著者
松坂 俊光
出版者
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
雑誌
日本輸血細胞治療学会誌 (ISSN:18813011)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.725-732, 2013 (Released:2013-10-24)
参考文献数
31
被引用文献数
2 4
著者
山本 哲 荒木 あゆみ 算用子 裕美 小澤 敏史 金井 ひろみ 池田 久實 高本 滋
出版者
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
雑誌
日本輸血細胞治療学会誌 (ISSN:18813011)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.105-111, 2017-04-20 (Released:2017-05-11)
参考文献数
15

採血副作用における血管迷走神経反応(VVR)は,その低減化に向けて様々な防止策が講じられている.VVRの発症機転はよく解明されていないが,不安や痛み等の精神的な要因,循環血液量の減少による生理学的要因などが推定されている.今回我々は循環血液量の減少を伴わない採血前検査で発生するVVRに焦点をあて,精神的な要因により発症するVVRの特徴について検討した.本採血前のVVRを2群(検査前群と検査後群)に分類し,本採血以降のVVRと比較検討した.その結果,本採血前のVVRでは,体格が小柄で比較的やせ気味の10代の若年男性が多く含まれ,女性では3人に1人は体重50kg未満という特徴が見られた.これらのVVRでは重症例も多くあり軽視すべきではなく,採血基準を体重50kg以上に制限することで女性のVVRは減少すると推定される.
著者
竹下 明裕 古牧 宏啓 浅井 隆善 梶原 道子 岩尾 憲明 室井 一男
出版者
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
雑誌
日本輸血細胞治療学会誌 (ISSN:18813011)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.711-717, 2016-12-20 (Released:2017-01-12)
参考文献数
17
被引用文献数
1

近年,若年者の献血人口の減少が問題になっている.将来の献血を担う,高校生の献血に対する意識調査を行うことは献血の将来を考えていく上で重要である.アンケート方式による50項目の意識調査を行い,献血に関する高校生への広報や教育の現状と高校生の意識を調査した.調査は連結不可能の疫学調査として行い,35校中30校から協力が得られ,調査対象16,333人のうち15,521人(95.0%)より回答を得た.男性49.3%,女性は49.8%であった.献血を経験した高校生は1,198人(7.7%)で,未経験者は88.6%であった.疲労感や睡眠不足,ダイエット等は採血の際に注意すべき生活習慣である.献血可能年齢と体重,献血場所,献血に関わるリスク,血液の海外依存度等の献血に関する知識は不十分であった.献血への関心度は献血経験のある高校生で高く,初回献血の重要性が示唆された.高校への出張献血や献血に関する授業は献血を推進していく上で有用である.しかし献血に関する教育手法と普及活動にはさらに工夫が必要であると思われる.
著者
李 悦子 瀧本 朋美 尾崎 修治 松本 真弓 竹内 恭子 松本 俊夫
出版者
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
雑誌
日本輸血細胞治療学会誌 (ISSN:18813011)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.448-455, 2012 (Released:2012-07-13)
参考文献数
23
被引用文献数
2 2

Flow Cytometry(FCM)を用いたA,B抗原検査は,個々の血球の抗原密度の定量的な測定が可能であり,亜型検査における有用性が示されている.我々は徳島県に多く存在するcisA2B3型15例におけるA,B抗原の密度分布をFCM法で測定するとともに,カラム凝集法や試験管法などの測定結果と比較した.cisA2B3型血球はA1B型対照血球と比較し,A抗原はカラム凝集法4+で対照4+と差を認めず,試験管法は256~512倍と対照1,024倍より低値であった.FCM法ではmean fluorescence intensity(MFI)は25.8~73.1(陽性率92.7%~99.4%)と比較的均一な抗原分布を示し,対照87.6(陽性率99.6%)と比べて抗原減弱を認め,赤血球当たりの抗原数は7万~85万と推定された.B抗原はカラム凝集法2+~3+で対照4+より弱く,試験管法は4~128倍で対照512倍より低値であった.FCM法のMFIは0.7~4.3(陽性率11.5%~77.3%)と対照59.9(陽性率99.7%)と比較し抗原量が著しく低い領域に血球が幅広く分布しており,赤血球当たりの抗原数は<1~38万と推定され,個体差も大きいことが明らかになった.FCM法は抗原量の定量とその分布についても詳細な判定が可能であり,ABO亜型の診断においてきわめて有用と考えられた.
著者
浅野 尚美 小郷 博昭 池田 亮 閘 結稀 髙木 尚江 山川 美和 吉岡 尚徳 小林 優人 淺田 騰 藤井 敬子 藤井 伸治
出版者
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
雑誌
日本輸血細胞治療学会誌 (ISSN:18813011)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.3-8, 2017-02-28 (Released:2017-03-27)
参考文献数
16
被引用文献数
1 2

