著者
進藤 昭男 相馬 勲 山口 宗明
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.658-661, 1968-05-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
3
被引用文献数
1

ケイ素フタロシアニンの炭化について調べるために, シリコクロロホルムとフタロニトリルから合成されたケイ素フタロシアニンを一度加水分解処理( 濃硫酸にいったん溶解し, 純水中に析出させて行なった) し, 得られた粉末を窒素気流中1000℃ まで9段階に加熱処理して, 重量熱解析, 元素組成, X 線回折, 赤外吸収スペクトル, および電気抵抗の測定を行なった。その結果,800℃ までの重量減少は加水分解処理前のもので25%であったが,加水分解処理したものではわずか15%であった。また500℃ までは顕著な変化は見られず, 500℃ から水素の急激な減少とともに, 赤外吸収スペクトルや電気比抵抗が急に変化する。しかし銅フタロシアニンのような急激な重量減少は見られず, 800℃ 近くまでフタロシアニン結晶としての規則性の一部を残す。1000℃ に熱処理した試料においてまだ窒素が7.5%,ケイ素が7.3%の割合で残っており,X線回折図形からも,かなり難黒鉛化性炭素の傾向を示すことなどがわかった。なお,ケイ素フタロシアニンの加水分解処理による耐熱性の向上は,熱処理の過程でシロキサン結合が形成されるためと考えられた。