニアに参入することをゲームの理論をもとに考察した。