生後4カ月以内の乳児では,母由来のIgG型抗A,抗B抗体の有無を確認した上で適合血を選択しなければならない.当院では,生後4カ月以内の乳児の外科的手術症例における輸血が比較的多く,限られた検体量の中で輸血用血液製剤の正確で迅速な準備が要求される.今回,母由来のIgG型抗A,抗B抗体が陽性であった生後4カ月以内の乳児に対し,赤血球輸血の際に選択された血液型について後方視的に解析を行った.2009年4月から2013年3月の4年間に,輸血検査を行った生後4カ月以内のO型以外の乳児は309人で,間接抗グロブリン試験でW+以上の凝集を認め母由来のIgG型抗A,抗B抗体が検出された症例が44例(14.2%)であった.1+以上を示した31例のうち24例がO型赤血球輸血を選択したが,省略してもよいとされているABO血液型ウラ検査(カラム凝集法)で,児の血液型と同型のウラ血球に凝集を認めた症例が17例あった.生後4カ月以内の乳児の輸血前検査として,A1またはB血球との間接抗グロブリン試験で1+以上の凝集を認めた場合に加え,血液型検査のウラ検査も,母由来のIgG型抗A,抗B抗体を検出できる場合があり,O型赤血球輸血の選択基準のひとつになり得ると考えられた.
著者
川畑 絹代 安田 広康 土田 秀明 伊藤 正一 菊地 正輝 常山 初江 内川 誠 大戸 斉
出版者
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
雑誌
日本輸血細胞治療学会誌 (ISSN:18813011)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.478-483, 2011 (Released:2012-01-06)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

抗KANNOは1991年に福島医大病院で遭遇した高頻度抗原に対する抗体で,既知の抗体にはその反応性が一致するものが無かった.発端者に因み,この抗体を抗KANNO,対応抗原をKANNO抗原と名付けた.KANNO抗原発見に関わった福島医大病院2症例と山形県および宮城県赤十字血液センターで同定した抗KANNO 12例,計14例について反応性,臨床的意義を検討した. 抗KANNOを保有する14例のうち13例が妊娠歴のある女性であり,輸血よりも妊娠によって産生されやすい抗体であると考えられる.抗KANNOは高力価低親和性(HTLA)抗体の特徴を示し,類似した反応性を持つ抗JMHとは,AET処理赤血球と反応する点で鑑別できる.現在まで,抗KANNOによる溶血性輸血副作用(HTR)や胎児・新生児溶血性疾患(HDFN)の報告はなく臨床的意義は低いと考えられるが,さらに症例を蓄積する必要がある.
著者
大久保 理恵 永島 實 稲葉 頌一
出版者
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
雑誌
日本輸血細胞治療学会誌 (ISSN:18813011)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.441-450, 2016-06-30 (Released:2016-07-15)
参考文献数
15

