著者
山口 華奈 ヤマグチ カナ Yamaguchi Kana
出版者
大阪大学大学院文学研究科社会言語学研究室
雑誌
阪大社会言語学研究ノート
巻号頁・発行日
vol.13, pp.52-71, 2015-03

本稿は、和歌山市方言において、確認要求の機能を有するもののうち、文末表現「~シテ」を取り上げ、その意味・用法の記述を試みるものである。文末表現「~シテ」の形式的・意味的特徴は、次のようにまとめられる。(a)文末表現「~シテ」は、平叙文の文末に生起し、概して「ワシテ」という形式をとり、名詞相当の句や節に後接する場合にのみ「ヤシテ」という形式をとる。(b)文末表現「ワシテ」は、「ではないか」に共通する用法をもち、話し手の発話時と発話以前の間、あるいは話し手と聞き手の間に認識のずれがあり、話し手の発話時の認識を、認識すべき確定的なものとして提示する。(c)文末表現「ンヤシテ」は、聞き手の認識になく聞き手が知り得ない既定の事柄を伝達し、聞き手と共有していこうとする。(d)文末表現「~シテ」の「シテ」は、話し手の認識を発話の現場に引き出し、自分や聞き手との共有の認識領域にもってくるべく表出する。