著者
山城 香菜子
出版者
国立大学法人琉球大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

【目的】腎臓での糸球体濾過量(glomerular filtration rate : GFR)を評価する指標として、従来よりクレアチニン・クリアランス(Ccr)が日常の臨床現場において広く用いられてきた。2008年には日本腎臓学会より"日本人の推算GFR(eGFR)"が提唱され、24時間の蓄尿を行うことなく血清クレアチニン(Cre)値から簡便にGFRを算出することが可能になった。しかし、年齢や筋肉量の違いによるクレアチニン値への影響は避けられず、得られたGFRには未だ信頼性に乏しい部分がある。近年、性や年齢に影響を受けない新たな腎機能マーカーとしてシスタチンCが注目されている。本研究では、シスタチンCとeGFRとの相関性を分析し、慢性腎臓病(chronic kidney disease : CKD)診断の指標としての有用性を検討した。【対象および方法】対象は本院において血清Creを測定した患者検体200件とした。各々の検体についてシスタチンCを測定し、同時にCre値から算出されたeGFRとの相関分析を行った。【結果と考察】シスタチンCはeGFRと対数相関を示し、CKD診断指標であるeGFR 60ml/min/1.73m^2未満での相関はγ=0.714であった。一方、eGFR 60ml/min/1.73m^2以上ではγ=0.472であった。また、シスタチンCと血清Creは直線相関にあり、eGFR 60未満および60以上での相関はγ=0.636、γ=0.424であった。いずれの場合も、腎障害が疑われるeGFR 60未満の検体で比較的高い相関が得られた。しかし、シスタチンCがGFRと同等に、CKDの診断指標となるには満足できる相関とは言い難い。シスタチンCの測定は標準化が遅れており、GFRへの推算式の検討が行われている段階にある。今後、eGFR算出でのCreの影響、シスタチンC測定の標準化などを解決した上で再度、相関解析を行うことが必要である。さらに、薬剤投与でのeGFRの普及、さらにはシスタチンC値そのものがGFRに代わることを期待したい。