ヘモグロビン(Hb)低値で不採血となった献血希望者の鉄不足量を評価し,貧血の改善方法を検討した.本研究へ同意したHb低値者より6 ml採血し,フェリチン,TIBC,血清鉄,可溶性トランスフェリンレセプター(sTfR)を測定した.鉄不足の評価方法として,フェリチン値12 ng/ml未満をAIS,Log10(sTfR/フェリチン)>2.07をIDEとした.さらに400 ml献血可能Hb値までに必要な鉄量を計算した.なお,検査結果を本人に通知し,貧血程度の把握及び健康管理による貧血の改善を促した.フェリチン値正常者には現病歴,スポーツ歴等のアンケート調査も行ない,さらに58名にsTfRを除く3項目の検査を行った.4項目の検査を行った80名のうち,AIS67名IDE67名(重複66名)だった.58名も加え,対象者138名中AIS81%,不足鉄量200 mg以上28%,鉄欠乏と考えにくい者18%という結果が得られた.約8割がAISであり,鉄欠乏状態が高度であった.今後,鉄分摂取のより丁寧な指導と可能ならばフェリチン測定も必要と考えた.また200 mg以上の鉄が不足している者には医療機関受診を勧めることとした.一方スポーツ貧血も問題であることもわかった.
著者
吉場 史朗 加藤 俊一 大谷 慎一 小原 邦義 前田 清子 南 睦彦 寺内 純一 渡会 義弘 金森 平和 稲葉 頌一 絹川 直子
出版者
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
雑誌
日本輸血細胞治療学会誌 (ISSN:18813011)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.48-57, 2009 (Released:2009-06-30)
参考文献数
6
被引用文献数
1 1

目的: 人間が一生の間にどの程度,輸血を受けるのかを知ることは,献血の際に,ボランティア·ドナーに説明するための必要なデータの一つである. 方法: 輸血回数を求めるに当たって,1.年齢別·性別人口,2.供給された献血本数,3.輸血を受けた患者の性別と年齢,を2つの県で集めた.第一は2002年の福岡県で,もう一つは2005年の神奈川県であった.各年齢の輸血回数の計算は,[Page=nage/Nage×T/t]の式で求めた.{Page:nage:各年齢の輸血患者実数,各年齢(Nage)ごとの輸血回数,T: 一年間に供給された血液本数,t: 病院で輸注された血液本数} 結果: 1)福岡県の2002年の全人口は,5,034,311名であった(男性2,391,829; 女性2,642,482).地域の赤十字血液センターは福岡県で輸血されるすべての血液をカバーしていた.2002年の血液供給本数は226,533本であった.一つの大学病院で輸血された患者数は,1,190名(男性646,女性544)であった.これらの患者に使用された血液は13,298本(男性7,210,女性6,088)であった.2)神奈川県の2005年の人口は,8,748,731名であった(男性4,420,831; 女性4,327,900).地域の赤十字血液センターは福岡県と同様,県内使用血液のすべてをカバーしていた.2005年の供給本数は297,592本であった.5つの大学病院と1つのがん専門病院で輸血を受けた患者の総数は3,744名(男性1,673,女性2,071)であった.これらの患者に使用された血液は57,405本(男性31,760,女性25,645)であった.男性の寿命を79歳とすれば,福岡県で0.420回,神奈川県では0.297回輸血を受けていた.女性の平均寿命を87歳とすれば,福岡県では0.344回,神奈川県では0.275回輸血を受けていた. 結論: 我々のデータから,日本人は一生の間に男性は1/3,女性は1/4が輸血を受けると考えられた.さらに,輸血の可能性は80歳以上で男性,女性ともに急増していた.
著者
関本 美穂 今中 雄一 吉原 桂一 米野 琢哉 白井 貴子 ジェイスン ・リー 佐々木 弘真
出版者
The Japan Society of Transfusion Medicine and Cell Therapy
雑誌
日本輸血細胞治療学会誌 (ISSN:18813011)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.347-353, 2010

