著者
山口 朋泰
出版者
日本会計研究学会
雑誌
会計プログレス (ISSN:21896321)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.10, pp.117-137, 2009 (Released:2021-09-01)
参考文献数
39

本稿は,経営者による機会主義的な利益増加型の実体的裁量行動が,企業の将来業績にマイナスの影響を与えるか否かを検証するものである。本稿で対象とする利益増加型の実体的裁量行動は,①一時的な値引販売や信用条件の緩和による売上操作,②研究開発費,広告宣伝費,および人件費などの裁量的費用の削減,そして③売上原価の低減を図る過剰生産,の3タイプである。分析においては,利益増加型の実体的裁量行動の中から機会主義的な部分の特定を試みる。具体的には,会計発生高を増やす余地が小さい状況,また利益ベンチマークと合致ないしわずかに超過した状況を特定し,それらの状況にある企業の利益増加型の実体的裁量行動を,経営者の機会主義的選択として捉えた。分析の結果は,経営者の機会主義的な利益増加型の実体的裁量行動が,企業の将来の業績(総資産利益率)にマイナスの影響を及ぼすことを示唆している。