著者
野村 真利香 山口 美輪 西 信雄
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.80, no.1, pp.60-68, 2022-02-01 (Released:2022-03-12)
参考文献数
26

【目的】栄養不良の二重負荷の国際的な議論において,栄養の二重責務行動(Double-duty actions for nutrition)が提案された経緯を検証し,日本からどのような提案ができるか考察すること。【方法】国連ならびに関連機関から発行された報告書・政策文書については公式ウェブサイトによる文書検索を行い,特に栄養の二重責務行動については文献データベース検索を行った。【結果】低栄養と過栄養に対する政策・介入は,それぞれが個別に独立して行われているという反省から,近年では,低栄養か過栄養かのいずれかではなく,複数の栄養不良形態への同時効果的な栄養政策・介入が必要であるという概念,すなわち栄養の二重責務行動の重要性が議論されている。政策立案者は限られた資源(財政,人,時間)を用いて複数の目標を達成することが求められることから,その解決策としていくつかの栄養の二重責務行動が提案されているが,World Health OrganizationならびにLancetが提案した栄養の二重責務行動は母子を対象とした政策・介入が比較的多く,人生早期における介入が重視されていた。【結論】あらゆる栄養不良の解消がうたわれているSustainable Development Goals達成を目指すためには,母子健康手帳や妊産婦健診・乳幼児健診を通じた母子栄養サービス,学校給食・食育,栄養人材育成,国民健康・栄養調査,各種基準・指針など,日本が従来から行ってきたようなより幅広い世代を対象とした栄養政策・介入からも栄養の二重責務行動が検討されるべきである。