Disease Procedure Combination(DPC)データには臨床情報および詳細な輸血情報が含まれるため,輸血リスクを考慮した血液製剤使用量評価に利用できる可能性がある.われわれはDPCデータを利用して,73の急性期病院における血液製剤使用状況を調査し,血液製剤を多く消費する疾患や手術を検討した.また病院ごとの血液製剤使用量を予測する3つの重回帰分析モデルを作成し,R<sup>2</sup>値を使ってその予測能を評価した.最初のモデルは,病院機能に関する5つの変数(病床数,全身麻酔下手術数,心臓手術の実施,造血幹細胞移植の実施,血漿交換の実施)を予測因子とした.2つ目のモデルでは,年齢分布および血液製剤を多く使用する疾患・手術の年間1病床あたり件数を予測因子とした.3つ目のモデルはDPC診断群分類を利用して血液製剤の使用量を予測した.血液製剤の大部分が,特定の疾患・手術を受けた患者により消費されていた.診断群分類を用いた予測モデルは,輸血のリスクや血液製剤の使用量を診断群分類ごとに細やかに考慮できるために高い予測能を示した.一方,血液製剤の使用量が多い疾患や手術の症例数から使用量を予測するモデルも,比較的良好な予測能を示した.しかし病床数や全身麻酔下手術数は,血液製剤の使用量と関連しなかった.DPCデータを利用した血液製剤使用状況の解析は,少ない労力で大量のデータを処理でき,また各病院における疾患分布を考慮して血液製剤使用量を評価できる.<br>
著者
岡﨑 亮太 竹谷 健 兒玉 るみ 足立 絵里加 石原 智子 定方 智美 金井 理恵 三島 清司 長井 篤
出版者
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
雑誌
日本輸血細胞治療学会誌 (ISSN:18813011)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.546-549, 2015-12-20 (Released:2016-02-13)
参考文献数
17

血液製剤による細菌感染症はまれであるが,致死的な経過をたどることもある重篤な副作用の1つである.患者は8歳男児.急性骨髄性白血病再発に対して非血縁臍帯血移植を行い,移植後5日目に血小板輸血を行った.輸血前にスワーリングを確認したが輸血開始40分後から,発熱,悪寒・戦慄,嘔吐,頭痛が出現し,血圧低下,頻脈,動脈血酸素飽和度低下を認めたため直ちに輸血を中止し,抗菌薬,免疫グロブリン,血管作動薬,ステロイドを投与し,発症3日目に解熱した.輸血後4時間以内に発熱,悪寒,頻脈,血圧低下をきたしており,患者の血液と血小板製剤から血清・遺伝子型ともに一致した大腸菌が同定されたことから,血小板製剤に大腸菌が感染したことによる敗血症性ショックと診断した.我が国で過去10年間に血小板製剤による細菌感染症は8例報告されているが,大腸菌感染の報告はない.しかし,大腸菌感染は海外で死亡例も報告されており,重篤な症状を呈する可能性が高い.したがって,細菌感染を疑う症状が出現した場合,迅速に原因菌を同定し,適切な治療を行う必要があると思われた.
著者
川俣 豊隆 衡田 経子 阿部 結花 尾上 和夫 東條 有伸 長村(井上) 登紀子
出版者
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
雑誌
日本輸血細胞治療学会誌 (ISSN:18813011)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.683-690, 2017-10-25 (Released:2017-11-22)
参考文献数
9

輸血療法を行なう上で,正確な血液型の判定は重要である.赤血球表面抗原検査であるオモテ検査と,血清中の抗A・抗B抗体の検出を行なうウラ検査の両方の結果によってABO血液型が確定される.しかし,ABO亜型など特殊な血液型以外にも,血液疾患をはじめとする各種悪性腫瘍や免疫異常など様々な病態による影響を受け,オモテ・ウラ検査不一致を認める場合がある.2003年1月から2015年9月までの期間中に当院輸血部にて血液型検査を受け,ABO不適合造血幹細胞移植後症例を除きオモテ・ウラ検査不一致を1度でも認めた症例の疾患背景について後方視的解析を行なった.2,455症例中61症例が,オモテ・ウラ検査不一致症例であり,その基礎疾患として,造血器腫瘍患者が多くを占めていた.判定不能の原因は,オモテ検査が20症例,ウラ検査が35症例,オモテ検査・ウラ検査両方が4症例,特定不能が2症例であった.オモテ検査では骨髄異形成症候群/急性骨髄性白血病,ウラ検査ではリンパ系腫瘍を基礎疾患に有する症例が多かった.オモテ・ウラ不一致症例における疾患背景を理解し,慎重に判定する必要がある.
著者
清武 貴子 吉國 謙一郎 原 純 大木 浩
出版者
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
雑誌
日本輸血細胞治療学会誌 (ISSN:18813011)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.13-18, 2020

