著者
青木 香苗 山口 恭子 柗尾 綾花 榎本 麻里 堀田 多恵子 平安山 知子 亀崎 健次郎 康 東天
出版者
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
雑誌
日本輸血細胞治療学会誌 (ISSN:18813011)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.602-607, 2018

<p>今回,出生後に児由来赤血球(以下児赤血球)の出現が遅延した抗Dによる胎児・新生児溶血性疾患(HDFN)症例を経験した.</p><p>母体は1経妊1経産,A型RhD陰性,抗D陽性(抗体価128倍)であり,第1子がHDFN既往のため本症例である第2子の妊娠14週に当院紹介となった.妊娠28週に抗D抗体価256倍となり,31週及び33週に胎児貧血が疑われ,O型RhD陰性のRBCで計2回(31週時約100m<i>l</i>,33週時約130m<i>l</i>)の胎児輸血を実施し,妊娠36週に誘発分娩となった.児は出生時,溶血及び黄疸は軽度であったが,日齢0に大量免疫グロブリン投与(1.5g/kg)をされた.血液型検査で胎児輸血前はAB型RhD陽性であったが,出生直後はO型RhD陰性,抗D抗体価1,024倍であり,児赤血球が消失し輸血製剤由来の赤血球に置き換わっていることが示唆された.その後,抗D抗体価が4倍まで低下した日齢83に輸血検査にて初めて児赤血球が検出できたことより,出生後の児赤血球の出現遅延には抗Dが関与していると考えられた.この期間,溶血所見は乏しいものの緩徐に貧血が進行し,輸血を要した.</p><p>本症例のような胎児輸血を必要とするHDFN症例では輸血前の血液型検査実施と,経時的に抗体価をモニタリングすることは重要である.</p>