<p>はじめに 鹿児島県立大島病院はドクターヘリを保有する救命救急センター(以下,救命センター)を併設している.日本赤十字社鹿児島県赤十字血液センター(以下,鹿児島日赤)と委託契約していた民間の血液製剤備蓄所が2018年3月末に血液製剤取扱い業務から撤退した.以後,当院では血液製剤の院内在庫を置き輸血医療に対応している.危機的出血を伴い鹿児島日赤から血液搬送が間に合わない際に,院内血輸血を実施している.対象と方法 救命センター開設後の2014年から2018年までの期間に実施した18症例の後方視的カルテ調査を行い院内血に至る要因を検討した.結果 院内血輸血実施理由の51%が,血小板減少症や血小板製剤が届かない等の血小板に関係する問題であった.院内血輸血の結果,血小板数及びフィブリノゲン濃度が有意に上昇した.考察 奄美大島地区緊急時供血者制度連絡協議会が作成した登録者名簿に記載されている島民の協力の下,院内血が実施される.安全面や供血者への負担も考慮が必要である.結語 院内血輸血によりフィブリノゲン濃度が止血可能域まで上昇した.クリオプレシピテートやフィブリノゲン濃縮製剤の有用性が待望される.</p>

1 0 0 0 OA XMRVと輸血

著者
浜口 功
出版者
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
雑誌
日本輸血細胞治療学会誌 (ISSN:18813011)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.699-703, 2012 (Released:2012-11-12)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

2006年に米国でRNaseLに遺伝子異常を持つ前立腺がん患者の前立腺組織より発見された新規ヒトレトロウイルスXenotropic murine leukemia virus-related virus(XMRV)は,2009年には原因不明の疾患である慢性疲労症候群(CFS)に関与するという可能性が同じ米国より報告され,大きな社会的関心を呼んだ.またこの報告では健常人での血液細胞および血漿中からもウイルスが検出されており,輸血による感染が危惧される事態となった.このような中,XMRVの検査法の確立と国内のXMRV感染状況の確認が急がれた.国内のCFS患者,前立腺癌患者においてXMRV感染の可能性を検索したが全例陰性であった.さらに,国内感染状況を把握することを目的に,血清学的検査法および,既に公表されているNAT法を用いて献血ドナーのXMRV NATスクリーニングを行った.血清学検査およびNATスクリーニングの結果はすべて陰性であった.これらの解析結果より,国内においては,XMRV流行は起こっていないことが確認された.
著者
赤塚 美樹
出版者
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
雑誌
日本輸血細胞治療学会誌 (ISSN:18813011)
巻号頁・発行日
vol.65, no.6, pp.851-857, 2019-12-20 (Released:2020-01-10)
参考文献数
42

キメラ抗原受容体(Chimeric Antigen Receptor,CAR)-T細胞療法は遺伝子改変T細胞による養子免疫療法の一つであり,急性リンパ性白血病,悪性リンパ腫,慢性リンパ性白血病などのB細胞性腫瘍や多発性骨髄腫に対する新規治療法として近年非常に注目されている.CD19抗原を標的としたCAR-T細胞による国際共同第2相試験において,難治性B細胞性腫瘍に対して高率な寛解導入効果が示された.CAR-T細胞は短期間で調製でき,T細胞が持つT細胞受容体より高い親和性をもった抗体を抗原受容体として利用したことが成功に寄与した.また抗体を抗原受容体とすることでT細胞のHLA拘束性を考慮する必要がない.CARの構造は細胞外ドメインとし抗体のFab部分と,細胞内ドメインとしてT細胞のシグナルドメインから成る.T細胞の活性化や機能増強,体内での長期生存能を付与するために細胞内ドメインにはさまざまな工夫が施されてきた.ただし治療後にサイトカイン放出症候群などの重篤な副作用が高頻度に起こりうる他,長期的には一部に再発も認められ,今後解決すべき課題も残されている.